表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/98

42話:戦い終わって・・・。

 あれから1週間が経過しました。

 わたしは未だトモエゴゼンさんのお屋敷で暮らしています。一度トモエゴゼンさんからお手紙が届き、特級回復ポーションの生成にもう少し時間がかかるので、屋敷で待っているようにと連絡がありました。その間屋敷と警護隊の皆さんは自由に使ってよいとのことでした。


 3日間に渡る魔物とイベントボスの襲撃によって多数の死傷者がでました。冒険者並びに町の警備兵の負傷者382名、死者89名。わたしが屋敷で寝込んでいる間にこんなに被害が拡大していることにショックを受けました。わたしがもう少し早く駆け付ければ、死なずに済んだ人も大勢いたのではないでしょうか・・・。後悔ばかりが頭をよぎります。

 回復ポーションは魔物の襲撃2日目にはほぼ底をつき、治療困難状態に陥りました。回復ポーションの普及によって医者がほとんど居らず、死者のうち47名はこの1週間で亡くなった元負傷者です。町の中央に在庫の回復ポーションを回すよう要請したようですが、送られてきたのはわずかで重傷者を何人か救えただけでした。

 西の森に薬草採集に出ようにも未だ逃げ遅れたり迷った魔物が彷徨っているため、Dランク以上の者にしか外出許可が降りていません。当然薬草採集の依頼には緊急の判が押され、ディエゴさんを筆頭にリッカルドさんやムッカさんも採集に出ています。わたしが採集した時には手前から北側に渡る一帯のかなりの範囲を探してやっとかばん一杯でした。残るは南側と森の奥だけです。どれくらい採れるのか・・・。


 町の町壁はかなりの損傷を受けており、壁の修復も緊急案件です。瓦礫の撤去にはかなりの力と体力が必要になるため男手が必要ですが、500名に上る死傷者と採集に人手が取られ遅々として進んでいません。とりあえずは直接町に繋がる外周の2か所の復興が急務です。


 幸いと言ってはなんですが、パオラさんの行方不明で早期に警戒していたギルドは、魔物襲撃の対応が早く一般庶民の死傷者を0に抑えることができました。パオラさんの死は無駄ではなかったのです。

 そのパオラさんの遺体は町の南の共同墓地に葬られました。わずかな遺品しかありませんでしたが、ムッカさんが預かっていたパオラさんの荷物から日記が出てきました。他の人の借金を背負っていたそうですが、そのことには一切触れておらず、とにかく楽しかったことだけを綴られた日記です。最後の2ページにはわたしと出会って楽しかったことがぎっしりと書き込まれており、最後の一行に「すずめちゃん、ごめんなさい」と書かれていました。ぽろぽろと涙がこぼれます。パオラさんと過ごしたのは時間にしてわずか2日程度です。それなのにこんなにもわたしの中で占める割合が多いのは、やはりお母さんに似ていたからでしょうか?


 先日オークションに出した『ヨミガエリ草』の売却金がギルドを通して支払われました。銀貨820枚ですが手数料が1割引かれ銀貨738枚です。

 わたしは今そのお金を持って馬車で隣町に向かっています。回復ポーションを購入するために。


「すずめ様、このようなお遣いであれば警護隊の我々にお任せいただければ・・・」

「町にいてもFランクのわたしは採集にもでれませんし、何より仲間であるプレコさんとガロさんの怪我の治療のために何かしたいのです」


 最後の戦いでプレコさんとガロさんが重傷を負いました。幸い命の危険はないため、数少ない回復ポーションは他の人に回し屋敷で療養中です。町の中央にはまだ回復ポーションの在庫があるにもかかわらず、いざという時のためと手放したがりません。どうやら反国王派の貴族らしく、トモエゴゼンさんはその監視の意味でもここに住んでいるようです。上も色々面倒なことになっているんですね。


