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第十三話【負の化身】(一)

今日からキリがいい所までですが毎日投稿してみようと思います。大体4日間くらいで16時投稿予定です。

後半まだ書けてないので出来なかったらすみません。

 無機質な廊下は薄暗く、奥へ続く先は闇に呑まれて何も見えなかった。

 申し訳程度に付いてる蛍光灯の光はチカチカと点滅してるいる。何故電気が通っているのか疑問ではあるが今は考えてる余地は無い。視界が少しでも確保されてるのが幸いだと思いながら一同は廊下を慎重に進んでいく。

 電気は通っている様だが空調は効いておらず、中は空気がこもっていてとても蒸し暑かった。


「あっちいなー。いくら夏仕様になってるとはいえこれ着たまま動くのは中々キツイぞ」


 誠司は襟元を指で摘んでぱたぱたと風を送りながら薄暗い廊下を進む。

 猛暑が続く夏真っ只中での任務の為、DSIのジャケットも普段とは違い半袖で風通しの良い素材となっている。しかし防刃、防弾チョッキが組み込まれたかなり丈夫なジャケットなので普通の衣服よりかなり分厚い物であった。


「脱いだら駄目だよ。何があるか分からないから」

「分かってるって。ったく、せめて空調が効いてればなー」

 

 誠司がぼやいたその時、遠くで何かが倒れた音が廊下に響いた。空美の肩がびくりと跳ねて明日香の袖を掴む。


「……あ、ごめんな。ちょっとびっくりしてもうて。やっぱりちょっと怖いみたいやわ」


 空美が苦笑いを浮かべて明日香を見上げる。平常心を保ってはいるが袖を掴む手が僅かに震えていた。

 その空美の姿が仕草や接し方は違えど何故か沙夜と重なって明日香はくすりと笑う。


「確かにちょっと怖いよね。私は大丈夫だよ」

「いやー肝試しみたいで楽しいって言うたけど、うちおばけとか苦手やねんな。けど、みんなと一緒やったら大丈夫やと思うわ」


 空美が少し自嘲気味に笑いながら明日香の袖から手を離す後ろで、奏が無線機を操作しながら歩を止める。

 その様子に気付いた誠司が後ろを振り向いた時、奏は手に持っていた無線機を静かに置いた。

 

「おい、何してんだよ」

「使えなくなってる。おそらく電波障害だ。持ってても外と連絡は取れない」


 それを聞いて明日香と空美が自分の無線機を確認するが、奏の言った通りそこから聞こえるのは砂嵐だけだった。

 入る前に章吾が言っていた結界の影響だろうか。いずれにせよ何らかの干渉があるようで、これから先、何があっても自分達だけで判断しなければならないようだ。

 

「使えない物を持っておく必要は無い。万が一ロストが出た時に邪魔なだけだ」

「お前……」

「大丈夫だよ誠司。私たちが持ってるから」

「せやな。無線機やから一人が持っとったら十分やで」


 明日香が今にも奏に掴みかかりそうな誠司の肩を掴んで宥める横で空美もフォローを入れる。

 何があるか分からないこの状況で仲間割れだけは避けたかった。

 

 そのまま廊下を進んで行くと一同は開けた空間に出る。

 どうやら病院の待合室のロビーのようだ。

 外に続く大きなガラス戸があるが、そこから光は入ってくるものの景色は真っ白で何も見えなかった。

 試しに外に出れるのか明日香がガラス戸に手をかけてみたが、ガチャガチャと音がするだけでそれが開かれる事はなかった。


「明日香、ちょっとそこどいて」


 誠司がそう言ってコアを銃に変形し明日香のいた場所に撃ち込む。銃から放たれた破裂音が待合室のロビー一帯に響き渡るが、ガラス戸は割れることなくびくともしない。これだけ色々音を立ててるのに外からも開く気配が無く、おそらく外からも中の様子が伺えないのだろうという事が分かった。


 その時、吹き抜けになってる二階で何かが動いた。明日香が見上げると小さな子どもの様な影がこちらの様子を伺ってるのが見えた。


「あ、あそこ!」


 明日香が声を上げて指を指したと同時に三人も上を見上げるがそこには誰もおらず、代わりにぱたぱたと小さな足音が遠ざかっていくのが聞こえてきた。

 ロストファクターだ。全員がそう理解した。

 

