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85話:お風呂とトイレ。

「すずめ様ただいま戻りました。遅くなって申し訳ありません」

「おかえりなさい!カージナルさん、リステも本当に無事でよかったです!」


 オイレボさんからカージナルさんたちが戻って来たという知らせを聞いて村の入り口に飛んでいきました。結局17日にも及ぶ旅でお二人とも埃だらけでしたが、わたしは迷わず二人の首根っこに抱きつきました。


「チュンチュン、汚れがついてしまいますよ」

「お二人が苦労した証の汚れですよ!わたしにも分けてください!」


 グリグリと頭をこすりつけて二人をギュッと抱きしめます。カージナルさんの伸びた髭がチクチクしましたけどそれも嬉しくて思えました。


 ブルゥ!


「ああ、ごめんなさい!キナコとミタラシも無事でよかったです!いい子にしてましたか?」


 やきもちを焼いたキナコとミタラシにも抱きついてたてがみを撫でてあげます。少し逞しくなった感じがしますね?


「すずめ様、申し訳ありません。馬は調達できませんでした。代わりに牛を買ってきたのですが・・・」


 カージナルさんが頭を下げて謝罪しますがわたしは片手を上げて問題ないと言いました。背後の馬車の荷台には多くの鶏が見え、その後ろには大きな乳牛が何頭も並んでいます。そして、白黒の犬が一匹ちょこんと座ってこちらを見ています。この子も買ってきたのでしょうか?


「ありがとうございます!これで牛乳が飲めるようになりますね!運搬については安心してください。いい方法を思いつきましたので!」

「それは一体?・・・」

「詳しいお話は後にしましょう!お二人ともお疲れなのですからお風呂に入ってゆっくりしてください」


 カージナルさんたちが留守の間にイチウ様と話し合って公共施設の建設を進めました。その一つが公共のお風呂ですが、最初に作ったのはトイレです!わたしの暮らす村長の家でさえ室内にトイレがありません。一応家に隣接する形で小さなトイレ小屋はあるのですが、備え付けのオマルのようなもので紙もなく葉っぱを使って拭いています。しかも村人の男性がわたしの排泄物の処理を行っていると聞いて顔から火が出るかと思いました!他の村人の事情はさらにひどいものでそもそもトイレすらなかったのです!男性は手ごろな茂みで排便を済ませますし、女性ですら野外ですることがほとんどで、部屋の隅で済ます人もいるほどとか・・・。あまりの不衛生さに頭がくらくらしました。江戸時代でもちゃんとしたトイレがあったというのに、この世界の時代基準は一体どうなっているのでしょう?・・・。


「公共トイレを作ります!」


 イチウ様にそう宣言してトイレの開発を始めました。一応貴族として育ったイチウ様の家にはちゃんとトイレもあったそうですが、所謂和式便所で水洗トイレなど王宮にだって存在しないそうです。それならこの村に世界初の水洗トイレを作ってやろうじゃありませんか!まずは土魔法で溝を作り海の方に向かって緩やかな傾斜を付けて行きます。最初はそのまま海に流そうかとも思っていましたが、そこで捕れるお魚を食べる気が起きなくなるので、崖の手前で深さ数十mの縦穴を掘りました。今は処理の方法がないのでしばらくはそこが肥溜めになりますが、一年、二年で一杯になることはないくらいの大きさなので問題はありません。いざとなったら土魔法で埋めて別に作ればいいのですから。排水溝に子供が落ちたりしたら危ないので土で作った板で蓋をして安全性も確保します。次に木で作った板に穴を開けて座って排泄ができる便座を作り、仕切りを付けて個室にしました。男性の小便器は再現が難しかったので、壁に向かって用を足しその下に作った排水溝を流れていく仕組みを作りました。そして最後に精霊シスターズの一人に頼んで、水で押し流してもらうシステムを完成させたのです。


「なるほど。こんなトイレは初めて見ますね。衛生的で処理の手間も省ける。魔法というやつはこんなことも出来るのですか・・・どれ」


 イチウ様も感心したようで試しに小便をしようと壁に向かって立ちました。


「ちょ!私の目の前でしないでください!」


 この世界の人たちの羞恥心のなさには頭が痛くなりますね・・・。


「そしてトイレの次に作ったのがこのお風呂です!」

「はぁ~・・・きもちい~ですね~・・・」


 一緒にお風呂に入ったリステが溶けかけたスライムのようになっています。お風呂があるのは上級貴族くらいのもので、リステもお風呂に入ったのは産まれて初めてだったそうです。トモエゴゼン様のお屋敷にはお風呂がありましたが、警護隊の人たちが使うわけにはいかなかったようですね。