 パッセロの町の南側にあるケイロンの町は中立貴族がおさめているそうなので、お金次第で回復ポーションも買えるそうです。


「わたしのわがままに突き合わせてしまってごめんなさい」

「何をおっしゃいますか。すずめ様がいる場所が我々のいる場所です。むしろ警護の人数が少なくて申し訳ないくらいです」


 今回の回復ポーションの買い出しには5人の警護隊の人たちが付き添ってくれています。

 プレコさんとガロさんが病床にあり、その警護にラミノーズさんとプラティさんがついています。そしてプリステラさんですが、月の障り中でお休みです。


「こんなに重い症状がでたのは初めてです・・・」


 とのことでした。直前にあったイベントボスとの戦いや、バイオリズムの乱れの為に何らかの影響が出たのかもしれませんね。

 イベントボスと言えば討伐後に『イベントボス討伐報酬を得ました』とアナウンスがありました。とくに目に見えるプレゼントはなかったのでステータスを確認すると、魔法適正に新しく「無」というものが追加され、習得魔法に魔法生成LV1が表示されていました。

 魔法生成LV1?魔法を創り出せるということでしょうか?魔法を創るということがどういうことなのかいまいちよく分かりませんが、時間が出来たら検証してみましょうか?


「とにかく、今わたしにできることは回復ポーションの調達です!プレコさんとガロさんのためにも急ぎましょう!」

「「「「はっ!」」」」





【国王】


「それは真かっ!?」

「はい、たった今届いた情報です。王国最西端のパッセロの町が魔物の襲撃を受けている、と」


 確かにパッセロより西側は魔物の領域だが、群れをつくるのはせいぜいゴブリンとリザードマンくらい。町を攻められるほどの戦力はないはずだ。


「あそこには確か北に迷宮があったな。そこから溢れたのではないか?」

「魔物の襲撃が確認されているのは西門のみで、町のその他の門やその周辺は平穏状態とのことです」

「襲撃規模は?」

「五日前の情報になりますが、幾多の魔物の混成部隊で数は確認されただけで300は下らないと・・・」

「バカなっ!!」


 魔物の混成部隊だと!?ただでさえ群れを作る魔物は少ないと言うのに、多種の魔物と連携を取るなどありえんっ!!


「陛下、今は事実のみを認識し対応を取るべきかと」

「・・・ふぅ・・・貴様が冷静だと激昂しているわたしがバカみたいだな・・・」


 こんな事態は前代未聞だが、口やかましい宰相兼、冷酷非情の軍師兼、俺を馬鹿呼ばわりする幼馴染のコイツなら、すでに対応策を考えているはずだ。


「それで、どうすればいい?」

「少しはご自身で考えて欲しいものですが、却下する手間が省けるので助かります」

「俺は王だぞ。少しは敬意を払えよ・・・」

「パッセロの町は反国王派のゼニーロ男爵の領地ですので、救援が遅れると心証が悪くなります。早々に隣町のラッテの領主、ナナトレイ伯爵に救援の兵を送らせるべきかと」


 王都からの正規軍の派遣にはそれなりに時間がかかる。常に常駐している軍は王都防衛用であり、遠征用の軍ではないからだ。予備兵力もあるにはあるがそれは常駐兵の交代要員であり、遠征時には各地から召集しなければならない。さらに兵站の準備や大群が移動するための各地への通達など、どんなに急いでも一週間はかかるだろう。移動に4日かかるとして11日か・・・。

 ナナトレイ伯爵のラッテの町までは早馬で3日。兵の規模にもよるが準備に2日はかかるとして進軍に1日。6日か・・・。それでも遅い・・・。


「間に合うと思うか?」

「正規軍では無理でしょう。ここは王国からの緊急依頼を出し、冒険者に先行してもらうのが得策かと」

「なるほど、それなら早ければ準備に1日もかからないか」


 冒険者ならば準備の時間が要らない。それでもまとまった数の到着まで4日。それまで持ちこたえてくれればよいが。


「パッセロにはトモエ御前がおられたな。義母上はご無事だろうか・・・」

「御前でしたら2日前からこの王都にご滞在です」

「なんだと!?聞いていないぞ!」

「今ご報告したでしょう」


 ぐっ!コイツは・・・。


「義母上は何をしに王都に?ここには来たがらないだろうに」

「来訪目的は、こっぴどく追い返されましたので詳しくは・・・。ただ数日前にアサヒナ殿が亡くなられたとお聞きしましたので、その関係かと」


 義母上らしいな・・・。アサヒナは確か義弟のヨリトモの娘だったな。王妃だったアオイが死んで以来、ヨリトモとは疎遠になってしまったので会ったことはないが。


「亡くなっていたとは残念なことだ。まだ若かっただろうに、病か?」

「それが、どうやら他殺の可能性が強そうです」

「なんだと!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