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97話:ようこそサイハテ村へ!

 その日の夜。わたしの家に代表者の方々が勢ぞろいしました。ベットに座るわたしから時計回りにイチウ様、オイレボさん、リッカルドさん、ディエゴさん、ムッカさん、マルティナさん、カージナルさんの8人が車座に座っています。ついでに足元にアサヒナ様が寝そべっています。


「えっと、まずは皆さんを紹介しますね。隣にいる方はわたしの補佐をしてくれてるイチウ様です。主にサイハテ村のお役所仕事をお願いしています」

「イチウです。すずめ様の魔法を使うまでもない事を取り仕切っています。よろしくお願いします」


 頭を下げて挨拶するイチウ様にパッセロから来たみなさんが会釈しました。


「お隣がサイハテ村の副村長で、この村の元からの住人代表のオイレボさんです。村周辺の事や農業のことを教えてもらっています」

「オイレボです。たいした知識はありませんが村の発展のために精一杯働かせていただいております」


 再びみなさんが会釈をします。順番から言ったら次はリッカルドさんの番ですが、パッセロの冒険者のみなさんがマルティナさんに目くばせすると代表して口を開きました。


「パッセロから移住希望でやって参りました代表のマルティナと申します。冒険者ギルドの受付嬢をしていました。こちらはパッセロの冒険者の者で、C級のディエゴとD級のリッカルド、同じくD級のムッカと他のメンバーは全員D級です。同じく移住を希望いたします。よろしくお願いします」


 紹介された方々がその都度頭を下げていきます。オイレボさんはC級のディエゴさんに特に驚いていました。パッセロの町でもC級の方はディエゴさん以外見たことがありません。こんな村でC級の冒険者を見る事なんてないのでしょうね。その上のB級、A級なんて王都に行っても見ることも出来ないのかもしれません。


「最後にカージナルさんですが、マルティナさんたちは面識がありましたね。現在はわたしの専属護衛隊長をしていただいています」

「カージナルです。パッセロの防衛戦以来ですな。よろしくお願いします」

「あの時はお世話になりました。貴方の指揮がなければボスが現れる前に町を堕とされていたかもしれません」


 マルティナさんの言葉に冒険者のみなさんが一斉に頭を下げます。わたしは寝込んでいたのでその現場はほとんど見ていませんが、C級のディエゴさんでさえ一目置いているようなのでカージナルさんの指揮能力は相当なもののようです。今更ですが王様の義母であるトモエゴゼン様の護衛から、わたしのような小娘の護衛に引き抜かれて良かったのでしょうか・・・?出世街道から外させてしまったようで申し訳ないですね・・・。


「挨拶も終わったようなのでこれから・・・「うぉん!」・・・あ~・・・こちらの方はすずめ様の護衛のアサヒナ様です」


 イチウ様が話を進めようとすると、わたしの足元で寝そべっていたアサヒナ様が『わたしの紹介がまだですワン!』と一声上げました。カージナルさんの目の前で風魔法を使ってみせたらしく、ラプトルさんだけでなくイチウ様もアサヒナ様が普通の犬ではないことを知ってしまいました。それどころかいつの間にか村中の方にまで知られているらしく、海の上を走ったとか空中を駈け上ったとか、すでに隠しようもない段階に至っています。


「では改めまして。この村の行政を預かるイチウと申します。マルティナ嬢とお仲間の皆様の移住を歓迎いたします。しばらくはゆっくりとして旅の疲れを癒していただくとして、これからの事を相談いたしたく思います」


 イチウ様がマルティナさんたちに声を掛けながら見つめると、全員が頷いて先を促します。


「現在このサイハテ村では急発展をしている都合で、全ての収穫物、所有権は領主であるすずめ様の元に集約して平等に分配しています。みなさんには冒険者としての経験を活かして村の防衛、護衛任務をお願いしたいと思いますが、個別の依頼報酬はありません。いずれはギルドを開設し依頼難易度に応じた報酬をお支払いしますが、当面は共同生活となります。よろしいでしょうか?」

