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40話:ギリギリセーフ・・・。

【たくや】


 よぉし!昼飯も食べたし今日は検査もない!さっきの砦を落としてやるか!!

 最初はつまんねーゲームかと思ったけど、NPCの動きがリアルでぶっ殺すのが楽しいんだよな~。さっきは強力な攻撃をしてきた魔法使いの女の子がいたけど、倒してやったからもう砦に強いやつは残ってないだろう。ちょっとおしかったけどな。


「あれ?なんか引っ掛かるな。ムービーで魔法詠唱があったけど、なんて言ってたっけ?大気に満ちたる~母なる水よ~・・・」


 ん~忘れた!ちょっと気になったけどもう倒しちゃったから仕方ないか。


「んじゃ!砦を落としにいくかな!全軍すすめぇっ!」





【すずめ】


 バタバタバタ・・・


 ちょっと町壁の上って風強くないですか!?スカートがめくれそうで落ち着かないんですけど!

 バタつくスカートの裾を片手で押さえながら、もう片手はたなびく髪を押さえます。遥か遠く森の少し手前にいる巨大なイベントボスが、のそのそとこちらに向かって来ており、それより先に小さな魔物が数百匹向かって来ています。


「ボスに集中したいとこなんだけど、あちこち壁が壊れていますから、ほっとくと町に浸入されてしまいますね」


 うまくいくかどうか試してみますか。


『大気に満ちたる 母なる 水よ すずめの 敵を ()()()()


 詠唱速度の数字が1から2になった時、言葉の速度が上がるのかと思ったけど、そうではなく呪文が短くなりました。呪文が短くなることで詠唱速度が上がると言うわけです。そして2から3になった時も短くなりました。「言葉を消しても」魔法が発動するなら「言葉を変えてみたら」どうなるのかな?それがコレです!

 『撃て』を『薙ぎ払え』に変えたと同時に、直径4mほどにも大きくなった水の玉が分裂して、無数のバレーボールサイズになりました。その数100以上!目の前に見えてる魔物のステータスが、わたしの視線に沿って赤く変わっていきます。いけそうです!


『水球!!』


 チュドドドドドドドドドドドドドドドド!!


 わたしの上に浮遊していた無数の水球が向かってくる魔物の群れに次々と着弾しました。いくつもの水煙が上がり、魔物が宙に舞っています。頭が吹き飛んだ魔物、手足が飛び散った魔物、エゴですが出来うるなら苦しまないでくれるといいですね・・・。


 町壁の上にいる警護隊の皆さんはその光景を呆然と見ています。誰も一言も発しません。先ほどボスに放った魔法ほどの迫力はないので、もう慣れてしまったのかもしれませんが、心を痛めて頑張っているのです。ちょっとは褒めてほしいですね・・・。


 再び呪文を唱えて空中に無数の水の玉を出現させると、こちらに向かって来ているイベントボスがレーザー砲を放ってきました。あんな距離から?もっと近くで撃てばいいのに、と思いましたが飛んでくるなら対処しなければいけません!


『水球!』


 百以上の水球がレーザーに次々と着弾していきます。10、20、30・・・限界のようですね?まだ半分以上の水球が残っていますがレーザーが薄くなり消えてしまいました。射程外ってやつでしょうか?


 残りが少なくなりましたが、水球と同じくらいの数の集団を見つけるとそこに向かって水球を放ちます。


 ドドドドドドド!!


 さて次ですが・・・あれ?水球の直撃を受けても倒れていない魔物がいますね?威力がたりませんでしたかね?あまり苦しめたくないのですが。


【リザードマン】魔物族:18歳:オス

 肉体総合力:12

 精神総合力:50


 あ!?


 あの時のトカゲ人(仮)の人ですね・・・。かなり大けがをしているようですがわたしを睨みつけて槍を投擲する構えをしています。


「すずめ様!お下がりを!あいつは危険です」


 隊長さんがわたしとトカゲ人(仮)の人の間に割って入ります。隊長さんもあの時の人だと気づいているようですね。


「いいえ、あの人はわたしと決着をつけたいのでしょう・・・」


 わたしはニンゲンで、あの人は魔物です。ゲームシステムでそう決まっている以上、決して相いれないのでしょうね。それでもわずかな交流でしたが、システムを越えた関係を築けた気がします。だって、わたしが魔物に心から感謝してるのですから。

 それでも、戦わなければならないのですね・・・。

 右手で槍を構えたトカゲ人(仮)の人は左手をすっと前にだすと、くいっと手首を返しました。


キシャッ(こいっ)!』


「なぜそんなに死にたがるのでしょうね。せっかく助かった命なら好きな人のためにでも使ってくれればいいのに」

「戦士の誇りでしょうね。わたしもすずめ様の護衛に失敗したら命を断つでしょう」


 遠くのトカゲ人(仮)の人を見つめながら隊長さんが呟きます。


「そ、そんなこと!・・・」

「わたしを死なせたくないなら死なないでください」


 隊長さんは笑顔でそんなことを言いました。後を追って死なれてもうれしくもなんともありません。生き残った人には死んだ人の分も生きて欲しいのに・・・。


 パオラさん・・・。


『すずめちゃんはわたしの分も生きてね!』


 はぁ・・・パオラさんならそう言いますよね。わたしも同じ意見です!


『大気に満ちたる 母なる 水よ すずめの 敵を 撃て 水球!』


 魔法操作が2になった時、水球の飛ぶスピードが速くなりました。そして3になった今は!

 トカゲ人(仮)の人がわたしの魔法と同時に放った槍は、水球とぶつかると同時に粉々に砕け散りました。そしてそのまま水球がトカゲ人(仮)の人に迫ります。

 トカゲ人(仮)の人は直立して目を閉じ、魔法の着弾を待っています。死なせませんよ!!


「曲がれ!!」


 直前に地面に向かって曲がった水球は地面を吹き飛ばし、トカゲ人(仮)の人も吹き飛ばしました。


「あ!・・・」


 曲げるのが遅すぎました・・・


【リザードマン】魔物族:18歳:オス

 肉体総合力:1

 精神総合力:7


 大丈夫です!ギリギリセーフ!死んでません!わたしは急いで隊長さんを振り返り、


「隊長さん!」

「・・・不憫なリザードマンですな。死ぬべき時に死なせてもらえないとは・・・」


 なぜかトカゲ人(仮)の人に同情をしています。男性のロマンか何か知りませんけど、死んだら終わりなのです!生きていればこそ幸せになれるのです!


「おねがいします!」

「・・・はぁ、分かりました。回収させますので援護をお願いします!」

「すぐに!!」


 そしてわたしの絨毯爆撃が始まりました。2頭の馬が西門から出撃するとトカゲ人(仮)の人を馬に担ぎ上げて南に向かいました。あっちにも門があるのですかね?


 これで憂いはなくなりました。決着をつけましょう!イベントボスさん!!

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