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わたしと憧れのお姉ちゃん  作者: 小林弘二
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1.姉妹の小学時代 前編

本作は本編である「log ~八方美人で優柔不断の俺がダラダラとチャットしてたらトンデモないことになった話~」の番外編です。

番外編前作である「東は樺菜を見守りたい」はネタバレ満載だったのに対して、本作は大したネタバレはないのですが、出来れば本編を読んでいただけたら幸いです。

 わたしの名前は霜川小百合。今年女子校へ入学した十六歳である。

 情話や痴話、時には猥談で花を咲かせ、毎日楽しく過ごすことをモットーにしているわたしには二つ離れたお姉ちゃんがいる。わたしと違って頭が良く運動もできて音楽の才能もある、尊敬できる自慢のお姉ちゃんなのだが、わたしたちの間には幾つか問題点がある。


 その幾つかある問題点の一つが名前だ。

 わたしの名前が「小百合」に対してお姉ちゃんの名前が「百合」なのである。これについてはわたしはどうとも思ってないが、両親のネーミングセンスの乏しさには頭を抱えるものがある。


 残る問題点は後に語るとして、読者の皆様にはカッコ良く尊敬するお姉ちゃんに対して、運動も勉強も大したことのないわたしがいかにスレずに素直な不良娘になったか、そこのところを知っていただきたい。


 では、わたしとお姉ちゃんの間にある幾つかの問題点の一つであるのだが、ここまで読んで分かる通り、文武両道、才色兼備なお姉ちゃんに対して、わたしは対照的な浅学非才であるということだ。


 ここからしばらく、どれだけお姉ちゃんが凄い人なのか、いかにわたしが劣っているのか語っていこうと思うので聞いていただきたい。



 わたしがまだお姉ちゃんのマネごとをしていた、可愛らしい小学生の時の話である。


 お姉ちゃんはとにかく凄い。

 勉強では苦手なものもなく、授業でテストをすれば大抵百点を叩き出している。テスト用紙を返却される際に、先生が「おめでとう、百点だ」とわざわざ告げるものだから、クラスのみんなに「凄い」と褒めそやされる始末。それがどうも嫌だったらしく、たまにわざと回答を間違えることまでしたらしい。


 そんな頭の良いお姉ちゃんに憧れてわたしも勉強をするけど、元々飽きっぽい性格のわたしは当然長続きはせず、テストではお姉ちゃんには程遠い点数しか取れなかった。


 そんなお姉ちゃんとは対象的なわたしに、両親は「もっと勉強をしろ」とは言わず、「思いのままに学びなさい」と言ってくれた。今のわたしなら「わたしには期待してないのかな」と思うところだけど、小学校低学年当時のわたしには「このままでいいんだ」というお花畑全開のお馬鹿な解釈をしたのである。


 この「このままでもいいんだ」という考え方をずるずると引きずって、今尚わたしの成績は中の上という、可もなく不可もなくと言った成績が付きまとっているのである。ただ言わせてほしい。中の下ではなく、中の上というのがわたしの意地である事を、読者の皆様には分かっていただきたい。


 そもそも、わたしとお姉ちゃんの勉強に対する向き合い方が違うのだと思う。


 夏休みの宿題を例えに説明すると、お姉ちゃんの場合は夏休みの最初に終わらせてしまうだけでなく、過去のテスト用紙を持ち出して模擬テストをする始末。


 ある程度やって満足すれば、家に転がっている様々な楽器をオモチャにして遊んでいる。ただ、これも遊ぶという域でなく学びの域で、きっとお姉ちゃんは「遊ぶ」という行為がどんなものなのか分からないのだと思う。冗談抜きでわたしはそう思っている。


 一方のわたしは能天気に夏休みを満喫していて、友達とプールに公園にゲーセンにと思いのままに遊び尽くし、夏休み後半になってから慌てて宿題に手を付け、結果的に間に合わないという、お手本のようなていたらくぶりである。


 このことから分かる通り、お姉ちゃんの勉強に対する向き合い方が「修学」なのに対して、わたしは「消化」なのである。


 これがわたしとお姉ちゃんの違いなんだろうと、今になって思う。



 お姉ちゃんが勉強ができるというのは、これ以上語る必要はないと思うので、次は運動についてをお話ししようと思う。


 お姉ちゃんの運動神経は男子顔負けだ。


 男子顔負けというレベルではなく、男子をぶっちぎっているのだ。


 かけっこをやらせれば勝てる相手はなく、生徒だけでなく教師たちですら敵わないレベルの走りを見せる。


 小学校のマラソン大会で六年生は三キロを走るのだけれど、それを十一分切る記録を叩き出した。これは女子ではぶっちぎりで、男子でも速い人で十二分台前半を出れば良い方なのだ。このことから分かるように、お姉ちゃんの記録は飛び抜けて凄いことで、この記録は学校創立以来の前代未聞の記録だったのである。


