14話:おっぱいお化けとウサギさん。
「こんにちわ~」
「おお!チュンチュンじゃねえか!お疲れさん!お腹減ってねえか!?こっち来て食えよ!」
初めて会った時の対応から一変して、気さくなおじさんになったリッカルドさんが食事に誘ってくれます。リッカルドさんのテーブルには山盛りの食事とお酒の入ったコップが大量に置かれており、お仲間の二人のおじさんと一緒にすっかり出来上がっています。
「あはは、ありがとうございます~でもすみません、マルティナさんに用事があるので~」
「お疲れ様チュンチュン」
ギルドのカウンターに来るとマルティナさんまでチュンチュンと呼んできます。
「そのチュンチュンというのやめてくださいよ~恥ずかしい・・・」
「え~なんで?かわいいじゃない」
「もぅ~・・・」
とりあえず初日の依頼状況を報告して明日以降も頑張ることを伝えました。マルティナさんは力仕事だから心配していましたが、レベルが上がるのが楽しくて疲れも吹っ飛びます。
「あ、それとコレ」
「ん?この銅貨がどうかしたの?」
カウンターの上に大銅貨1枚と銅貨4枚を並べます。
「ドブ掃除している時に泥の中から見つけたんですけど、誰かの落とし物なのかなって」
「うわ!真面目だ!」
「落とし物を届けるのは当たり前じゃないですか?」
「どこの当たり前なのよ。拾ったお金は拾った人のものよ。ましてやドブの中から出てきたお金なんてチュンチュンの物にしていいに決まってるじゃない」
そう言えばここは冒険者ギルドであって警察ではありません。この世界に警察ってあるのかな?ないと結構怖い気もするんだけど・・・。
「そうなんですか、それじゃ・・・一応預かっておきます!」
貰っていいと言われましたけど、なんだか後ろめたいので預かることにします。
報告もおわりましたけど、パオラさんの姿がありませんし、ムッカさんも見当たりません。どこに行ったのでしょうか?
「チュンチュンちゃ~ん!暇だったらお姉さんたちに付き合ってよ~」
奥のテーブルから声をかけてくれたのは、初日にパオラさんやムッカさんと一緒にいた女性冒険者さんです。そういえば詳しく聞いていなかったですけど皆さんもチームを組んでいるのでしょうか?
「おい!最初に声をかけたのは俺たちだぞ!」
「うっさい!チュンチュンちゃんだってむさいおっさんたちより、私たちの方がいいに決まってんじゃない!」
「あら~リッカルドはわたしよりお子ちゃまのほ~がいいんだ~?」
リッカルドさんと女性お二人が言い争いを始めました。
「あ、あの・・・皆さん仲良く・・・」
喧嘩になりそうだったのでオロオロしていると急に後ろから抱きつかれました。
「うひゃい!?」
「チュンチュンめ~っけ。ひっく」
びっくりしました!お酒臭い息を吐きながら抱きついてきたのはムッカさんでした。どこか他で飲んでいたみたいです。
「お~ムッカおかえり~!こっちあいてるよ~」
「お~今いくぅ~チュンチュンもいこ~」
「あ、はい・・・」
結局ムッカさんに抱きつかれたまま女性二人のテーブルにやってきました。
「ちゃんと話するのは初めてだね~あたいは兎人族のファビーラ。そっちは麝香猫人族のララカ。よろしくね~」
「仲良くしましょ~ね~」
「はい!よろしくおねがいします!」
それにしても色んな種族の人がいるんですね。マルティナさんが羊さんでリッカルドさんが猫さん。パオラさんが熊さんでムッカさんが牛さんです。さらにウサギさんの耳を持ったファビーラさんと、でっかいおっぱいのジャコウネコさんのララカさんですか~。そういえば森であったトカゲさんもいましたね。あの人だけ爬虫類ですけど珍しい種族なんでしょうか?
普通なら覚えきれないけど、実は「一覧」表示で頭の上に情報が出てるので大丈夫なのです!
そしてムッカさんの年齢も見えてしまってびっくり・・・まさかお母さんよりもっと年上だったなんて・・・。
「はいはい、チュンチュンも一緒に飲もう!ほらほらぁ~」
人懐っこい性格のファビーラさんは、わたしの肩を抱き寄せながら目の前にお酒の入った木のコップを置きました。
「だ!ダメですよ!わたし未成年なんですから!」
「ミセイネン?何それ?」
「あれれ?・・・」
この世界には未成年って言葉がないようです。みなさんいつ頃からお酒を飲んでるのでしょうか?・・・。
「飲めるようになったら飲んでいいのに!はいジュース」
ファビーラさんがお酒の代わりに果実水の入ったコップを渡してくれました。
「ありがとうございます!」
「ん~いつから飲んでるんだっけぇ~?男とお酒とどっちが先だったかしら~?」
ブフッ!
のんびりした口調のララカさんがとんでもないことを言い出しました。胸元からおっぱいがはみ出そうなお色気たっぷりの女性ですけど、やっぱりそう言う人なんでしょうか?・・・
「ちょっとララカ~。チュンチュンにはまだ早いんだからそう言う話はしないでよ~」
「純粋なチュンチュンを汚すなおっぱいお化けめ!」
「あ痛!」
ファビーラさんに抱き寄せられ、ムッカさんがララカさんのおっぱいを手の平でたたきました。ちらっと横目で見てみると、他のテーブルのおじさんたちが胸をさすっているララカさんに釘付けになっています。やっぱり男の人って大っきな胸の女性が好きなんでしょうか?
「ところで、みなさんは同じチームの冒険者さんなんですか?」
変な空気になってきたので話を変えます。実際気になっていたのでちょうどいいですね。
「んん~ちがうよぉ~」
「あたいとララカは同じチームだけどね~」
「あたしは弟の「テング」に所属してるぅ~」
仲がいいので一緒かと思ったら違ったんですね。ファビーラさんとララカさんは同じチームと。
「それじゃパオラさんは?」
「あの子は今は一人かな~前にいたチームでちょっともめちゃってね~」
「そうなんですか?・・・」
それじゃ今はどこで何をしてるんでしょうか?
【女】
「はぁはぁ・・・やっとみつけたわ。これがパルーデポイズンスネークが生息している沼ね」
わたしは何も悪いことはしてないわ。すずめちゃんには何も聞いてないし戒厳令も破ってない。
偶然ここを見つけただけよ!
「早く見つけて戻らないと、もうすぐ陽が沈んでしまうわ!」
薄暗くなってきた森の中であの白い花を探す。
「近くにあるはずよヨミガエリ草は!」
べっ甲で出来た蝶の形のバレッタが、わずかな光を反射してキラリと輝いた。。




