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30話:検索魔法!?一覧表示!

 冒険者の皆さんがギルドのテーブルの一つを大急ぎで掃除してロビーの真ん中に設置しました。

 椅子は二つ用意され、入り口側にマルティナさんが座りその後ろにムッカさんが立っています。そしてカウンター側、つまり上座に座っているのがわたしです。隊長さんとルシェラさんが後ろに控え、周囲をその他の警護隊の皆さんが囲みます。ディエゴさんたちその他の冒険者の方たちは外で待機するようですね。


「簡潔に申しますと、パオラの件で分かっていることは二つだけです。一つは本日早朝、西門の外でパオラの物と思われる折れた剣が発見されたこと。もう一つはパオラに最後に会ったのが、すずめ様だという事だけです」


 それだけ?・・・。わたしがパオラさんに最後に会ったのはドブ掃除を始めた初日の朝。・・・4日も前の事です。西門の外で発見されたパオラさんの剣。それが早朝に見つかったということは、4日前にパオラさんは町を出て、昨日の夜から朝にかけて町に戻って来たということですね。そして閉じられた門の外で何かトラブルに巻き込まれて・・・。


「それで、捜索とかはされたのでしょうか?」

「冒険者の行動は基本自己責任ですので、ギルドとしては捜索隊は出せませんが、リッカルドのチームが数時間前に西の森に捜索に向かいました」


 わたしも最初の依頼で行った西の森ですね。パオラさんからはあの辺りには魔物はいないと聞いていました。実際わたしも魔物はおろか大きな獣にも出会っていません。会ったのはトカゲ人(仮)の人くらいです。

 という事は、パオラさんの剣を折ったのは・・・


「すずめちゃ・・・様、実はパオラは借金を抱えてて、もしかしたらその・・・金銭トラブルの可能性もある、ます」


 ムッカさんが控えめに教えて下さいました。わざわざ様付けしなくてもいいんですけど・・・むしろ後で謝る案件が増えていきます・・・。

 もし借金がらみの問題だとすると4日前に高額報酬の依頼でも受けて森に向かったのでしょうか?もしそうなら。


「マルティナさん、パオラさんは何か依頼を受けたのでしょうか?例えば何か高額な報酬のお仕事とか?」

「いえ、パオラは何も依頼を受けずに外に出たようです」


 依頼は受けていない・・・。森に向かう何かの用事があるのなら、借金があるのですしついでに何か依頼を受けそうなものです。


「借金のあるパオラさんが依頼も受けずに町の外に出て、その後数日外に滞在。戻って来たのが昨夜か本日早朝。そして再び失踪ですか・・・なぜ、門の開かない時間帯に戻って来たのでしょうか?」

「なぜ?」

「えっと、わたしが森の中で一夜を過ごしたのは真っ暗で何も見えないからでした。翌日陽が昇ってから方角を確認して戻って来たのです。パオラさんは夜に門が閉まっていることは当然知っています。それなのにわざわざ真っ暗で危険な時間帯に森を抜けて戻ってくるなんて、まるで()()()()()()()きたような・・・」


 ざわざわざわ


 ん?急に外が騒がしくなりました。


「様子を見てこい」

「は!」


 隊長さんの指示が飛び、入り口前で待機していた警護隊のお一人が外に出ました。扉が空いた瞬間、微かに「緊急だ!」という声が聞こえてきました。あの声は・・・リッカルドさん!?


「隊長。一人の冒険者が緊急でギルドに報告することがあると申していますが」


 戻って来た警護隊の方がそう報告してくださいます。リッカルドさんはパオラさんの捜索に出たとマルティナさんが言っていました。何か手がかりをみつけたのでしょうか!?


「お嬢様」

「え?あ!わたしですか?通してください!」


 中に入った途端リッカルドさんが硬直してしまいました。


「こ、これは・・・一体何事なんですかい?・・・」

「説明は後です。緊急の報告をお願いします」

「マ、マルティナさん?・・・」


 わたしの声にリッカルドさんはきをつけの姿勢になり、顔だけをマルティナさんに向けました。


「構いません。報告をお願いします」

「そ、それじゃ・・・西の森にゴブリンの群れが現れた!数は5匹!殲滅はしたが森に入ってすぐの所だ!」

「なんですって!?」


 魔物が現れた・・・。()()()()()()()きたと思われるパオラさん、町の目と鼻の先に現れたゴブリンの群れ。

 パオラさんは依頼も受けずに外に出ました。何かお金になる情報でも手に入れたのかもしれません。ここ数日で大金の話となると・・・まさか・・・『ヨミガエリ草』!?そのパオラさんが逃げ帰って来た。そして現れた魔物。パオラさんは・・・門の前で魔物と戦っていた!?


「マルティナさん!そちらの対応をお願いします!わたしはパオラさんを探しに行きます!」





「危険です!お嬢様は町でお待ちください!」

「いいえ、パオラさんの顔を知っているのはわたしだけですし、パオラさんが危険な目にあっているのはわたしのせいかもしれないのです!!」


 隊長さんの制止の声も聞かず馬車の中で戦闘準備をします。と言っても帯どめを外し邪魔な袖をまとめただけですが。

 西の門と町側の門の間にある広場にはわたしの乗っている馬車と、隊長さんたちの馬が9頭(くつわ)を並べています。捜索に、救出に出るのはわたしたちだけです。

 わたしが『ヨミガエリ草』を持って帰らなかったら、パオラさんは今日も日常を過ごしていたのかもしれません。わたしのせいで・・・なんとしても助け出さないと!


「土地勘もない森の中で、魔物もいるというのに一人の冒険者を発見するなんて無茶です!」

「大丈夫です!わたしには奥の手があるのです!表示変更!一覧!」


 目の前にいる隊長さんをはじめ、警護隊全員の頭の上に名前と年齢などの情報が現れます。目に見えていない馬車の壁で遮られている人の情報さえ。

 一覧表示で見えるのは半径20mくらいの人の情報です。物陰に隠れていたとしても表示は見えるのです。例え深い森の中であっても。


「わたしを信じて下さい。カージナル・デル・ネイヤーさん・・・」

「なぜわたしの本名を!?・・・分かりました。全員騎乗!」


 あまりわたしの秘密を明かしたくはないのですが、信じてもらうには致し方ありません。


「これよりパオラ殿の捜索のために西の森に進発する!魔物の襲撃には十分注意しろ!最優先任務は当然お嬢様の護衛だ!」

「「「「「はっ!」」」」」


 いよいよ西の森に出発です。一覧表示でパオラさんを探し、いざという時はわたしの「魔法」で。


「つっ・・・」


 こんな時に下腹部が痛くなってきました。まだ3回目の生理ですが、明日と明後日はもっとひどくなります。なんとしても今日中に見つけ出さないと・・・。


 パオラさん、生きていてください!

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