「それはそうです。水はともかくお湯を沸かすには燃料が必要ですから、毎日そんなに使っていてはお金がいくらあっても足りませんよ」

「そうですね。確かに森に行って毎日薪を作るのは大変ですし、村人全員分のお湯を沸かそうとすると、いずれ森が消えてしまいます」


 村の共同浴場は24時間いつでも利用が出来ます。何しろ燃料代がタダですので。


「サラマンダーの角なんてすごいレアアイテムを手に入れましたね。そんな魔道具があるなんて初めて知りました」


 硫黄発掘先で遭遇したサラマンダーを倒し素材を回収しました。村に持ち返ってイチウ様に見てもらうと、サラマンダーの角が温度調節の魔道具になると教えていただきました。以前王宮の宝物庫の定期検査を見学させてもらった時に見たことがあるそうで、魔法使いが魔力を込めると炎が噴き出す武器になると聞いたそうです。わたしが試しに魔力を込めてみると巨大な火柱が立ち昇りました。一瞬の事でしたが髪が数本チリチリになってしまい危うく事故になるとこでした。確かに武器になりそうですが危なくて使えません!そう思っていたらこの角、威力と持続時間の調節が可能だったのです。先ほどは持続時間0で威力100%だったために事故になりかけましたが、威力を押さえ持続時間を長くすることで、お湯を沸かすのにちょうどよい温度になったのです!


「一度魔力を込めると数日もちますので、これでいつでもお風呂に入り放題ですよ~」

「さすがチュンチュンです。お風呂に毎日入れるなんて王都でも実現不可能な贅沢ですね~」


 首までお湯に浸かったリステの前に二つの塊が浮かび上がりました。おっぱいって浮くんですか!?いつもは革鎧を着ているせいでそんなに気にならなかったのですが、リステの胸はおっきいです!プカッと浮かんだ胸をリステが腕で押さえてお湯に沈めます。


「どうかしたのですか?」

「あ、いえ!その・・・思ったよりおっきなおっぱいだなって思って・・・」


 自らのまな板を見下ろしてため息を吐きます。生理も来て大人の身体になったはずですが、未だに胸はぺったんこのままです。まだまだ成長期ですから諦めはしませんが、リステの胸を見た後ではため息もでます。


「わたしもチュンチュンくらいの歳の頃はそのくらいでしたよ」

「そうなんですか!?」

「ええ。大きくなったのは成人後ですから気にしなくてもいいと思いますが」


 まだまだ希望はあるということですね!この世界の成人は15歳です。成人後ということはあと3年ですね。


「何を食べたら大きくなりますかね!?」

「さあ、わたしに聞かれましても・・・あ~噂で聞いたことがありますけど、牛乳がいいと」

「ぎゅうにゅう!?わかりました!これから毎日牛乳を飲むことにします!」


 後で牛さんたちの為の小屋も作ってあげなくてはなりませんね。わたしのステキな牛乳ライフのためにも!牛乳に卵も手に入りますし、あとは砂糖があればケーキを作る事もできそうです。少しづつ生活が豊かになっていきますね。最初は何もない村を見てどうしようかと思いましたが、これから楽しくなりそうです!


「あ、そういえばあのワンちゃんはどうしたのですか?番犬代わりですか?」

「番犬と言えばそうかもしれませんね。牧羊犬らしいので牛たちをまとめるために購入したのですが、村に帰るまでに3匹の魔物を仕留めています」

「え!?あのワンちゃんが魔物を!?」


 武器を持った冒険者や警護隊のみなさんも魔物との戦いは命がけです。そんな魔物をあのワンちゃんが3匹も倒しただなんて・・・。


「後で見てもらおうかと思っていたのですが、あの子の首輪に不思議な文字が書いてあるのです。おそらく漢字語だと思われますが、わたしもカージナルさんも読めませんので」

「へ~なんでしょうね?あのワンちゃんの名前ですかね?」


 漢字で書いてある名前ですか。漢字を書ける人すらほとんどいないのに飼い主さんはよほど教養のある人か学者さんなのでしょうか?


「気になるのでお風呂から上がったらワンちゃんに挨拶でもしてきますね」

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