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18話:トモエゴゼンさんって何者?

「お・風・呂です!!」


 ザパァ~ン!


 はぁ~生き返ったぁ!!お風呂です!こっちに来て初めての湯舟!サイコーですよぉ!

 髪を結い上げ頭にタオルを乗せます。まさかお仕事の報告に来てお風呂に入れるとは思っていませんでした!


 お話は少し前に戻ります。


 ずぶ濡れになったわたしは依頼のドブ掃除が完了したので、トモエゴゼンさんのお屋敷に報告にやってきました。こんな姿で訪問するのは失礼かと思いましたが、替えの服もなく洗って乾かしてたら明日になってしまうので仕方なくやってきました。


「こんにちわ~・・・」

「おや?こないだの嬢ちゃんじゃ・・・どうしたんだずぶ濡れになって!?」


 門番さんに挨拶したら驚かれました。とりあえず伝言だけでもお願いしましょう。


「ご依頼の件が完了したのですが、水路でこけてしまってこの通りです。あはは」

「ちょっと待ってろ」


 前回と同じように門番さんが中に入って行きました。直接報告しようにもずぶ濡れ状態で畳の上にあがるわけにはいきませんので、伝言していただければ助かります。しばらく待つと戻って来た門番さんが中に入るよう言いました。はえ?こんな状態でお会いするわけにはいかないんですけど・・・。そう思っていたら案内されたのはお風呂場でした。


「服は洗っておきますのでとりあえずお風呂で暖まってくださいな。替えの服はご用意いたしますので」

「い、いえ!そこまでして頂くわけには・・・」


 そう言って断ったのですが、女中さんはわたしの服をはぎ取るとお風呂場に放り込みました。


 カポーン


「ふおおおおおおお!!お・風・呂・だああああ!!」


 ここにきてまさかのお風呂!しかも檜風呂ですよ!とってもいい香りです!昨日わたしが購入したのとは比べ物にならないくらい上等な石鹸!肌に優しい絹のタオル!いや~至れり尽くせりですよ~!

 おっといけません・・・あまりの極楽ぶりに我を忘れていました。トモエゴゼンさんは作法にうるさい・・・もとい、作法を重んじる方ですからボロを出さないようにしなくては。

 お風呂から上がると3人の年配の女中さんがわたしを待ち構えていました。


「おやおや中々綺麗な肌だね~」

「磨きがいがあるわい!」

「さ~さっさと仕上げるよぉ~!」


 あ~れ~!オイルを体中に塗り込まれ、撫で廻され、あれよあれよと言ううちに化粧をされ、綺麗な着物を着せられてトモエゴゼンさんの前に座らされました。一体何事でしょうか?・・・


「ふん。馬子にも衣裳だね。報告を」

「あ、はい!ご依頼された3区画のドブ掃除を完了いたしました。スコップと長靴をお貸しいただきありがとうございました」


 頭を下げる際に膝の前で三つ指をつきました。お風呂で思い出したとこです。


「予定よりずいぶん早かったね。手を抜いてないだろうね?」

「それはこれからご確認ください。ずぶ濡れになって頑張りましたので」


 終わった後にこけたことは黙っておきます。


「ふん。まあいいさね。それで、いくら拾ったんだい?」

「え!?・・・」


 まずいです・・・やっぱり落とし物を懐に入れてはいけなかったのです。いくらか使ってしまったので返せと言われたら無一文ですよ・・・


「いくらだい?」

「銀貨1枚と・・・大銅貨1枚、それに銅貨7枚です・・・」

「置いておいたより多いね。本当に落としていた馬鹿もいたのかい」

「え!?」


 置いておいた?


「ちゃんと底まで掃除をしなければ見つからないからね。銀貨1枚と大銅貨1枚。それと銅貨3枚は用意していたボーナスだよ。4枚も落としていた馬鹿がいるとは思わなかったけどね」


 そういうことですか・・・中々意地が悪いですね・・・。


「それでは依頼料3日分をお願いいたします!」

「馬鹿正直だね~5日かけりゃ5日分もらえたのに」

「あのくらいのご依頼なら3日もあれば十分ですから!」


 そうでした・・・。あと二日待って報告すれば良かったです・・・。あああ、銅貨50枚も損しちゃいました。


 トモエゴゼンさんが手を叩くと、銀貨と銅貨を乗せたお盆を持った女中さんがやってきました。あれ?3日分だと銅貨75枚ですけど・・・。


「ほら、依頼料5日分持っていきな」

「・・・よろしいのでしょうか?」

「手早く掃除してくれたんだ。50枚は追加報酬だよ」

「えっと、その、ありがとうございます」


 ちょっとぶっきらぼうなお婆さんですけど、思ったよりいい人なのかもしれません!パイプをくわえてぷふぁ~と煙を吐きながらじろっとわたしを睨みました。心の声とか聞こえてませんよね?・・・


「代わりといっちゃあなんだけどね、一つ頼まれてくれないかね~」

「えっと、わたしにできることなら・・・」


 何を頼まれるのでしょうか?銅貨50枚分以上に厄介な事はイヤですよ!?


「なぁに、今夜ちょいと付き添ってほしいのさ」

「付き添い、ですか?」





「失礼お嬢さん。入場許可証を拝見できますか?」


 わたしは着物の懐から一枚の封筒を取り出して、中身の書状を広げます。黒服のSPのような男性が入り口を塞いでいて、一人一人身元を確認しています。


「ありがとうございます。トモエゴゼン様とそのお孫さんのアサヒナ様ですね。どうぞお通り下さい」

「どうも」


 わたしはペコリと頭を下げてトモエゴゼンさんと一緒に建物の地下に降りていきます。なんでしょう、このアンダーグラウンドな感じは!ワクワクします!まあ、そのものずばり地下に向かっているのですけど。


 銀杏返(いちょうがえ)しの着物姿。それに不釣り合いなサングラスをかけたトモエゴゼンさんが、杖を振り上げて向かう先を指し示します。まさかここに連れて来られるとは思いませんでした。


「ちょいと落札したい物があってね。あんたにはこのおいぼれの手伝いをしてもらいたいのさ」

「はあ?・・・」


 来られるとは思っていなかったオークション会場です・・・。

 よりによって孫役をやらされるとは思いませんでした。まあ年齢的にはぴったりなのかもしれませんけど。許可証に書かれていたアサヒナさんと言う、本当のお孫さんはどうされたのでしょうか?


 指定された席はテーブルを囲んだ半円のソファーです。これもかなり上等な物ですね。そういえばトモエゴゼンさんって何者なのでしょうか?お金持ちなのはわかりますけど・・・。


「それで、わたしは何をすればいいんですか?」

「なぁにわたしの指示で手を上げてくれればいいだけさね」


 あれですか!?オークションでカッコよく指を立てて落札するやつ!一度やってみたかったのです!


 俄然やる気が出てきましたよ!頑張って落札しましょう!何を落札したいのか知りませんけど。

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