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SAVERS ―光なき心を救う者たち―  作者: 春坂 雪翔


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第十六話【命の対価】(二)

この話、予定の話数でまとめられるかな……?

 DSI神奈川支部は、気を失った奏の対応で慌ただしかった。運ばれた奏は依然意識は無いが、次節苦しむ様に呻き声が救護室から聞こえてくる。


 その声が微かに聞き取れる休憩室に、奏以外の四人はいた。何かあるまでここで待機するようにと職員に言われ、全員神妙な顔で奏の回復を待っていた。


「ごめんね、取り乱しちゃって」


 椅子に座った美琴が申し訳なさそうに口を開くと、和真と空美がハッとして美琴の顔を伺った。

 

「いや、俺達は別に」

「せや、今は奏さんのことが大事や。うちらのことは気にせんといて」


 二人が心配をかけまいとそう言うが、美琴の表情は変わらず浮かないままだった。誠司は何か話題は無いかと探し、美琴に疑問に思っていた事を聞くことにした。

 

「あいつのあの痣について、何か知ってるんですか? もしかして、ロストに何か関係があるとか……」


 誠司の問いに美琴は、静かに首を振った。


「あの痣は、うちに代々伝わる力を受け継いだ人に出る痣なの」


 突然美琴から突拍子もない話を切り出され、誠司は面食らう。しかし美琴の真剣な表情が、今から話す事が冗談ではないと言う事を物語っていた。

 

「話すと長くなるんだけどね。ずーっと昔、篠宮家のご先祖さまがこの地に昔から住んでる龍神様と契約をして、龍神様の力を少し貰い受けたそうなの」

「龍神様の力……?」


 和真が怪訝な目で美琴を見るが、美琴は特に気分を害した様子は無く頷いた。


「大昔、この土地に天災が降り掛かって飢饉に見舞われたとかで、ご先祖さまが龍神様にお祈りをしたんだって。それで龍神様は自分達で何とかするようにって力を授けてくれたみたいなの」

「それって、具体的にはどんな力なん?」

「その時は未来視で、いつ雨がどのくらい降るかとか見て田んぼの水を抜いたり引いたりしたみたい。その未来視が百発百中だったらしくてご先祖さまも驚いて、それでこの力を絶やさない為に代々受け継がせるようになったんだって」


 誠司と空美は共に鳩が豆鉄砲を食らったような顔で言葉が出ない。そんな二人を美琴は信じ難い話だよねと少し自嘲気味に笑った。

 

「代々伝えていくうちに未来視だけじゃない新しい能力も増えて、人によって違いがあるみたいなんだけど……、私の父が受け継いだ力は、主に未来視と読心術。それを使ってよく当たる占い師としても名が知れてて、うちの神社もそのご利益があるみたいで評判が良いんだ」


 にわかには信じ難い話だが、美琴の話は恐らく真実なのだろう。少し前にセイバーとロストに似た伝承を聞いたばかりだ。この世には自分の知らない事があってもおかしくは無いと、誠司は半ば納得した。

 

「じゃあ、美琴さんもその力を?」


 血縁で受け継ぐ事が出来るなら、美琴がその龍神様の力というのを持っていても不思議では無い。しかし空美の問いかけに、美琴はゆっくりと首を振った。

 

「残念ながら、私は力を持ってないの。父の力を受け継いだのは、私の双子の姉だった」


 三人にとって衝撃的な事実だった。美琴の口から今まで姉がいるという事は聞かされていない。お互い出会って間もないからだとしても、今まで美琴の背景から姉が感じられる事は無かった。

 

「とてもしっかりした姉でね、小さい頃、私は姉の後ろにくっついてて、いつも一緒にいたの。姉も父と同じで力を受け継いだ証の痣があって、少し先の未来が見えて……、それで父も、力が継承出来たって嬉しそうだった」


 姉を思い出しているのか、美琴の表情が少しだけ和らぐ。しかしその表情は、懐かしい人を思い出している様にも見えた。

 

「それじゃあその、お姉さんは、今……」


 思わず出た誠司の問いに、美琴は目線を落とした。口角は上がってはいるが、その目からは悲しみが読み取れる。

 

