04.調査(?)開始です
「君が王都から帰郷するとき、近くに魔女がいたのは間違いないだろうね。その前後で何か変化は無かったの?」
「ちょうど環境も変わったので…
まあ元から微妙な顔の女に、ブライト様みたいな呪いをかけても仕方ないと思ったんでしょうねぇ」
「いや、君はかわいいよ。
ただどんな内容にしても、呪われたことに気づかないのは鈍感が過ぎるね」
さすが有能モテ男、息をするようにお世辞が出る、と思いきや本音が後から漏れ出している。
そもそも王室育ちは本音を隠すのが上手なんじゃなかったのか。
もはや隠すつもりがない。
イシスの呪いの解明はいったん横に置き、文献や呪いの伝承がある地への調査を行うことにした。
一人では何となく気乗りしなかった作業だが、今になってブライトは不思議と前向きな気持ちになっていた。
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文献の方はブライトが既にある程度調べていて、呪いに身分、性別、年齢等の法則性は無いらしい。
また、やはり呪いの内容も様々で、まさに魔女の気まぐれというほか無かった。
そして、文献での調査には限度があるということで、今は近隣に伝わる呪いの伝承を巡っている。
「次はどこに行きます?こちらは畜産が盛んで鳥料理がオススメらしいですよ」
イシスが次の調査地候補を挙げる。
「うーん前回もお肉だったからなあ。次は海側にしようよ」
「魚介ですね了解です」
各地の名産を楽しむついでに呪いの調査も行う二人だが、残念ながら解呪法はまだ見つかっていない。
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「ブライト氏〜、全然解呪法見つかりませんね〜」
朝食を摂りながらイシスが話しかける。
「そうだね。イシスの呪いが何なのかも結局分かってないしね」
「そう言えばブライト様の呪いは何ですか?」
二人が調査を始めて3か月が経っていた。
「君はもう少し他人に興味を持った方がいい。」
お互い遠慮の無いやり取りに心地よさを感じる一方で、イシスは自分に興味が無いのかとブライトは何故か残念に感じた。
「まあ実は、僕自身は呪いが解けようが解けまいがどっちでもいいんだよねぇ。顔が変化したのは確かに変な感じだけど、それだけだよ」
(イシスと色んなところに『調査』に行くの、思ったよりすごく楽しいし。)
「第三王子ともなると世継ぎ問題ともほぼ無縁だしね。
ただね、第四王子は分かるかな?」
「あ、はいブライト様と双子だという。お会いしたことはありませんが」
「弟と僕は元々そっくりなんだけど、呪われて以降女性が僕にだけ冷たくなっちゃったんだよ。
僕は別にいいんだけど、弟が落ち込んじゃってね。
彼が初対面でいいと思った女性が、あからさまに僕の方に冷たいものだから」
双子で条件的にも能力的にもほぼ同じなのに、呪われ以降、明らかに女性からの扱いに差がついたのだという。
所詮見た目なのかと、第四王子は軽く女性不信に陥っているのだという。
確かに、好きな人が顔で態度を変えているのは見たくない。
「でも、見た目で判断する女性を振るいにかけられていいのでは?」
「そこはそうかも。ただ、僕らが思ってるより世の中の人間の多くは見た目が大事らしいんだよ」
「美人界隈にも色々あるんですねぇ」
「ブライト様は優しいし、穏やかだし、お話も面白いし、心は広いし、立ち居振る舞いは洗練されていて、包容力もあるし、今のままで最高なのに」
(…………告白か?今のは告白以外ないよな?)
ブライトはイシスの顔をじっと見たが、しかし真顔である。
「で、では、今日はオンディーヌ先生の名作選(初期作初出)が出るので早めに失礼しますね」
何故か落ち着かなくなったイシスは、いそいそと部屋を後にした。
王子&オタク((何だか顔が熱いな…))