「あ、待て!」

「うちに任せとき!」


 誠司が反応するよりも早く空美がロビーの吹き抜け目掛けて走り出す。走りながら自身のコアであるシトリンに手を当てると光が弾けて細長い棒が現れ、そしてそれが突如長く伸びた。

 空美がその棒を床に突き刺すと棒は更に長く伸び、そのまま二階に飛び降りて影の消えた先へ走って行った。

 パタパタと遠のく足音を聞きながら空美以外の三人は二階を見つめた。

 

「……すげーな。あいつ運動神経めっちゃ良いんだな」

「早く追いかけよう、空美ちゃんだけじゃ危ない!」


 明日香は章吾から貰った病院の間取り図を取り出して今の場所を確認する。二階に上がる階段が近くにあるのを確認して走り出すと、そこには瓦礫の山があった。

 奏が自身のコアであるカイヤナイトに手をかざして刀に変形させ、瓦礫の山目掛けて刀を振り下ろす。しかし瓦礫はビクともせず刀は弾かれてしまった。

 誠司と明日香もそれぞれの武器を使って瓦礫に攻撃するが、結果は奏と同じだった。


「どうしよう、他にも階段はあるみたいだけどここからは少し離れた所みたい」

「下手に動き回るとかえって合流出来なくなるかもしれないな。戻ってきてくれた方が良いんだが……」

「空美ちゃん、そっちはどう? 一度戻ってきて欲しいんだけど……」


 明日香が無線機で空美と連絡を取ろうとするが、先程と同じく砂嵐が流れるだけだった。明日香は二人の顔を見て首を横に振る。


「やっぱりこの中にいても駄目みたい」

「追いかけて周りが見えなくなってないと良いな。勝手に逸れられても困る」

「お前その言い方……!」


 誠司が声を張りあげようとしたその時、遠くから足音が聞こえてきた。三人が上を見上げると空美がはあはあと息を切らしながら明日香達を見下ろしていた。


「ごめん見失ってもうた。廊下がいくつも分かれてて、どこ行ったか分からんなってもうた」

「大丈夫だよ。それより私達もそっちに行きたいんだけど、階段が瓦礫で埋まってて上に上がれないの」


 明日香の話を聞いた空美は「せやったら」と自分のギアを取り出した。


「これ使って上がってきたらええで。うちが引き上げたるわ」


 そう言って空美は棒を天井に突き刺して明日香達のいる一階まで伸ばした。どうやらこのギアは彼女の意思によって伸縮自在らしく、棒に捕まればそのまま伸縮して上に上がれるようである。

 今は他に階段を探してる時間は無い。そう思った明日香が空美の棒に手を伸ばそうとしたその時、誠司がそれを制した。


「誠司、どうしたの?」

「いや……明日香、お前一番最後に上がってこい」


 誠司が真剣な顔で明日香の目を見るが、明日香には誠司の意図が読めなかった。


「え、別にいいけど……なんで?」

「なんでってお前なあ、よく見ろよ」


 きょとんと首を傾げる明日香に誠司は呆れて明日香の足を指さした。通気性も良く動きやすいという事で今彼女が履いているのは膝より少し上の丈のキュロットである。しかしその下にスパッツ等は特に何も履いておらず靴下だけで、明日香の健康的な御御足が露出していた。


「これスカートじゃないから特に心配しなくても大丈夫だよ?」

「何が大丈夫だ駄目なもんは駄目だ。最初に雨宮、次に俺、最後にお前だ」

「どうでもいいからさっさとしろよ」


 真剣な顔をして若干顔を赤らめながら首を振る誠司の横で奏が面倒くさそうにため息をついた。

 足が見えるだけなのに何が駄目なんだ。明日香は誠司の意図が分からず訝しみながらも奏と代わると、奏の身体が上に上がっていく。

 無事に二階に着いたのを確認するとまた棒が伸びてくるので誠司が掴んで上がり、最後は明日香が上がった。

生脚が見えると御御足が見える、どちらの方があまりセンシティブな表現にならないか悩みました。

なるべく艶やかな表現は避けたいのですが、こういう所で文章力の無さを思い知らされます。


いくらキュロットでも下から見れば普段だったら見えない部分も見えますからね。明日香は色々無頓着なので誠司に指摘してもらいました。

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