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01話:ネットゲーム初心者です!

「やっとわたしの分身が出来たわ」


 2年前の10歳の誕生日に両親から買ってもらったスマホで、ネットゲームを始めてみました。スマホを買ってもらってからは、ネットで興味のあることを検索するだけでゲームをする気はなかったのですが、偶然目にしたネットゲームのCMが気になりました。


「”未知の世界を駆けまわろう!”か・・・」


 物心ついた頃からわたしの世界はこの病院のベットの上だけです。4歳の頃に世界でも例のない珍しい病気になり、ずっとこの病院で暮らしています。お気に入りのネコの肉球柄の寝巻のすそからは、脈拍や体温などを測定するためのコードが伸びていてわたしの行動を制限しています。まあ、制限されるまでもなくベットで横になるか上半身を起こすかだけで、ベットから自力で降りることもできないのですけど。


 10歳までの毎日は一日中窓の外を見ているか、髪型をいじるか、夕方の時代劇の再放送を見るだけでした。何年も見ている景色は代わり映えもせず、髪型のレパートリーは30種ほどになり、ハンドメイドで作ったヘア留めは100個を超えました。週末以外は見せる相手もいませんけど。

 お父さんとお母さんはわたしの治療費を稼ぐために毎日忙しく働いているので、会うことが出来るのは週末だけです。少し寂しいですがわたしのために頑張ってくれているのでわがままは言えません。


 そんなわたしの夢は野原を自らの足で駆けまわる事です。碌に動かない足では叶わぬ夢なのは分かっています。スマホでわたしの病気の事を調べても何も分かりません。それでも、もし歩けるようになったらと、野原の草花のことを調べたり、ピクニックに持っていけるお菓子の作り方を勉強したりして2年が経過しました。


「今年で12歳か。学校に通って見たかったな」


 足を撫でてみますが触った感覚もなく、歩くことが出来ないのは諦めています。それならせめてゲームの中だけでも、とCMで紹介していたネットゲームを始めてみたのです。


 ゲームをするのは産まれて初めてでちょっと緊張しましたが、未知の体験に胸がドキドキしてきます。ゲームを立ち上げると真っ暗な画面に文字が浮かんできました。


 ”何をするのも自由。あなたの好きなことが出来る世界です。”


 わたしの好きなことが・・・。文字を凝視していると突然スマホから声が聞こえてきました。


『まずは、あなたの性別を教えてね』

「わ!びっくりした。文字を打つところがないけど、音声でいいのかな?えっと、初めまして山田すずめ12歳の女の子です」

『あなたのお名前を教えてね』

「あはは、ここで名前を言うのね。山田すずめだよ」


 それから体型や髪の色、目の色などを細かく聞いてきました。ゲームだから現実のわたしとは違っていいんだよね?わたしの分身だし、思いっきりかわいくしたいなぁ。


『髪型を選んでね』

「あ、この髪型かわいい!これにしよっかな?8番でお願いします。・・・あれ?選べない?」

 ”課金してください”


 ここまでは音声でしたが初めて文字が出てきました。よく意味はわかりませんが「お金」の文字がありますし、買わないといけないようです・・・。わたしの治療費にお金がかかっていますし、両親にねだるわけにはいきません。なんとか無料で選べる髪型を選んでっと。目は・・・かわいい目はどれもお金がかかるようです。ゲームが無料で出来るのでおかしいとは思ってましたが、こういう所でお金がかかるのね・・・。なんとか無料でできる組み合わせで可愛くする方法を探しましょう。


 結局、この子を作るのに丸一日もかかってしまいました。いよいよゲームを始めようとするとドアをノックする音が聞こえ、看護師のお姉さんが部屋に入ってきました。あれ?ナースコール押しちゃったのかな?


「すずめちゃん?まだ起きてるの?もう消灯の時間だよ」

「はぁい」


 いつの間にか寝る時間になっていました。ゲームに集中しすぎて昼食と夕食を食べたのかも覚えてないくらいです。ようやくゲームが始められると思ったのに残念ですが仕方ありません。また明日遊ぶことにしましょう。ゲームを終了するとスマホの画面の真ん中にゲームのショートカットを移動しました。その絵柄はついさっき作ったわたしの分身の「すずめちゃん」です。無料で選べる選択肢から作り上げた最高にかわいい子です。


「ふふふ、明日からよろしくね」


 ゲームは逃げないのですから焦ることはないですね。わたしはスマホを胸に抱きしめ、明日からの冒険を夢見て眠りにつくのでした。



 その夜、わたしの容態が急変しました。



「急いで!緊急手術の準備!!」

「親御さんに連絡を!」


 はぁはぁ、呼吸が苦しいです。一体どうしたのでしょうか?口元には酸素吸入器が当てられ、ベットがガラガラと音を立てて廊下を移動しています。


「わたしの・・・スマホ・・・」


 腕を動かすとシーツの中にスマホの感触があります。何でこんな所に?ああ、そう言えばスマホを抱いたまま寝たのを思い出します。意識が朦朧とする中、指が無意識にスマホを起動させ、画面の真ん中に配置したネトゲのショートカットをクリックします。


「早く・・・続きが・・・したいな・・・」


 スマホの画面にはゲームのショートカットやその他のアプリの表示はなく、不思議な文章が表示されていました。意識をなくしてしまったわたしには永遠にそれを見ることが出来なくなりましたが、ネトゲのショートカットだと思ってクリックした所には、こう書かれていたのです。


 ”テストプレイヤーに招待されました。受諾しますか?イエスorノー”


 そしてわたしの指は『イエス』をクリックしたのです。


 これが12歳という短い人生最後の出来事でした。





 そしてわたしは目覚めたのです。


「ここ・・・は?・・・」

「あら?かわいいお客様ね。冒険者ギルドにようこそ。何か御用かしら?」

女の子の種、奴隷商を読んで下さった方へ。

連載が止まってしまい申し訳ありません。最後までのプロットは出来ているのですが、どうしても納得する話が書けず、気分転換に書いたこの作品が100話を越えてしまったのでアップすることにしました。上記2作品は作者の力不足で進まないため、力を付けてから再開する予定です。気長に待っていただけると助かります。

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