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59話:魔物の襲撃!

 サイハテ村に到着しましたがすでに陽が暮れて周りが暗くなってきました。篝火のような物もなく、どの家からも明かり一つ漏れてきません。このままでは真っ暗になります。


「とりあえずキナコとミタラシの馬具をはずしてお水とご飯を用意してあげないと。ここまで長い旅を頑張ってくれましたからね。ラプトルさんお願いできますか?」

《わかった》

「隊長さんは周囲の警戒をお願いします。村の中ですが何か様子が変ですので」

「わかりました」

「食事の用意はプリステラさんにお願いします。わたしも手伝いますので」

「はい」


 すっかり慣れたフォーメーションでそれぞれが役割を果たします。旅の間に色々勉強して野営の準備もばっちりです!村の中で野営をするとはおもいませんでしたが・・・。

 小屋の前で焚火を起こし、先日退治した翼竜のジャーキーを炙ります。最初は魔物を食べるなんてと抵抗がありましたが、これが意外においしかったのです。ちょっと野性味あふれるクセはありますが、食べ慣れればたいして気にもなりません。初めて食べたラム肉に似た感じでしょうか?


「どうぞすずめ様」

「ありがとうございます」


 プリステラさんからいただいた翼竜ジャーキーに噛みついて、両手で引っ張って引きちぎります。


 モキュモキュモキュ


 炙っても堅いところだけは玉に瑕ですが味はサイコーですね!噛めば噛むほど味がしみ出して来て少しの量でもお腹がいっぱいになります。


《いつ食べてもうまいな》


 ラプトルさんの鋭い牙は翼竜ジャーキーをやすやすと引きちぎり、次から次へと胃袋に流し込んでいきます。隊長さんもそれなりに食べますが、ラプトルさんは隊長さんの倍以上は平らげていきます。平均より大きな隊長さんより更に大きな身体をもっているラプトルさんですから、それくらい食べないと体力が持たないのかもしれませんね。


「すずめ様、この村の事ですが」


 ラプトルさんの豪快な食事に見とれていると、隊長さんが食事の手を休めて話し始めました。


「先ほどこの周辺を探ってみましたが、いくつか小さな魔物の痕跡がありました。どうやら村の魔物避け効果がかなり薄れているようです」


 初めて聞く言葉です。村の魔物避け効果とは一体何のことでしょうか?


「すずめ様のお歳ではご存知ないかもしれませんが、王都をはじめ町や村に至るまで、全ての人類の生息域には魔物を寄せ付けない結界が張り巡らされているのです」

「そうなんですね。初めて知りました。ということはこの村にも結界があるのですか?」

「はい。すずめ様の後ろにある祠がその結界の魔道具です」


 え?後ろを振り向いてみると確かに小さな祠があります。暗くてよく見えませんがそこに何かあるのですね?これがあれば魔物が近寄ってこないということですか。この村には壁も柵もありませんから、この結界の魔道具が命綱なんですね・・・。え?


「・・・そ、その効果が薄れているんですか!?」

「はい。幸い村の中にいるのはネズミサイズの魔物のようですが、いつ他の魔物が村に押し寄せるか分かりません」


 大変じゃありませんか!早く結界を張らないと村が危険です!結界を・・・結界を・・・どうやって張るのですか?


「隊長さんはご存知ないのですか?」

「いえ、結界を張るのは領主の仕事ですのでわたしは詳しく知りません」

「プリステラさん!」

「さっぱりです」

「ラプトルさん!!」

《魔物避けの方法を元魔物の俺が知ってるわけがないだろう?》


 あああああああああああ!!わたしが領主ですけど何も聞いてませんよ!!どうすればいいんですか!?・・・そう言えば、わたしが領主になるって言ったら王様は何て言ってましたっけ?



『領主の仕事や必要な物は()()()()に持たせるので何も心配はいらない』



 イチウ様だ!!結界を張るのに必要な物ってイチウ様が持ってくる予定なんですね!!


「補佐のイチウ様っていつこちらにいらっしゃるんでしょうか!?」

「すずめ様がご存知なのではないのですか?」


 詰みました!イチウ様がいらっしゃるまで結界を張ることができません!!わたしたちだけで・・・24時間、魔物から村を守らなければならないのですね・・・。町で防衛していた時は町壁の上から攻撃できました。背後は町で守られていたし、空を飛ぶ魔物もいなかったので前方への攻撃に専念できましたが、この村には壁も無ければ安全地帯もありません。四方八方から攻められてしまいます。味方はわずか3人のみ。これでは村を24時間守るなんて不可能です!


「と、とりあえず、今夜を乗り切らないとなりません。2交代で朝まで頑張りましょう・・・」


 隊長さんとプリステラさん、わたしとラプトルさんで夜の番をすることになりました。隊長さんはわたしにまで見張りをさせることに反対しましたが、ラプトルさんの言葉がわかるのがわたしだけなので渋々了承してくださいました。長い入院生活で規則正しい生活をしていた事、まだ12歳の子供であること、そして長旅で疲れているせいでわたしの睡魔が限界を迎えうつらうつらとし始めたため、最初の見張りは隊長さんたちがすることになりました。プリステラさんが小屋の中を確認し、粗末ですがベットを見つけたため、そこにブランケットをひいてわたしを寝かせました。ラプトルさんは小屋の外で扉を背にし腕を組んで眠りにつきます。そして深夜にさしかかった頃ラプトルさんが目を覚ましました。


《くるぞ》

「ん?なんと言ったのだラプトル殿?交代まではもう少し時間があるが・・・」


 言葉は通じませんがラプトルさんが槍を握ったことで、隊長さんもプリステラさんも状況を理解しました。


「魔物か!?プリステラ!すずめ様を!」

「はっ!」


 その時、物音一つさせずに上空から昆虫型の魔物が降ってきました。羽ばたいて近づくと羽音で気づかれるため、上空で羽を仕舞い重力に任せて落下してきたようです。


《ジャイアントビートルだ!焚火の光におびき寄せられたな》

「すずめ様起きてください!魔物の襲撃です!」

「は・・・はぇ?・・・」


 不思議な夢を見ていたせいでまだ寝ぼけています。夢の中でわたしは病院のベットで寝ていました。いつもの病室ではなく集中治療室のような所で、身体から伸びるケーブルはいつもより多く、点滴や呼吸補助器まで取り付けられていました。部屋は暗くよく見えませんでしたが、廊下の灯りに照らされた入り口の小さな窓の外には、わたしと同じくらいの年の男の子の顔が見えていました。どなたでしょう?


「すずめ様!!」

「はっ!?え!?」


 ようやく目が覚めました。小屋の外から戦いの音が聞こえてきます!魔物の襲撃ですか!?扉を開けて外に出ると隊長さんたちが巨大な昆虫と戦闘になっていました。焚火が踏み荒らされ明かりが少ないのでよくわかりませんが、ざっと見た感じ10匹ほどです。

 迷っている暇はありません。わたしは即座に呪文詠唱を始めます。


「敵を 貫け 水槍!!」

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