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27話:帰って来たパッセロの町。

 もう少しでパッセロの町につく所まで戻ってきました。太陽は中天近くに差し掛かっておりそろそろお昼になります。

 窓から見える景色は一面畑、畑、畑です。作物を見る限りは元の世界と同じようで、広大な小麦畑やトウモロコシ畑も見えています。町に近づくほど多種多様の葉野菜の畑に変わってきましたが、なぜか田んぼは見当たりません。お米は作ってないのでしょうか?

 せっかく魔法を覚えたので色々使ってみたかったのですが、お腹がいたくなってそれどころではなくなりました。


「一旦落ち着いてたのに・・・」

「仕方ありません。数日は我慢するしかないですよ。これを飲んでください。少し痛みが和らぎます」


 プリステラさんが手渡してくれた丸薬を噛まないように注意して飲み込みます。何かの薬草が発酵したようなすっごい匂いです・・・。


 しばらくしてパッセロの町の東門に到着しました。昨日通ったはずですが暗くて何も見えなかったので、まともに見るのは初めてです。開け放たれた門の左右には門番さんが二人立っており、馬車に向かって敬礼をされました。馬車の外側に王族か何かを示す紋章でもついているのでしょうか?

 門をくぐるとちょっとした広間になっており、数台の馬車が荷物検査を受けています。当然のようにこの馬車は検査をされることもなく進み、その先にある正門をくぐって町に入りました。西門も同じような作りですが先日わたしが通った時は何の検査もありませんでした。かばん一つの身軽な恰好だったからですかね?

 正門を抜けて大通りを進んでいきます。まだこちらの世界に来てから日が浅いので、町の規模はいまいち分かりませんが、揃えたように2階建ての住宅が立ち並び、大通りに面した建物はどこも一階がお店になっています。わたしが借りている宿の近くはお店はまばらで平屋も多いので、町の東の方が発展してるみたいですね。町の中を流れている小川の橋を越えると中心街になっているようで、お店の規模も大きくなり3階建ての建物や広大な敷地のお屋敷も目に付くようになりました。


「ゆっくり見学がしたいですけど、今は早く横になりたいです・・・」

「お嬢様はどうかなされたのか?」


 真横を並走する馬に乗った隊長さんが心配して声をかけてくれます。病気というわけでもないので、心配されるとそれはそれで返答に困りますね。


「月の障りです」

「はっきり言わないでください!」

「ああ、そうですか・・・それは・・・なんとも・・・」


 ほらほらほらぁ!隊長さんも返事に困ってるじゃないですか!プリステラさんは結構まともな人だと思ったのに、この世界の人は男性も女性もデリカシーが足りませんよ!

 それから10数分馬車を走らせると見知った景色が目に入りました。


「あ、ここって昨日掃除した排水溝だ」


 どうやら3区に入ったようです。一旦トモエゴゼンさんのお屋敷に寄って、洗濯してもらっていたワンピースと上着を受け取ってから宿に帰りましょう。


「お嬢様が・・・排水溝のお掃除を?・・・」

「今更ですけど、わたしはお嬢様なんかじゃないですよ。ただの冒険者の山田すずめです」


 トモエゴゼンさんがどんな説明をしていたのか知りませんが、こんな綺麗な着物を着てお嬢様扱いされるのは悪い気はしませんでしたね。


「!・・・お嬢様は、御前の血縁者ではないのですか?」

「違いますよ。トモエゴゼンさんからの依頼を受けただけの、ただのFランク冒険者です」


 お屋敷に到着しました。服を受け取ってお礼を言うと歩いて帰ろうとしましたが、隊長さんが「家まで送り届けるよう仰せつかっていますので」とおっしゃって無理やり馬車に乗せられました。

 プリステラさんにもらったお薬のおかげか少し痛みは和らぎましたが、身体がだるく歩くのも億劫だったので大人しく送ってもらうことにします。でも、もう町中ですし、10名を越える警護は過剰すぎませんか?・・・。

 半分見世物になりながら町の中を進むと、見知った宿が見えてきました。


「あらやだ!ちょっとあんた!お貴族様の馬車よ!お出迎えして!」


 宿の前にとめた馬車の中までおかみさんの声が響いてきます。丸一日しか経っていないはずですが、なんだか懐かしい感じがします。


「お嬢様お手を」

「ありがとうございますプリステラさん」


 Fランク冒険者だと説明しましたが、プリステラさんは未だお嬢様扱いをしてくれます。着物では馬車から降りる段差が厳しいので手伝ってもらえると助かります。入り口に向かって歩くと中に向かって怒鳴っているおかみさんの前で止まります。


「あんた!早くしなさい!」

「ただいまですおかみさん」

「あ!こ、これはこれは、こんなさびれた宿にようこそお越しくださいました!」


 大きな身体のおかみさんが小さく縮こまって頭を下げてきます。


「ふふふ、おかみさん。わたしですよわたし。すずめです」

「えっ!?あらやだ!本当にすずめちゃん!?」


 ようやくわたしに気づいたおかみさんがバフっとわたしを抱きしめてくれました。


「心配したんだよ!夜になっても戻ってこないから!」

「ごめんなさい。色々事情がありまして」

「パオラに続いてすずめちゃんにも何かあったんじゃないかって心配で心配で・・・」


 えっ?・・・今何て言いました?抱きしめられたまま顔をあげます。


「パオラさんが、パオラさんに何かあったんですか!?」


 そう言えばわたしも3日前の朝に会ってから姿を見ていません。


「行方不明なんだよ。見つかったのは折れた剣だけで・・・」

「行方不明!?そ・・・そんな・・・」


 一体パオラさんに何があったんですか!?

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