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異世界から学ぶライフスタイル 〜第ニ部 愛と破滅〜  作者: カズー
第三章

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20話 鉱山の戦い

 オレの魔法には射程距離がある。

 弓の射程よりも短い。


 敵兵たちは、オレと距離を取り、容赦なく弓矢を放ってくる。だが、オレは“ファイアシェル”の防御魔法を展開し、飛来する矢を次々と焼き落としていた。


 そのとき――。


 ギィィッ――と、館の重厚な門が軋む音と共に、十人ほどの槍兵が現れた。鋼の槍を握り、無言のままオレに向かって突進してくる。


「マルチファイアブレード!」

「ファイアアロー!」

「ファイアボール! ウィンドボール!」


 オレは次々と攻撃魔法を繰り出し、迫り来る槍兵を迎え撃つ。火球が弾け、風弾が兵士たちを打ち据える。しかし――全員は倒せなかった。


 何人かの兵士が、なおも突撃してくる。


 鋭く突き出された槍が、オレの防御魔法“ファイアシェル”を破り、唸りを上げて迫る。


「くっ……!」


 鉄の盾を構えて一撃を防ぐも、二本の槍がオレの腕と脚を貫いた。


「……っが……!」


 鋭い痛みが身体を貫き、血が地面に滴る。しかしオレは歯を食いしばり、攻撃魔法を打つ。


「ファイアアロー!」

「ファイアボール!」

「ウィンドボール!」


 魔法の奔流が炸裂し、槍兵たちは後方へと吹き飛ばされる。


 だが戦いは終わらない。


 別の兵士たちが、倒れた仲間の槍を拾い、再びオレに向かって突撃してきた。


“ファイアシェル”では、槍の攻撃は防ぎきれない。オレは再び盾を構えて心臓を狙う一突きを受け止めるが、数の差が厳しい。


「くそっ……!」


 オレは新たな防御魔法を唱える。


「ファイアウォール!」


 轟音と共に立ち上がる火の壁が、槍兵たちの進撃を阻む。彼らは炎の熱に身をすくめ、足を止めた。


 よし……通さない。


 だが、こちらの攻撃魔法も、火の壁を超えて届かない。ならば――。


「ファイアレイン!」

「ウィンドレイン!」


 オレは火と風の雨を空から降らせ、火の壁の向こう側を包囲殲滅する。火の粉の風の粒が地面を叩きつけ、兵士たちの悲鳴がかすかに聞こえる。


 ―――だが、すぐに静寂が破られる。


 火の壁の両端から、敵兵たちが飛び出してきた。火の壁の横幅はわずか5メートルほど、回り込めばオレに届く。背後には、武器も防具も持たない奴隷たちが、解放軍の到着を待っている。


 このままでは、巻き添えで多くの命が散る。オレは決断した。


「ファイアウォール消えろ!」

「ファイアウォール!」

「ウィンドウォール!」


 左右に再び火と風の壁を展開し、敵兵の進撃を遮る。目の前にできた隙間から、オレは突撃する。


 鉄の盾をアイテムボックスにしまい、代わりに【爆裂玉】を手に取る。狙いを定め、風の壁の向こうにいる敵へ投擲――。


「ドッカーン!!」


 爆音と共に爆裂玉が炸裂し、敵兵が吹き飛ぶ。


 その隙に、火の壁の近くにいる敵に向けて魔法を放つ。


「ファイアアロー!」

「ファイアボール!」

「ウィンドボール!」


 両側の敵兵は、爆風と魔法の猛攻により全滅した。


 残るは――館の門。


 オレは、燃えた瓦礫の上に立ち、館の門前に陣取る兵士たちに叫ぶ。


「もう、これ以上誰も殺させない!」


 そして、アイテムボックスから【爆裂玉】を取り出し、門へと投げつけた。


「ドッカーン!!」


 地面が揺れ、周囲の兵士たちが吹き飛ぶ。だが、館の門は金属で補強されており、破壊には至らない。


 そのとき――。


 ゲームシステムのメニューが、光と共にポップアップを表示する。


『ユニークスキルが使用可能になりました』


 魔法の表示欄に新たなスキル名が浮かぶ。


『メテオクラッシュ』


 オレはスキル名に意識を集中し、イメージを描く。空から燃え盛る隕石が降り注ぐ、圧倒的な破壊の魔法。


 そして、標的は――領主の館。


「メテオクラッシュ!」


 MPが一気に減り、視界がかすむ。


 ――そして、静寂。


 次の瞬間、空が裂け、直径1メートルほどの岩石が、赤熱の炎を纏って降ってきた。


「ズドォォォーン!」

「ズドォォォーン!」

「ズドォォォーン!」

「ズドォォォーン!」


 次々と隕石が落下し、館の屋根、壁、そして門を容赦なく破壊していく。重厚な建物は簡単に砕かれ、煙と火花が空へと立ち昇る。


 ――数分後。


 館は瓦礫と灰だけを残し、跡形もなく消え去った。


 静寂の中、誰かが呟く。


「破滅だ……」


 その声に呼応するように、奴隷たちが口々に言葉を繰り返し始める。


「破滅……。破滅……。破滅。破滅。破滅」


 やがてそれは、歓喜と喝采の声へと変わっていった。


「破滅!破滅!破滅!破滅!破滅!」


「破滅の魔術師!良いぞ!」

「破滅の魔術師!ありがとう!」

「破滅の魔術師!良くやった!」


 歓声がオレに降り注ぎ、ニックネームが自然と決まっていく。


「破滅の……魔術師……」


 オレはその光景を、呆然と見つめていた。


 そのとき――。


 後方から、武装した男たちが現れる。先頭には、ヴィスカの姿。


「サジ!カズー!解放軍を連れて来たぞ!」


 ヴィスカの声にサジが応える。


「遅いよ、ヴィスカ!カズーが一人で敵も館もふっ飛ばしたんだ!」


 驚いた表情のヴィスカが近づいてきて、サジに尋ねる。


「な……何があったんだ!?」


「本当にすごかったんだ!カズーの魔法は、まるで世界を終わらせるかのようだった!カズーは“破滅の魔術師”だ!」


 その日、オレは知った。

 怒りが、人を動かし、そして世界を変える力になることを。


 そしてオレは学ぶ。


〈怒りは破滅をもたらす〉


 と言うことを。

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