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02.王子様が呪われた!

王子に起きた一部始終を目撃した護衛は、すぐさまそれを上官に報告し、国王へも伝えられた。


状況から、ブライト王子が古来より伝わる魔女の呪いにかけられたことは明らかだった。

しかし、その解呪法は残念ながら伝わっていない。


侍医が呼ばれ王子の診察が行われたが、当然ながら魔女の呪いの前になす(すべ)など無い。

心身ともに異常はほとんど見当たらないのだが、唯一顔貌だけが変化していたのだった。


*****


呪いを受けてからも、意外にも王子はそれを気に病む風でもなく、王城での執務をこなしたり夜会に参加したりと、それまでと特に変わったことは無いように見えた。


しかし、呪いの噂は徐々に広まっていき、ブライト王子の婿入りが決まっていた隣国から、その破棄が一方的に通告される事態に至った。


(わたくし)は、皆が振り返る美しい王子殿下が大好きだったのに、微妙な顔の方なんてお断りだわっ。』

婚約者である王女は側近にそう語ったという。


その言葉がブライトの耳に入ったのかどうかは定かではない。


しかし、婚約破棄からしばらく(のち)、ブライトは王都の外れの小さな城に移り、公の場に姿を表すことはほとんど無くなってしまった。


*****


「何とかならないのかっ」


ブライト王子の父でもある国王は、王室お抱えの魔法士に詰め寄った。


「残念ながら、私どもの魔力ではブライト様の呪いを解くことは出来ません。

 そもそも呪いは魔法と機序が異なっていて、魔女にしか扱えないものなのです。

 ただ、以前とある街で見た呪われた娘に同じ魔力を感じました。

 もしかしたら、その娘に呪いを解くヒントがあるかもしれません」


「ならばその娘を連れて来るのだ!」


子煩悩な父王は、すぐさま側近に命じた。


かくして辺境の街に引きこもって慎ましく暮らすオタクが、王都へと連れて来られることとなった。


*****


王都の外れに移って以降、麗しの王子は自らに起こった不幸に驚き、悲嘆に暮れていた。


──なんてことはなく、割と楽しくやっていた。


外れとは言え、少し中心に行けば様々な店はあるし、逆に行けば海も山もある。

これは理想の暮らしなのでは?


これまで女性には散々言い寄られ、それなりに楽しんできたから、それほど女性への執着も無い。

婚約者とは結婚すれば仲良くやっていくつもりだったが、これまで彼女に会ったのは2回だけだ。

王族ゆえの特権と制約は理解していたし、結婚に関しては最初から期待もしていなかった。


しかし、そうは言っても呪いを放置していれば王家の沽券に関わる。

これと言った決め手は見つからず、父王が探し出してくれた同じ呪いを受けたという女性に一縷(いちる)の望みを託したのであった。


*****


(んんん?今の僕みたいな微妙な顔の女性が来るのではなかったのか?)


呪われた娘が王都に到着したという知らせを受け、ブライトは自らの城で出迎えた。

そこで、馬車から降りてきた娘を見てブライトは少なからず驚いたのだった。

普通にかわいいと思ったからだ。


(なるほど。同じ魔女から受けた呪いと言ってもその中身は違うのか。さてとりあえず、と)


「急な招待に応じてくれてありがとう!」

初球は無難な挨拶から入る王子。


「いえ。事実上の命令でしたので断れません」

引きこもりオタクは社交辞令を無視し、直球で打ち返す。


(わお。これまでの僕なら考えられない扱い。

 いや、この()、そもそも僕の顔を見ていないな!?)


しかし元キラキラコミュ強王子、これまでに培われた自己肯定感はこんなことでは揺るがない。


「無駄話は嫌いのようだ。じゃあ早速本題に入らせてもらうね。

 恐ろしいことを言って申し訳ないが、君には呪いがかかっている」

「あ、そうですか。教えてくれてありがとうございます。では帰りますね」


いつも水曜入荷の新刊が、王都なら今日の月曜日に買える。

ソワソワして呪いどころではないオタク。


「待て待て待て待て!気にならないのか!?」

「特に不自由はしてませんので。では」


ここで彼女を帰してしまっては、立つ瀬がない。

(きびす)を返して去ろうとする娘を、ブライトは必死で呼び止める。


「単刀直入に言おう!僕の呪いを解く協力をして欲しい。

 それなりの報酬を用意しよう。ひと通りの贅沢は出来るはずだ」

「今の生活に不足はありませんので」


手強い。


「ぐっ。爵位を与えよう!」

「不要です!」


名誉で尊いは満たされない。


「…………」


「………ねえ。…僕はこの国の王子でね?」

出た。元イケメン王子の流し目。


(王家の威光を笠にきて圧力をかけるつもりね!)


「君のことは少し調べさせてもらった」


(間違いない。脅しだ。家族を人質に?それとも父様を騙して実家の土地が抵当に?)


「君が好きだというオンディーヌ先生は元々王家が支援していた作家でね。

 今や押しも押されもせぬ大御所だ。協力してくれるなら直筆サインを手に入れr」

「末永くよろしくお願いします!」


ブライトが言い終わる前に早口なオタクは答えた。

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