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47話:種族変更?

「すずめ様、おはようございます。朝食の用意が出来ていますよ」

「・・・おふぁよぅございまふ・・・」


 いつものようにプリステラさんが起こしに来てくれました。ここ数日やたらと朝が弱くなりました。一日中ベットにいた頃とは違い、毎日バタンキューと倒れるまで動きまくっているせいでしょうか?

 パッセロの町の防衛戦から2週間が経ちました。いつの間にやらトモエゴゼンさんのお屋敷にはわたしの部屋が用意されています。また遊びに行ってもいいですか?とは聞きましたけど、引っ越してもいいですか?とは言ってないんですが・・・。ぼーっとしたまま側に置いてある櫛を手に取ると、無意識に髪を梳かしてポニーテールにまとめます。


「竹の櫛か~・・・べっこうの櫛に比べて引っ掛かるなぁ・・・」


 わたしがこの世界に持ち込めたと言うか勝手にやってきたのは、衣服以外では蝶の形のべっ甲のバレッタと二つの髪留めゴムだけです。バレッタの方はパオラさんのお墓に遺品として一緒に納めたので手元にありません。残ったのはゴム二つだけですが一つが切れてしまいました。どこかで調達したいのですが、こっちの世界にはゴムってないんですよね~。


「そういえば雑貨屋さんで色つきの紐が売ってましたね。暫くはあれを使ってみますか。プリステラさん、ポニーテールの位置おかしくないですか?」

「大丈夫だと思いますよ?」


 プリステラさんに見てもらい頭を左右に軽く振ってみます。鏡もないので髪型のチェックが出来ないのが困りものです。


「よし!ちょっとラプトルさんの様子を見てからいきますね!」

「あ、すずめ様!?ご飯が冷めてしまいますよ!?」

「すぐ行きますから~!」


 部屋を出て縁側にある下駄を履くと、綺麗に整えられた日本庭園を横目に裏にある馬小屋に向かいます。このお屋敷には現在4頭の馬がいて、オークション会場やアサヒナさんのお墓のある町まで馬車を引いてくれたのが牡馬の「ノソブランキウス」と「アピストグラマ」。随分カッコイイ名前ですね。そして回復ポーションを買う時に馬車と一緒に購入した2頭の牝馬にはわたしが名前をつけました。「キナコ」と「ミタラシ」です。お腹がすいてたわけじゃないですよ!昔からペットを飼えたらつけたいと思っていた名前です!

 江戸時代にはポニーのような馬しかいなかったようですが、ゲームの世界なのでどの子もしっかりサラブレッドしています。


「おはようキナコ、ミタラシ」


 厩舎に入ると手前にいるキナコとミタラシの首元を撫でてあげます。そして奥にいるノソブランキウスとアピストグラマにも挨拶をすると、一番奥の藁の山で寝ているリザードマンに声をかけます。


《おはようございますラプトルさん!》

《・・・ああ》


 ・・・言い訳させてください!決して厩舎で寝泊まりするように言ったわけじゃないんです!ラプトルさんが「家の中よりこちらの方が落ち着く」とおっしゃったので、大量のワラを敷き詰めたベットをつくったのです!


《・・・やっぱり家の中はイヤですか?なんだか申し訳ないんですけど・・・》

《命令ならば従うが?そうでないなら構わないでくれ》


 トカゲ人(仮)の人は誰かに植え付けられた、()()()()()()に支配されて苦しんでいました。わたしの魔法でその「システム」から解放しようと試みたのですが、結果としては失敗してしまいました・・・。魔法生成LV1程度でなんとかなるほど甘くなかったようです。

 ただ、魔法を使用した時「システム」の一部には接触できたようで、詳細表示に「名前変更」という項目が現れました。


【リザードマン(名前変更)】魔物族:18歳:オス

 肉体総合力:74

 精神総合力:52


 そしてなんとなく頭の中に浮かんだ、トカゲ→恐竜→映画→ラプトルという図式で名前を「ラプトル」にしてみました。すると目に見えない鎖のような物がトカゲ人(仮)の人の首に巻き付き、わたしの従者になってしまったのです。


《ごめんなさい。わたしが勝手に名前をつけてしまったばかりに・・・》


 わたしはただ頭を下げるしかありません。作られた本能から解放して自由にしてあげたかっただけなのですのに、むしろわたしに拘束されて不自由な目に合わせてしまいました。


《いや、勝った者に従うのもまた自然の摂理。従属したとは言え、おかげで頭の中はスッキリしている》


 自由にはしてあげられませんでしたが、わたしが作った魔法「システム変更」を使用することで、「人類を殺せ」という作られた本能を改ざんすることには成功しました。新たな本能の「人類と仲良く」がラプトルさんを苦しめることがなければいいのですけど・・・。


《それにしても、無理にここにいなくても森に帰ってもいいんですよ?》


 名前を付けて従属させてはしまいましたが、人類を襲わなければ森で自由にしていてもいいと言ったのですが、ラプトルさんはわたしの側にいさせて欲しいとお願いしてきました。


《そうできればいいんだがな。俺はお前の魔法によって魔物たちの「システム」から逸脱してしまったようだ。すでに魔物はおろか、仲間だったはずのリザードマンたちにさえ仲間意識を感じない。おそらくあちらから見てもそうなのだと思う。俺は外見はリザードマンだが、内面は人類のカテゴリーに入ってしまったようだな》


 え?え?ちょ、ちょっと待ってください!魔物やリザードマンから見たらラプトルさんは人類の一人なんですか!?それじゃ人類から見たら?・・・。


《ラプトルさん!ちょっと待っててください!》


 わたしは走って厩舎の出口に向かうと、驚いて抗議の声をあげるキナコとミタラシに「ごめんね~!」と声をかけながら縁側から家の中に飛び込みました。そのまま走って食堂に入ると、モグモグとご飯を食べているプリステラさんの腕を掴んで引っ張っていきます。


「すずめ様!?どうなさったのですか!?」

「いいから来てください!」

「あ~せめてあと一口!」


 プリステラさんを連れて再び厩舎に戻ると、ゴロンと横になっているラプトルさんに会わせます。


「なんなんですかすずめ様?」

「ど、どうですか!?」


 左手に茶碗を持って右手の箸でたくあんをつまんだままのプリステラさんは、ラプトルさんを見ながらそのままたくあんをカリコリと食べ始めました。


「どうとは、モグモグ、どういう意味ですか?」


 以前と反応が違います!


「ラプトルさんはリザードマンですよ!?」

「はあ?まあそうですね。それが何か?」


 プリステラさんは以前は瀕死だったラプトルさんにも警戒をしていました。回復ポーションを飲ませた時なんて完全に臨戦態勢だったというのに、今は何の警戒もしていません!?わたしはピョンと藁の山に飛び乗るとラプトルさんの隣に座ります。それこそ手を伸ばせば届く距離です。


「ほらほら!こんなに近くにいますよ!?」

「すずめ様どうかされたのですか?仲が良いのは結構ですが、あまりラプトルさんに迷惑かけないようにしてください。それと蜥蜴人族の人をリザードマンと呼ぶのはあまり関心しませんよ?」


 え?蜥蜴人族?


 わたしは急いでラプトルさんの頭の上にある表示を見ます。


【ラプトル】蜥蜴人族(従者):18歳:オス

 肉体総合力:74

 精神総合力:52


 あれれ??

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