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淡くて苦いピンク  作者: 猫野耳子
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1,星占い

――今月のおうし座の運勢は、ちょっぴり期待してもいいでしょう。春に向けて、新しい出会いに準備して♪


(今月の運勢はまあまあだな……。“新しい出会い”って、いつも期待するけど結局何にもないんだよなあ~。)


 青山さくらは、仕事帰りに駅ビルの中の書店で雑誌を立ち読みしていた。こうして時々書店に寄って、占いをチェックするのが習慣だった。今月末から来週初めの運勢は星四つ、来月に向かって尻上がりにだんだん良くなるらしい。毎月占いを見ているが、別に信仰しているわけじゃない。でも、なんとなく良い運勢だと言われると嬉しいし、ランキングの最下位だと気を落とす。案外、女は単純な生き物なのかもしれない。


 こんな雑誌の小さな占いコーナーを当てにしてるなんて、と少し我に返り、雑誌の他のページをぱらぱらとめくる。今は二月だが、雑誌はもう春服の特集になっている。

 紙面のモデルは皆自然な笑顔でハイブランドの服を着こなしていて、キラキラしている。こんなに素敵に着てもらえたら、服も本望だろうなんて勝手なことを思いながら、雑誌を閉じた。可愛い春服の誘惑に負けて、散財してしまうと困る。


 ふと、隣に積まれていた雑誌の表紙に目が留まった。


――もうすぐ春ですね♪あなたの恋愛観を徹底分析!結婚への一歩を踏み出そう!


 これは有名な『メルシィ』という結婚雑誌だ。結婚しない若者が増えている、と社会問題になっているような時代だが、結婚特集なんて売れるんだろうか。なんとなく雑誌を開いてみると、恋愛分析チャートなるものがあったので、やってみることにした。


 早速質問に答えていく。二択で、どちらかの矢印のほうに進んでいくらしい。


――休日はインドア派?アウトドア派?

 (インドア派かな。家でごろごろしてるのが好き。)


――無人島に一人連れていくなら、恋人と友人、どちらを選ぶ?

 (え~。友人かな?とりあえず恋人いないし……)


――富も名声も持っているが短命な人生、平凡だが長生きする人生

 (うーん、難しいな。まあ平凡でいいのよ。平凡で長生きが一番!)


――次生まれ変わるなら、女と男どっち?

 (難しい……。男かな?)


 こんな質問で自分の恋愛観が分かるのか疑問だったが、面白かったので最後まで答えていった。次のページに診断結果がまとめられていた。


――あなたの診断結果は、「尽くす愛!あなたの献身が支える愛のカタチ」です。

あなたは心優しく、面倒見が良いタイプ。頼み事も簡単には断れないのでは?そんなあなたの恋愛傾向はズバリ「献身的な愛」。相手に尽くすことによって満たされ、相手の幸せがあなたの幸せ。ずるい男の人に振り回されやすいので、注意してください。


 はあ。当たってるような、当たってないような。占いはそんなもんだろうか。尽くして振り回されるなんて、ダメ男にひっかかる女みたいじゃないか。

 診断に夢中になっていたら、けっこうな時間が経っていた。今気付いたが、なんとなく足が疲れている。いけない、さっさと帰ろう。雑誌を戻し、書店から出た。


 今日は金曜の夜で、駅ビルの中は仕事帰りのOLや学生やら多くの人が行き交い、それとなく“華金の空気”が感じられる。飲食店街も仕事帰りのサラリーマンで賑わっていて、そこかしこで仕事の愚痴に浸るほろ酔い顔が見受けられる。


(ああ、久しぶりにお酒を買って帰ろうかな。)


 さくらも、この独特の空気に押され、華金の気分になりつつあった。缶チューハイを買うために、地下一階の食料品売り場へ向かう。

 足取りは少し軽くなって、金曜の駅ビルの雑踏の中に混じっていく……

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