 ただ、お姉ちゃんに言わせれば、「三キロなんて走ったうちに入らない」だそうである。そりゃそうだ。毎朝一時間のランニングをしているのだから、十一分三キロの距離は短すぎるのだ。他人がそれを聞けば、きっと凄すぎて呆れるだろうけど、わたしにはそれがカッコよく見えるのだから、わたしもどうかしていると思う。


 脚力、持久力に続いて、瞬発力ではどうだろうか。

 小学生の体育の授業でドッチボールをやることがある。ボールを勢いよくぶつけ合う、あの殺伐とした競技だ。


 これに関しては微妙といったところ。


 ボールの動きに反応し上手にボールを避け、最後までコートに残るのだが、自分に向かって投げつけるボールが取れないのである。手が小さいから、腕が短いから、背が小さいから、という枠に当てはまらない以上、反応ができてタイミングも合っているのにボールが取れないのは謎である。


 そんなお姉ちゃんが苦肉の策で編み出したのが、向かってくるボールをバレーのようにレシーブで受けて上空へ浮かせてから取るというものである。当たったボールをノーバウンドで取った場合は、その当たった選手はセーフというルールを最大限に活用したのである。


 そっちの方が難しいんじゃないかと思うのだが、器用にボールを浮かせて仲間にキャッチさせている。


 仲間にキャッチさせている時点で分かる通り、最後に残ってしまうと、上手いこと自分の真上にレシーブしてキャッチすることは難しく、結局討ち取られてしまうのである。


「ドッチボールって苦手なのよね」


 そう言ってため息を漏らすお姉ちゃんではあるが、瞬発力に関しては十分凄いと思う。


 ただお姉ちゃんはこのプレイスタイルを続けていたら、レシーブの姿勢でコートに立ち、自分に当たることのないボールにまで手を出すようになった。それもうまいことボールを宙へ浮かせてキャッチしている。


 それを見た先生は「それじゃあドッジボールじゃないな」と言われハッと気づく辺り、お姉ちゃんの中ではドッチボールでもバレーでもない、何か別の競技をしていたのだろう。お姉ちゃんはそんなちょっと天然が入っているフシもある。


 脚力、持久力、瞬発力は負けなしだけど、腕力に関しては女の子、腕相撲は人並みなので、そこはわたしも安心した。だって、腕力まで男顔負けだったら、もう化け物だよ。尊敬どころか「ああはなりたくないな」と思ってしまう。


 お姉ちゃんの運動神経がどれだけ良いか分かったところで、わたしはどうかというと、これが意外といいところまでいくのである。


 わたしは頭の方はよろしくないけど、その分運動に関しては人並み以上によろしいのである。小学校の通知表では体育のどの項目も、「よくできる」「できる」「もうすこし」の三段階評価の「よくできる」なのだ。


 ちなみに体育以外だと「できる」若しくは「もうすこし」という評価が多いんですけどね。

 ただ、この「よくできる」という評価は、あくまでも一般女子に対してという評価で、学年女子の中ではトップの方にいても、遙か高みにいるお姉ちゃんには程遠い評価なのである。


 それでも、当時のわたしは二学年上にいるお姉ちゃんの記録を見て、わたしも頑張れば二年後にお姉ちゃんのようになれるんだ、と信じていたようで運動を続けていた。


 いざその二年後になって結果を見てみれば、お姉ちゃんの記録には到底及ばす、「お姉ちゃんに追いつくのは無理なんじゃないのかな」と自分を疑い始めたのが、小学六年の年だった。


 本格的に疑い、諦めたのはその翌年の中学一年の時。お姉ちゃんと同じ陸上部に入ったけど、その時お姉ちゃんは中学三年。その三年の時の全国大会で、お姉ちゃんは一〇〇メートルを十二秒切る大記録を出したのを見て、「これは敵わない」と理解し、陸上部から足が遠のいた。


 ただ、お姉ちゃんのようになるんだと信じて疑わず、それなりに頑張ってきたわたしはここでスレることはなく、今でもお姉ちゃんを尊敬している。


1ページの文章量を何文字にするか結構悩んでいるんですけど、少なすぎますかね。これで3500文字、文庫本では7ページ分に値するんですけど、少なすぎる?


今回は1ページの文字数が少ないので、月曜日と木曜日の週2回の投稿になります。

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