「……子どもの頃、川遊びしてた時に、私と一緒に流されて……、運良く私は、木の枝に服が引っかかって助けられたんだけど、姉はそのまま流されて……」


 美琴は最後まで言わなかったが、三人はその先が容易に理解出来た。理解出来たからこそ、誰も言葉を挟まなかった。

 そんな誠司達の表情が読み取れたのか、美琴は苦笑いをして話を続ける。


「勿論私が助かった事は父も母も心底喜んでたし、そこに嘘はなかった。だけど私がいない所で、父が話してるのを偶然聞いてしまったの。何で私だけが助かったんだって」

「それは……」

「勿論父の気持ちも分かるし、私に直接言った言葉じゃないから、父は私が聞いた事は知らない。でもそれ以降、父の顔色を伺って過ごすようになったのよね」


 美琴は笑っているが、本心では無い事ぐらい表情を見れば分かる。三人が美琴の思いがけない告白に言葉を失っていると、美琴が眉をひそめて下を向き、手を握りしめた。

 

「でも、だからこそどうして、奏にあの痣があったのか、私には分からなくて……」


 美琴がそう呟いたその時、ドアが開き長身の男性が入ってきた。和真がその姿を見て椅子から立ち上がる。


「城戸支部長……」

「あーそんな畏まらなくていい。ここは本部じゃない」


 姿勢を正した和真に続いて誠司と空美も立ち上がり、それを見た神奈川支部の支部長、城戸修一(きど しゅういち)が面倒くさそうに手を前に出して制した。

 神奈川支部のトップに立つ者だが、本部長の章吾と違い身なりは若干崩れている。少し薄汚れた白衣から僅かに漂う煙草の匂いに誠司が少しだけ顔をしかめるが、修一がさほど気にした様子は無かった。


「奏の容態だが、変わらず芳しくない。体内に破壊しきれなかったニードルの成分が残って、それが奏の内なる力と反発して、その結果奏の身体に負荷がかかっているという状況だ」


 修一の説明に、美琴がぴくりと反応した。それはまるで、奏には特別な力があるのが分かってるような言い方だった。


「内なる力……? 城戸さん、奏のこと、何か知ってるんですか?」


 美琴はがたりと立ち上がり、修一の正面に立ち顔を見上げる。修一も目を逸らさず、美琴を見下ろした。


「城戸さん、確か奏が幼少の頃からの知り合いでしたよね? 私が知らない奏のこと、知ってるなら教えて下さい!」


 美琴は焦りを含んだ表情で修一を見るが、修一は先程と変わらず淡々としていた。切羽詰まった状況なのにどこか余裕そうに見える表情に、美琴は若干苛立ちを覚える。


「美琴、お前も薄々気付いてるんじゃねえか?」

「え……」

「奏の腹の痣を見たんだろ? お前の家系からしか出ない痣が、奏にあった。それがどういう事か分からないほど、お前は鈍くないだろう」


 諭すような言い方に、美琴は戸惑う。

 対して傍で聞いていた和真は、修一の言葉の意味に気付いたのか、ハッとして目を見開いた。


「まさか……」


 和真の表情を見て修一はそうだよなとため息を着く。

 状況が飲み込めてない誠司と空美を他所に、修一は全員の顔を見回して口を開いた。


「あいつは墓まで持ってくつもりだったようだが、そうも言ってられねえ状況になった。お前ら、今から話す事は他言無用だ。奏には俺から言っておくから、もう一人の東京本部の嬢ちゃんと、埼玉支部のねーちゃんにはお前らから言うんじゃねえぞ」


 有無を言わせない修一の言葉に圧倒され、誠司は反射的に首を縦に振る。

 それを確認した修一は美琴に向き直り、未だ動揺が隠せないその顔をじっと見下ろして再び口を開いた。


「美琴……お前と奏は、腹違いの姉弟(きょうだい)だ」


 修一の低く鋭い声が、休憩室に静かに響き渡った。

本当は次のシーンも含める予定だったのですけどキリが良いのでここで切ります。

この設定も学生の頃に考えてました。これだけで丸々スピンオフが書けそうな内容ですが、ちゃんと本編の内容に組み込めるようにしてます。脱線してはいないので安心して下さい(安心出来るような文章で読者の人に伝えなさい自分)

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