24話:月の障り。
「よし!最低限の素材だけ回収したら出発するぞ!」
警護隊長さんの号令が聞こえます。どうやら魔物からは何らかの素材が取れるようで、素材回収の許可をわたしに求めてきました。なんでわたしに!?と思いましたが、この一行はわたしの護衛が任務なので、わたしの許可なしに任務外のことは出来ないそうです。
「そうなんですね。わたしもお世話になったことですから、どうぞ素材回収をなさってください」
そうです。大変お世話になりました。非常においしい魔物さんでした!おっといけません。お亡くなりになった魔物さんに手を合わせます。合掌。
魔物は人族や獣人族を見つけると見境なく襲ってくるそうです。殺すのはかわいそうですが倒さなければ他の誰かが犠牲になります。見逃してはいけないそうです。
わたしは魔物も動物も一緒くたに考えていましたが、似ているだけのまったくの別物とか。この世界はそういう所なのです。慣れないといけませんね。
とはいえ・・・。
「ステータスオープン!」
【山田すずめ】ニンゲン:12歳:メス
レベル14:スキルポイント90
次のレベルまで経験値316or熟練度316
(表示機能:簡易)
肉体総合力:14+
精神総合力:7+
魔法総合力:0+
魔法適正:水:土
習得魔法:なし
レベルが14になりました!スキルポイントなんて90もありますよ!どれに割り振るか迷いますね。やっぱり魔法を覚えたいですけど、宿に帰ってじっくり考えることにします。
トモエゴゼンさんは魔法総合力が高くて魔法適正も風をお持ちでした。おそらく魔法が使えるはずです。あ~あ、詳しくお話を聞いておけばよかったです。
ドクン・・・
あ、あれ?・・・急に下腹部が・・・あ!あああ!もしかして・・・!?
「表示機能変更!詳細!」
【山田すずめ】ニンゲン:12歳(40日):メス(月経周期1日目)
レベル14(熟練度4684):スキルポイント90
次のレベルまで経験値316or熟練度316
(表示機能:詳細)
肉体総合力:14+
力:22
体力:7
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(月経周期1日目)
やっぱり!!・・・ヤバイです!!・・・生理だ・・・。
どうしようどうしよう!お手洗いに!・・・あああ、こんな所にトイレがあるはずがありません!よりによってこんな時に!!せっかくの綺麗な着物が、これじゃ血だらけです!!
馬車の中でオロオロしていると外にいる警護隊長さんが扉を叩いて声をかけてきました。
「お嬢様、そろそろ出発します」
「え!?あ、えっと・・・」
「どうかしましたか?」
あああ、恥ずかしくて生理だなんて言えませんよ!!でも、動きだしたらおしまいです!とりあえずお手洗いだというしかないですね・・・それも恥ずかしいですけど・・・
「あ、あのぉ~・・・」
「どうしました?」
「その・・・お、お手洗いに・・・」
「オテアライ?手を洗いたいなら水を持ってこさせましょうか?」
「そ、そうじゃなくて!!」
お手洗いが通じません!この世界は中世ヨーロッパと江戸時代が組み合わさったようなゲームオリジナルな世界です。古い言い方しか通じないのかもしれません。お手洗いって昔の言い方でなんて言えばいいのでしょうか!?
あああ、こうしている間にもパンツはもう血だらけです!肌着に移るのも時間の問題・・・
「えええっとぉ!・・・おしっこ!!」
恥ずかしくて死にそうです・・・。馬車を降りて周りを見回して近くの茂みに小走りで向かいます。しゃがみこんでも完全に隠れられるほどの高さがありませんが、もう贅沢を言ってられる状況ではありません!着物を左右に開いて持ち上げ、肌襦袢に手を掛けたとこでちらっと馬車の方を見ると・・・全員こっちを向いています!!確かにわたしの護衛ですから目を離せないのはわかりますが、しばらく後ろを向いていてください!デリカシーってものがないんですかっ!!
そんなことを思っていると、あろうことか一人の警護隊の人が馬から背嚢を降ろしてこちらに向かって歩いてきます!顔の上半分を覆うヘルメットのような兜をかぶっていて、面貌で顔はよくわかりませんが浅黒い肌の若い男性のようです!ちょっと!それ以上こないでください!!
「お嬢様、どうかされましたか?」
あああ、女の人です!!髪が短いのでてっきり男性かと思いましたが女性でした!!安心してしまって目の端に涙がたまります。
「御不浄でしたらわたしに声をかけてください。どうしました?」
「あ、あああ、あのぉ~・・・」
着物の裾をまくったまま立ち尽くしていると、足を伝った血が足袋を赤く染めていきました。
「ああ、月の障りでしたか・・・それは恥ずかしくて中々言えませんよね」
女性の警護隊の方は苦笑いしながらわたしの前に立ってその他の警護隊の方から視線を遮ると、肌襦袢を左右にずらしその中の肌着も同じようにずらします。
「そのまましゃがんでください」
「は、はい」
しゃがんで茂みの中に顔を隠すと着物の裾を上に持ち上げ、「ここを持っていてください」とまとめた裾を手渡されました。
「自己紹介がまだでしたね。王室警護隊のプリステラと申します」
「えっと、山田すずめです・・・」
目の前で名乗られては聞こえなかった振りもできません・・・。もうトモエゴゼンさん、様が王族であることは間違いないですね・・・。
プリステラさんは背嚢からタオルを取り出すと、「水よ」と言いました。すると空中に小さな水の玉が現れました。
魔法です!
水の玉にタオルを触れさせて湿らせると、それで足についた血を拭いてくれます。
「下着と足袋はもうダメですね。ちょっと立ってください」
立ち上がって茂みから顔を出すと、馬車の方からこちらを見ている警護隊の面々と目が合います。恥ずか死ぬ・・・。
「わたしの肩に片手で掴まって片足をあげてください」
言うとおりにすると下着を一気にずり降ろされました。いくら同性とは言っても目の前で見られるのは恥ずかしすぎます・・・。
「わたしの下着ですがないよりましなのでがまんしてくださいね」
股の間に紙を当てられ背嚢から取り出したプリステラさんの下着を履いて挟み込みます。その後足袋も脱いで裸足で下駄を履きました。
「はい、もういいですよ。肌着から順番に直してください」
「あの!本当にありがとうございました!」
「お礼はまだ早いですよ。わたしの任務はお嬢様の護衛です。町に着いてからにしてください。でも、どういたしまして」
なんでしょう!とっても落ち着いた頼りがいのあるお姉さんで、パオラさんとはまた違った安心感のある人ですね!
【プリステラ】栗鼠族:24歳:メス
肉体総合力:32
精神総合力:39
魔法総合力:12
魔法適正:水




