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07話:お説教されました。

 わたしは今、冒険者ギルドの堅い床に正座をしています。

 さっきから代わる代わる大人の人に怒られていて、耳は痛いわ足は痺れるわですっかり涙目です。


「ごめんなさい!」


 時代劇で見たことがある土下座というものを産まれて初めてしています。現実世界では足が動かないので出来ませんが、ゲームの中でなら出来ました!いえ、喜んでいてはいけません。今は怒られているのですから・・・。


「夜の森は本当に危険なんだぞ!無事だったからいいようなものの、何かあったらどうするつもりだ!」

「ごめんなさい!」

「一応規則だから薬草採集は許可しましたけど、こんな危ないことをするなら冒険者登録を停止しますよ!」

「はい!ごめんなさいぃ~~!!」


 わたしの捜索をしようとしてくれたのは、このパッセロの町で一番大きな冒険者チーム「テング」の人たちでした。その「テング」のリーダーが昨日の銀貨の人で、名前はディエゴさん。確かマルティナさんがそう呼んでいましたね。

 昨日は耳まで赤くなっていてかわいかったおじさん、ディエゴさんですが怒るととっても怖いです。そしてそれ以上に怖いのが受付嬢のマルティナさん・・・。権力まで使って脅してくるのでおっかないですね・・・。

 怖いですけど、二人ともわたしのことを心配して怒ってくれているので、涙を浮かべながらもうれしくて笑顔になりました。


「ごめんなさい!でも、心配してくれてありがとうございます!」

「うっ・・・」

「・・・はぁ・・・」


 ディエゴさんとマルティナさんが怒るのをやめてため息をつきました。


「まあまあディエゴの旦那。無事に戻って来たんだからそれくらいで勘弁してやろうや」

「そうですよ。心配しましたけどこうして無事に戻って来てくれたんだから。ねえ、マルティナさん」


 猫耳のリッカルドさんと熊耳のパオラさんが助け舟を出してくれます。


「でも、これからは無茶すんじゃねえぞ」

「せっかく新人に投資したのに一日でパアになったら大損よ!」

「パオラは銅貨5枚だけのくせに」

「まだ借金あるんだから仕方ないでしょ!」


 昨日パオラさんと一緒にいた静かな女性が、正座をしているわたしを抱きしめながら頭を撫でてくれます。パオラさんとは仲がいいようで、昨日も「ペンダントが首輪に見える」とパオラさんをからかっていました。大人にしては小柄でわたしよりほんの少し大きいだけです。それなのに胸はかなりの大差で負けています・・・。マルティナさんやパオラさんより大きいですね。一体何を食べたらあんなことになるのでしょう?彼女は短めの銀色の髪に赤いカチューシャをつけていて、額からは小さな角が見えています。何獣人の人でしょうか?


「わかった。これからは気を付けるんだぞ」

「仕方ないですね。今回だけですよ」


 ディエゴさんとマルティナさんからもどうにかお許しをいただけました。わたしも皆さんに心配かけたくないですから、この依頼が終わったらしばらくは町の中の依頼を受けることにします。


「よかったね」

「ありがとうございますパオラさん」


 わたしの頭を撫でながら笑顔を見せてくれるパオラさんにお礼を言います。そして、まだわたしを抱きしめたままの小柄な女性に「あの~」と声をかけます。


「ああ、ごめんね。そう言えば自己紹介がまだだったね。あたしは牛人族のムッカ。ディエゴの姉だよ。よろしくね」

「ええええっ!?ディエゴさんのお姉さん!?」


 ディエゴさんの見た目は完全におじさんです。30歳以下にはみえませんけど、そのお姉さんという事はムッカさんて・・・。


「そう。驚いたでしょ?」

「それはまあ・・・」


 ムッカさんはどう見ても20歳前後です。ディエゴさん以上となるとわたしのお母さんと同じくらいという事になりますけど・・・。どう見ても若いです!本当なのでしょうか?


「人族の姉が牛人族だなんて」

「そっちじゃなくて!」

「え?」

「え?・・・」


 ・・・そう言えばディエゴさんの耳は人間ですね。角もありませんし。ムッカさんも角はありますけど牛の耳は見当たりません。他に牛らしい所と言えば・・・そうですか、胸ですか・・・。


「姉ちゃん!人前で姉弟って言うなって言ってるだろ!」

「え~なんでよ~?かわいいお姉さんに向かってひどいなディエちゃんは」


 本当にご姉弟のようです。違う人種でも子供が生まれるのですね。ハーフということなのでしょうか?それにしてもディエゴさんは「ディエちゃん」と呼ばれているんですね。


「ムッカさんのご両親は人族と牛人族なのですか?」

「ううん、違うよ。お父さんは犬人族でお母さんは人族。大体は母親と同じ種族の子が産まれるんだけど、極たまにわたしみたいな違う種族が産まれることがあるの」


 という事は兄弟は基本みんな同じ種族なんですね。お母さんと同じ種族という事は、わたしが子供を産んだらお相手の男性がどの種族の人でも人間が産まれるのか~。・・・お相手の男性のことを考えたらちょっと恥ずかしくなりました・・・。


「はいはい。いつまでも正座してたらすずめちゃんの足が痛くなるでしょ?ムッカもすずめちゃんを解放してあげて」


 マルティナさんが手を差し伸べてくれて立たせてくれます。ムッカさんは少しむくれた顔をしますが大人しく離れてくれました。


「それじゃ説教も終わったことだし、すずめちゃんの依頼の確認をしましょうか?」


 そうです。まだ依頼は終わってないのです。かばんの中身を確認してもらって依頼料を受け取ったら依頼完了なのです!


「え~っと、回復ポーション用の薬草がかばんいっぱいで、あら?この包みは何?」

「あ、それはついでに持って帰った蛇の死体です」

「きゃああああ!!なんてもん持って帰ってくるのよ!この子は!」


 マルティナさんが葉っぱの包みを放り投げました。食べられるかな~っと思って持って帰ったけど、マルティナさんは苦手だったようです。床に落ちた包みを拾いに行くと、包んでいた葉っぱの隙間からあの特徴的な真っ赤な尻尾が飛び出していました。尻尾を葉っぱの隙間に押し込んでいると、マルティナさんが最後の白い花を取り出しました。


「まったく・・・えっとそれから・・・この花は!?」

「ああ、それはトカゲ人(仮)の・・・」


 トカゲ人(仮)の人から貰ったと言おうとした時、マルティナさんの驚きの声が響き渡りました。


「特級回復ポーション素材のヨミガエリ草じゃないっ!?」

「「「「なんだってええっ!?」」」」


 マルティナさんに続いて冒険者のみなさんが絶叫し、ギルドの建物が揺れました。安普請な建物なのかな?

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