48話:はるばる来ました王都です!
蜥蜴人族?名前を付ける前までは確か「魔物族」だったはずです。名前を付けただけで種族が変わったのですか!?意味が分かりません・・・。
「すずめ様、もうよろしいですか?すっかりご飯が冷めてしまいましたよ?」
「ちょ!ちょっと待ってください!今頭を整理していますので!」
システムからの解放は出来ませんでしたが「システム変更」は出来ました。名前をつけることが出来ただけだと思っていましたが、「システム変更」によって種族が変わったのですか?ゲームをするのは初めてなので、これが普通のことなのかよくわからないですね・・・。他の魔物もこの魔法を使えば人類の仲間になったりするのでしょうか?
「うぅ~ん・・・」
うん!考えても分かりません!分からないことは考えても無駄ですね。とりあえずはそういうものだと思っておくことにします。
「すずめ様ぁ~!!」
おや?おうちの中が騒がしいですね?わたしを探しているようですけど?
「すずめ様は厩舎です!」
プリステラさんが大きな声で返事をすると、縁側を走る音が聞こえ、やがてジャリジャリという庭園の玉砂利を踏みしめる音に変わりました。
「すずめ様、こちらにおいででしたか!?」
「どうなさったのですか、隊長さん?」
「実は御前より連絡が着まして、至急王都までお越しいただきたく!」
王都!?突然どうしたのでしょうか?トモエゴゼンさんは現在王都で特級回復ポーションを作っているはずですけど、何か問題でも起こったのでしょうか?
まさか!?「ヨミガエリ草」に何か問題でもあったのでしょうか!?少し痛んでいた気もしますし、今更お金を返せとか言いませんよね!?全部使っちゃいましたが・・・。
「と、とにかく王都に行くことにしましょう!プリステラさん、隊長さん、準備をお願いします!わたしはギルドに行って食堂の依頼の中止をお願いしてきます!」
「「はっ!」」
ギルドへの連絡は思いの外スムーズにいきました。ギルドでもトモエゴゼンさんの影響力は強いらしく、お手紙を見せるとあっさりと依頼中止を認めていただけました。食堂には迷惑をかけてしまうので謝りに行こうと思いましたが、ギルドからの緊急依頼という形でムッカさんが代わりに引き受けてくださいました。
お屋敷に戻って女中さんに着物の着付けをお願いすると、お昼前にはパッセロの町を出発しました。わたしとしてはキナコとミタラシに馬車を引いて欲しかったのですが、魔物に慣れていない馬は暴れてしまうことがあると隊長さんに反対され、いつも通りノソブランキウスとアピストグラマに馬車を引いてもらうことになりました。せっかくわたしのペットになったので一緒に旅行がしたかったのですが、二人はお留守番ですね。
「それにしても至急だなんて、トモエゴゼンさんに何かあったのでしょうか?」
パッセロの町から王都まではアサヒナさんのお墓のあるラッテの町を経由して、更に5つの町を通り過ぎて4日後に到着しました。ラッテの手前で一度だけ魔物の襲撃がありましたが、数匹の昆虫型の魔物だったためあっさり撃退し、その後は何事もなく前回よりも安全な旅でした。
「ここが、王都!?」
初めて訪れた王都は左右見渡す限りの壁が続いており、遠く霞む先まで続く壁は万里の長城のようで圧倒されましたが、パッセロの町と同じくらいの低い壁が意外でした。こんな高さで大丈夫なのでしょうか?
パッセロの町と同じ二重の門になっており、間の広場には多数の荷物を積んだ馬車が列になって検査を受けていましたが、当然と言うかトモエゴゼンさんの馬車は検査もなしで優先的に通過させていただけました。そして門を抜けて王都の中に入り圧倒されました。視界一杯に広がったのは広大な田んぼです!所々にある風車と小さな小屋以外は田んぼしか目に入りません。まだ短い青い苗が緑の絨毯のように広がっており、飛び交う蝶々がまるで妖精のようでとても幻想的な光景でした。
「すごいですね・・・」
「ここは一応王都の中ですが、しばらくはこんな景色が続きますよ。都民100万人の生活を支える食糧庫ですね」
100万人!?とても多いことはわかりますが実感が湧かない数値ですね・・・。パッセロの町では町壁の外に畑が広がっていましたが、王都では田んぼも壁で守られているんですね。魔物がいる世界なので当然と言えばそうなのかもしれません。それにしても、テレビで見たことがある田園風景とは似ても似つかない光景です。段々畑もなければ山もありません。これだけ広大な平地を見たのも初めてですが、まるでオランダにあるような風車が田んぼから生えている様はまるで異国に来たような感じです。・・・異国どころかゲームの異世界でした。
結局1時間ほど同じ景色が流れるだけの時間が過ぎ去ると、巨大な壁が見えてきました。
「これが本当の城壁ですか~!?」
城壁前の門まで来ると馬車の窓から壁を見上げました。城壁は4階建てのビルほどの高さがあり、両手を広げたほどもある大きな石が綺麗に積み上げられています。崩れるとは思いませんが真下に来るとものすごい圧迫感を覚えます。ちょうどわたしの入院していた病院くらいの高さですね。壁の上には等間隔で大砲が設置されており、数人の軍人さんらしき姿も見えています。あんな巨大な大砲で撃たれたら先日の大型の魔物もひとたまりもないかもしれません。
「失礼します!王都警備隊のブランコであります!決まりでありますので公爵様の馬車とは言え検分させていただきます!」
「王室警護隊のカージナルです。こちらが入都許可証と陛下からの召喚状です」
うわぁ・・・また「陛下」と言うお名前が聞こえました。トモエゴゼンさんのことを以前も「陛下」と呼んでいましたけど、まさか本当に女王様ってことは・・・ありえませんね。女王様がパッセロの町に住んでるはずがないですもの。そうなるとやはり王様のお母様かお祖母様なんでしょうか?どちらにしても一般人のわたしからしたら雲の上の存在ですね。
陛下と呼ばれるほどのトモエゴゼンさんはわたしにどんなご用事があるのでしょうか?「ニンゲン」の件は黙っていてくれると言ってましたし、それ以外となると・・・「魔法」ですかね・・・。