「構いませんよ。そのことはすでに予想していたので仲間内で話し合っていました。飯がくいっぱぐれないなら贅沢は言いませんぜ」


 ディエゴさんが途中から砕けた口調になって、イチウ様からわたしに視線を移して片目をつむって見せてくれました。少し照れたようで耳が赤くなっています。そう言えばパッセロの冒険者ギルドでディエゴさんに初めてお会いした時も、「頑張れよ」と言ってくださって耳が赤くなっていましたね。照れ屋さんなのは変わっていないようで安心しました。


「ギルドを開設するにしても、それには王都の本部と国王様の許可が必要です。買い取った魔物の素材は王都に納めないといけませんからね」


 イチウ様が説明を続けます。今更ですが冒険者ギルドというのは正式には「魔物素材買取組合」と言うそうです。買い取った素材から様々な魔道具を製作し、販売した利益で運営されているのです。そのため希少で有用な素材が採れる魔物の討伐は報酬が高く設定されているようです。お風呂で使っているサラマンダーの角は魔道具ではありませんが素材としては一級品で、金貨数十枚は下らないお宝です!わたしが見たことがある魔道具は火を使わないランプと魔取り線香くらいですが、魔取り線香に使う退魔液の材料も魔物の素材から作られているのでしょうか?

 そんなことを考えている間にディエゴさんたちへの説明が終わっていました。マルティナさんには当面イチウ様と一緒にわたしの補佐をお願いして、ディエゴさんたち15人の冒険者のみなさんは、5人づつ3つのチームを作っていただき、交代で村の警護などのお仕事をして頂くことになりました。空からの魔物を警戒して村の拡張が出来ませんでしたが、これで牧草地や果樹園を作る事ができますね。


「それではこれで大まかな説明は終わりです。今夜は歓迎の宴を開きますので、それまではゆっくりお過ごしください」


 イチウ様が締めの言葉を言って立ち上がると、これまで静かに座っていたパッセロのみなさんがわたしに抱きついてきました。


「「「「チュンチュン!!」」」」

「み、みなさん!お久しぶりです!お元気でしたか!?」


 最初に抱きついて来たムッカさんとマルティナさんにベットに押し倒されてしまいました。二人とも首に抱きついてきて、それぞれ引っ張るので首がもげるかと思いました。お二人とは先ほどお風呂でご一緒したのですが、特に抱きついて来ることはありませんでした。お風呂の説明に驚きすぎてたみたいですね。ディエゴさんとリッカルドさんは二人してわたしの頭を撫でまわします。髪がぐしゃぐしゃになりましたが、うれしさの方が大きかったので気になりません。イチウ様とオイレボさんが外に出ると、入れ違いでララカさんやファビーラさん、それにチーム「テング」の皆さん方も入ってきました。


「「チュンチュン~!」」

「げふっ!」


 ララカさんとファビーラさんまでベットに飛び乗って来たので潰されたカエルのような声が出ました。再会できてうれしいですけど、ララカさんのおっきなお胸で窒息しそうです!ララカさんのおっぱいをペチペチとタップして救助要請すると、ディエゴさんとリッカルドさんが4人を引っぺがして助けて下さいました。


「「チュンチュンを殺す気か!?」」

「げほっ!げほっ!はぁ~死ぬかと思いました・・・」

「チュ、チュンチュンごめんね!」

「おっぱいにチュンチュンの手形がついちゃいました~」

「こちらにまでとばっちり・・・」

「ごめんなさい!嬉しすぎて我を忘れちゃったわ!」


 涙目のわたしの背中をマルティナさんがさすってくれます。ちょっと苦しかったですが、やっぱりうれしさの方が勝っていたので、わたしからみなさんに抱きつくことにしました。


「みなさん!ようこそサイハテ村に!」

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