16話:焼肉ストリップ定食!?
困りました・・・。目の前には洗って干し始めたワンピースとパンツがあります。着ているのは先ほど買った肌着と同じく下着だけ・・・
「お腹がすきました!!」
こんな恰好じゃ部屋から出ることもできません・・・。久しぶりに湯あみで身体を洗えてスッキリしたので、ついでにワンピースとパンツも洗ったのですが、ご飯の事を忘れていました。
思いっきり絞ってもう一度ワンピースを着ましょうか?
「ダメですね・・・白いワンピースじゃスケスケです・・・」
このまま朝までがまんするしかないでしょうか・・・。
「あっ!」
そうです!お隣はパオラさんのお部屋です!パオラさんにお願いすれば!
コンコン!
「パオラさん!パオラさんいませんか!?」
壁を叩いてみて耳を澄ませますがお返事がありません。どこかで飲んでいるんでしょうか?・・・こんな時にスマホがあればいいのですけど!パオラさんが持ってないので意味ないですね!
グゥ~~~~・・・
「はぁ・・・お腹空いた・・・」
最後の手段です・・・
キィ・・・
扉を少し開けて左右を見回します。誰もいませんね?ゆっくりと一歩一歩廊下に出ます。着ているのは薄い肌着と下着だけ・・・扉に指をかけたまま進みますが、もう一歩進めば扉から手が離れてしまいます。階段までもう少し・・・わたしの部屋は202号室です。階段の所から下にいるおかみさんに食事をお願いして部屋に戻る!それしか手はありません!それなのに隣には201号室があるのです!階段までが遥か遠くに感じます!お隣からは物音がしませんしきっと空き部屋だと思います。人が出てくることはないはずです!
ソロソロと物音を立てないように廊下を進みますが、下のロビー兼酒場からは楽しそうな談笑が聞こえてきます。
「男の人の声がしますね・・・」
両手で胸元を隠し足音を立てないように進むとようやく階段の端まできました。ゆっくりと膝まづいて四つん這いで下の様子を眺めます。一つのテーブルに3人の男性と1人の女性が食事を楽しんでいます。おかみさんは・・・どうやら厨房にいるようで姿が見えません。
どうしましょう!このままではミッション失敗です!なんとかおかみさんが出てきてくれればいいのですが・・・
それにしても・・・テーブルの上にあるお料理・・・おいしそうですね・・・よだれがでてきました・・・
「ん?・・・」
こちら側を向いていた男性が視線を上に向けました!わたしは慌てて顔を引っ込めます!
「なんだ?何かあったのか?」
「いや・・・何か動いたような気がしたんだが・・・飲み過ぎたかな?がっはっはっは!!」
あっぶなぁ~!危うく見つかる所でした。
グキュルゥ~~!
あああ、お腹の虫が盛大な悲鳴を上げています。こうして隠れていてもおいしそうな匂いが漂ってきます!
「お腹すきました~・・・」
「下に降りて食べればいいじゃないか?」
「そんなの無理ですよ!こんな姿を見られたら恥ずかしすぎて死んじゃいますよ!」
「まあ確かにちょっと恥ずかしい姿かな?」
・・・
・・・
イマワタシ・・・
ダレトカイワシマシタ?
ギギギっと油が切れた扉のような音を立てて後ろを振り返りました。四つん這い状態で、隠れるために顔を低くしていたため、まるでお尻を突き出すような恰好をして、着ているのは、薄い肌着と下着だけ・・・
「きゃあああああああああああああああ!!!!!!!」
そこには若い男性の姿がありました!用心していたのに一体どこからっ!?わたしは胸を隠しながらダッシュで部屋に戻ります!ノブを回して部屋に飛び込もうとして扉に顔面を打ち付けました!押し扉じゃなく引き扉でした!もう一度扉を引いて部屋に飛び込むと、鍵を閉めてベットに飛び込みました。シーツを頭からかぶって枕に顔を埋めます。
見られた!見られた!見られた!見られた!見られた!見られた!見られたあああぁっ!!!
もうダメです!恥ずかしすぎて生きていけません!!あああ、わたしはもう生きてないのでしたっけ!?
涙が溢れてきました。わたし、何やってるんだろう・・・。
・・・
グキュルゥ~・・・
しばらく泣いて落ち着いてきたのか、再びお腹が空いてきました。でも、この姿で廊下に出るなんてもう二度と出来ません!!こんな姿を見られるくらいなら餓死した方がましです!!
コンコン
ビックゥウウウ!!
ベットにうずくまったまま飛び上がってしまいました!我ながら器用なことが出来た物です・・・
「どちら様・・・ですか?」
もしかしたらパオラさんが戻ってきたのでしょうか!?もしくはムッカさん!?
「あ~。さっきは済まなかった」
わたしのあられもない姿を見た男の人!?
「な、なななななな!何の御用ですかっ!!」
あああ、こんな時まで敬語になる育ちの良さが恨めしいです・・・
「驚かすつもりはなかったんだが、謝ろうと思って」
驚かされた事が問題なんじゃないです!!裸を見られたことが問題なんですよ!!
「お詫びと言ってはなんだが、お腹空いてるんだろ?メシを持って来たから良かったら食べてくれ。扉の前に置いておくから」
ご飯くらいで!!そんなもので許されると思ってるんですかっ!?
「それじゃ」
・・・
コツコツとわざと足音を立てている感じで男性が遠ざかって行きました。そういえばこの階には205号室まであったのです・・・。一番奥の部屋を借りている人がいたのですね・・・。
心臓がバクバクと音を立てています。知らない男性に裸を見られるということが、こんなに怖いことだとは知りませんでした。以前ネットニュースで見た、とある記事を思い出しました。見知らぬ男性に胸を見られるくらいならAEDでの救助を拒否する女性もいるとか。この女性は何を言ってるんだと思いましたが、少しだけ気持ちがわかりました。
「はぁ・・・」
グキュルゥ!!
気持ちが分かったのは少しだけです。わたしは扉まで移動すると耳を当てて廊下の物音を確認してゆっくりと扉をあけました。そこにはまだ湯気が立ち上る焼肉定食と豚汁がありました!すばやく獲物を中に引き込み扉を閉めると、丸いちゃぶ台までジャンプしてそのまま正座をします。
「いただきます!」
もぐもぐもぐ、おいしいですぅっ!!!




