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56話:荒れ地に道を!

【トモエ】


「東外門突破されました!!」

「内門閉鎖!バリケードを築きな!動ける者は壁の上から投石!協力してくれる町民には松明を投げ込みさせな!」


 参ったね。魔物の数が多すぎる。ざっと300匹ってとこかい・・・。地面を這いずる魔物なんてわたしの範囲魔法で一掃してやりたいとこなんだけど、空を飛べる昆虫型の魔物が50はくだらないからね・・・そちらの相手で手一杯さね。空の魔物の厄介な事はこちらの攻撃手段が弓矢しかないうえに、動きが早くて命中率はよくないし、堅い装甲で半分は弾かれちまっている。結局わたしの魔法しかないんだけど、ばらついてるせいで範囲魔法が使えず一匹づつ相手するしかない。このままじゃわたしの魔力が尽きる方が早そうだね・・・。

 あの子はこんな攻撃を凌いだうえに大型魔物まで倒しちまったってのかい!?まったくこの年で幼い子の才能に嫉妬する日が来るなんてね・・・。

 それにしてもなんで複数の魔物がこんなに連携して攻撃してくるんだい!?空を飛ぶ魔物だけでも4種類はいる。まるで誰かの命令で動いてるようだね・・・。人類ならこういう時指揮している奴ってのは大抵・・・!?あれは?





【たくや】


「くっそ!また魔法使いがいるのか!?これで3回中2回も邪魔されてるじゃないか!」


 あの城壁の上にいるババアめ!前回の女の子程強くはないけど、こっちもSRスペシャルレアカードがないから押し切れない!あいつさえ倒せば勝てるのに、コモン アンコモンカードで呼び出した魔物は勝手に動くだけだからあのババアを狙ってくれない!唯一動かせるのは指揮官クラスのレアカードの魔物だけだけど、魔法も特殊能力もないコイツじゃ勝ち目がない。


「たくや君。そろそろ検査の時間よ」

「え?今日検査だっけ?」


 仕方ないな・・・。どうせこのままじゃ勝ち目はないし一旦退却させるか。


「【退却開始】。あ~これで半分以上のカードがとけそうだなぁ・・・。夜にもう一回どこか攻めてみるか」





【トモエ】


「なんだい、どういうことだい!?」


 あの見たことがない色の昆虫型魔物が反転して退却すると、一部の魔物たちがそれに従って退却していったよ?残っているのは百にも満たない魔物だけ。これなら範囲魔法でいけそうだね!


「大空を満たす 父なる 風よ 巫女の 願いを聞き届け その姿を現し 敵を 蹴散らし給え 風嵐トルネード!」


 久しぶりに使った範囲魔法だったけどその威力は依然と変わらないようだね。一撃で数十もの魔物を切り裂き、十数匹もの魔物を負傷させた。


「騎士たちよ!二人一組で魔物にとどめをさしな!逃げる魔物は追わなくていい!」

「「「「おうっ!」」」」


 内門が開き騎士たちが一斉に反転攻勢に出る。地上の魔物は任せても大丈夫そうだね。あとは残った空の魔物だけど、どうにもおかしいね・・・。急に統制が効かなくなったように魔物の連携がなくなり、魔物同士の小競り合いまで始まった。これが本来の魔物の姿だけど急にどうしたんだい?


「・・・あの見たこともない色の昆虫型魔物が指揮してたって言うのかい?」


 警護隊のカージナルの報告にもあったけど、本当に誰かに操られているんじゃないだろうね。


「なんだかきな臭くなってきたよ」





【すずめ】


「すずめ様、この先から少し空気が悪くなりますのでご注意ください」

「空気が?どういうことですか?」


 パッセロの町を出て9日目。明日にはサイハテ村に到着するそうですが、空気が悪いとはどういうことでしょう?少なくともこの世界は元の世界よりよっぽど綺麗で、病室の空気清浄機のついてる部屋より空気がおいしいですけど?


「これから先は荒れ地になります。近くに火山があるせいで変な匂いがするんですよ」

「火山!?そんな所に近づいて大丈夫なんですか!?」


 桜島や阿蘇山の噴火のニュースを見たことがあります。噴煙の火山灰や噴石なんかも飛んできて危険なイメージしかないですけど・・・。


「大丈夫とは?確かにいつも煙がでていますけど、あれは魔力が熱と煙に変換しているだけですので特に危険はないですよ?ただ臭いですけどね」


 あ~そうでした。ここはゲームの世界でしたね。火山もアトラクションの一種であって、自然災害とかとは無縁のようです。よく考えたらこの世界に来て一ヶ月は過ぎていますが雨が降ったこともありません。曇りの日すらないのです。この分だと季節の変化すらないのかもしれませんね。

 やがて草原が少しづつまばらになっていき、岩がゴロゴロ転がっている荒れ地になってきました。


 ガタン!


「あうっ!」

「舌を噛みますので口は開かないでください!」

「ふぁい!」


 馬車の後ろを見ると進んで来た道に草が生えていないので、どこが道でどこが荒れ地なのかもよくわからなくなりました。本当にここは道なんですか?馬車の車輪は丸い木枠に鉄板を張り付けたような感じで、ゴムがないのでクッションも何もあったものじゃありません。座っている木の箱が跳ねるたびに身体が宙に浮いて、その都度お尻に激痛が走ります。もう真っ赤に腫れてしまってまともに歩けないんじゃないでしょうか!?


「ちょっと止まってください!このままじゃお尻が二つに割れちゃいます!」

「お尻は元々割れてますよ」


 プリステラさんの発言はあえてスルーして止まった馬車から飛び降りました。


「あいたたた・・・」


 ワンピースの上からお尻を押さえますが皮が剝けたのかヒリヒリします。隊長さんとプリステラさんも馬車から降りてわたしの心配をしていますが、同じ馬車に乗っていてなんでお二人は平気なんですか?


「すずめ様、少し休憩しますか?」

「そ、そうですね。休憩した後に少し試してみたいことがあります」


 馬車からブランケットを持ってくると、出来るだけ角ばっていない岩の上に広げてその上に座ります。

 わたしの魔法は詠唱の呪文にもあるように「わたしの求めに応じて」色々応用が効きます。イベントボスの時にやった水球の分裂や、槍状にしてみたり矢にしてみたり。それなら・・・。


「そろそろ行きましょうか!」

「すずめ様、もう大丈夫なんですか?」

「すずめ様、下着を何枚か重ね着すれば少しはましになりますけど?」


 プリステラさんがわたしのパンツを取り出して広げています。隊長さんが見てるんですから広げないでください!プリステラさんからパンツをひったくると身体の後ろに隠します。男だらけの軍隊で生活しているせいなのか、プリステラさんは羞恥心というものが少し欠けているような気がします。ふんどしの時といい、生理の時といい・・・。


「コホン。隊長さん、わたしも御者席に座らせてください」

「構いませんが?こちらの方が揺れがひどいかもしれませんよ?」


 隊長さんの手に捕まって御者席に座ると目の前にいるキナコとミタラシに声をかけます。


「ちょっと魔法を使いますけど驚かないでくださいね」


 理解できるかどうか分かりませんけど、わたしの声に反応するようにブルゥっと鼻を鳴らします。デコボコ道で二人とも大変だったでしょう。たぶんこれから先は楽に走れるようになりますよ!


「大地を 覆いし 母なる 土よ すずめの 求めに応じて その姿を変え なだらかな 道となれ 舗装(パヴィメンタ)工事(ツィオーネ)!」

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