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第十三話【負の化身】(二)

詳しい描写は省いてますが、人を〇したという内容が入ってます。

苦手な方はご注意下さい。


十三話最後まで書き終えました。

日曜日に全て投稿を終えますのでそれまでお待ちください。

 二階も一階と同じで薄暗く、僅かに付いてる蛍光灯もチカチカと点滅をしている。空気もこもってて蒸し暑く、じっとりした汗が誠司の横顔をなぞる。

 一同が注意深く周囲を警戒しながら歩を進め、曲がり角を曲がったその時、突然空美が「うわっ!」と誰もいない場所を見て驚いた声をあげた。その様子に明日香と誠司と奏が訝しむと、空美があははと力なく苦笑いする。

 

「あー、なんやあれか……ビックリさせてごめん。怖がらせたないねんけど、あそこに幽霊おったから」

「幽霊って、あの幽霊?」

「うん、あ、ちょっと待ってて」


 明日香の問いに答えようとした空美だが、先程の誰もいない場所に小走りで向かう。何も無い空間を見て頷いたり、二、三言葉を話して手を振ると明日香達の所へ戻ってくる。


「子どもが向こうに走って行ったん見たって。この先進んだら会えるかもしれへんって」

「え、まさか幽霊と会話したのか?」


 誠司が驚いた声で聞くと、空美は何でもない素振りでその問いに答える。

 

「うん。うち、幽霊が見えるんや。少しなら話すことも出来るで。昔からやなくて、おとんとおかんが死んだ時からなんやけど」


 薄暗い病院の廊下で少しずつ歩を進めながら空美が静かに話し出す。死んだという重い言葉に、明日香は注意深くなりながら口を開く。


「空美ちゃんのご両親って事は、和真さんの?」

「ああ違う違う。うちの実の両親の方や。うちと和真は兄妹やけど血は繋がってへんねん」


 空美は少し笑いながら手を振るが、彼女が暗くならないよう無理に明るく努めようとしてるのが分かった三人の表情は固かった。それを見て空美は苦笑いして前を向く。

 

「うちのおとんとおかん、二人とも警察官やってんけどな、ちょっとデカい事件追とる時に殉職してな、うちは親戚おるこっちに、大阪から越してきたんよ」


 予想以上に重かった空美の話に耳を傾けながら誠司も恐る恐る口を開く。

 

「殉職って……殺されたってこと?」

「せやで。そしたらな、死んだはずのおとんとおかんおったんよ。ほんでな、こっち来いってうちのこと呼んで、後追いかけたら雰囲気やばそうなおっちゃんらがおってな。おとんが言うたんよ、『こいつらがおとんたち殺したんや』って」


 明日香達は言葉を失った。そんな三人の様子を見て空美は苦笑いしながらも淡々と話を進める。

 

「そっから先のことはあんま覚えとらん。なんか背中にドーンって衝撃来て、目の前真っ黒なって闇に飲まれるみたいで、気づいたら病院のベッドで寝てて、隣に知らん兄ちゃんがおって、それが和真やったんよ」


 空美の足取りがゆっくりになったが、それでも空美の話は続いた。

 

「和真が言うにはな、うちその時ロストになったんやって。和真がうちの体に刺さってたニードル壊して、助けてくれたんやって。ほんでな、和真におとんとおかんのこと話して、ワーってなってたら、手ぇの中が急に光りだして、気づいたら石持っとったんよ」


 そう言って空美は自身のバンドに付いてるシトリンを明日香達に見せる。赤みがかったオレンジ色のコアが薄暗い蛍光灯の光に反射してキラリと光った。

 

「ほんでうち、セイバーになってんけどな、親戚はええ顔せえへんくて。まあうちを引き取ったんも渋々やったからやろうけど……。それで和真がうち来うへん? って言うてくれて、戸籍上は兄妹になったんよ」

「ああ、そういう事だったのか。初めて見た時、あまり似てないなって思ってたんだ」

「ごめんな、急にこんな話してもうて。しんどかったやろ?」


 空美が少し申し訳なさそうに笑うが、明日香は首を横に振った。

 

「ううん、そんな事があったなんて、辛かったよね」

「うん、おとんとおかん死んだ時はそら悲しかったけど、今は和真もおるし、綾瀬のおばちゃんとおっちゃんもうちのことほんまの娘みたいに可愛がってくれるから寂しくないで。おとんとおかんもそばにおるしな」

「……そばにいるって?」


 誠司の疑問が含まれた言葉を聞いて空美がコアを見せる。

 

「ここ、この石の中におとんとおかんの魂がおるんよ。みんなの石にもおるで。みんなん中の大切な人なんやね」


 空美の温かさが含まれた言葉に三人はそれぞれ自分の石を見る。

 明日香は以前母がロストになった時、父が突然現れた時の事を思い出した。あの時突然父が現れた事がずっと疑問だったが、空美の話が本当なら辻褄が合う。


「けどみんな、うちの話思ったよりあっさり信じてくれるんやな。和真も最初は信じてくれへんかったのに」

「え、信じるって……」

「こんな突拍子もない話、最初から真に受ける人なんてそんなにおらんやん。うちが嘘話しとる可能性だって──」

「信じるよ」


 空美の言葉をそれまで黙って聞いてた奏が遮る。

 空美が奏の顔を伺うと、奏の真っ直ぐな視線と目が合った。奏は空美を見下ろして淡々と話す。


「お前の話した事は事実だ。だから信じる。それだけだ」

「あ、うん。ありがとな」

「てかお前おばけは苦手で幽霊は大丈夫って矛盾してないか?」

「誠司さん何言うてるの。おばけと幽霊は別物やで。幽霊は人間やけどおばけは……って奏さん待ってや!」

 

 一人我関せずと言わんばかりに奏はすたすたと廊下を進んで行く。慌てて空美がついて行こうとしたその時、遠くの廊下の突き当たりに子どもの影を捉えた。

 先程見かけた子どもかもしれないと思い四人が追いかけて奏と空美が先頭を走って曲がり角を曲がる。

 明日香と誠司もすぐに後を追う。だがそこには子どもの影は愚か、奏と空美の姿も無かった。


「……え、空美ちゃん?」

「あいつもいない……二人とも、どこに行ったんだ?」


 突如消えた二人に、明日香と誠司は動揺を隠せなかった。

伏線を少しずつ回収してるつもりですが、いまいち意味が分からなかったという点がありましたら感想でも良いのでご連絡下さい。

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