7話 廻沢高嶺、再び召喚を行う
ファッションショーから数日後
「無事『石』の方が確保できました。明後日お届けしますので高嶺先生。召喚の準備をお願いしますね」
そう明穂から連絡があり高嶺の二度目の召喚士としての仕事が行えることとなった。
高嶺は召喚に使う蔵の中の片付けを行う。
蔵は築百年くらいはありそうな古い蔵で中は元々殻であった。広さ的にも窓が少なく外から覗かれにくいという点でも最良の物件であった。
連絡をもらってから高嶺は召喚に必要な準備を始める。魔法陣は使いまわしが効かないので全部消してもう一度描き直さなければならない。
より成功率と精度を上げるために魔法陣の形の構築を行うのが常であり召喚士の個性と努力が出る部分であった。
これは十分な準備期間があったのでしっかりと用意をしている。
後は魔法陣を描き、召喚に臨むだけであった。
明穂が『石』を持ってくる日も決まり
高嶺はフォーナが寝てから蔵で魔法陣の下書きを行い当日に備える。
そして当日、
高嶺はフォーナの前にしゃがみ
「フォーナ、今日は真鍋さんちでおとなしくしていてもらえるかい?」
やさしくそういって頭を撫でる。
フォーナは最初、「?」を飛ばしていたが首を振って高嶺にしがみ付く。
珍しいことだった。高嶺の言うことはちゃんと聞いていたのに今日に限ってフォーナは高嶺からはなれようとしなかった。
「フォーナちゃん。今日は大事な用があるの。おとなしく真鍋さんの所に行こう?」
明穂がそう声をかけても頑なに首を振り高嶺から離れようとしなかった。
高嶺も明穂も困った顔で顔を見合わせる。
「いいではないかね?たかだか召喚するだけの間だ。僕が抱きかかえとけばよいだけの話であろう?」
芝野が両の手をワキワキしながら怖い笑顔で近づいてくる。
明穂が汚物を見るような眼で
「却下」
静かに言い渡し、フォーナも芝野のニヤケ顔が気持ち悪かったのか高嶺の影に隠れてしがみつく。どちらにせよ、頑なに嫌がるフォーナをどうすることもできず
「じゃあ一緒に中にいていいけど私とおとなしく見てるんだよ?」
明穂がそう言ってフォーナに手を出す。
フォーナの顔がぱぁっと明るくなりコクリと頷くと明穂に駆け寄って彼女に抱きついた。
「うほほほぉぉぉぉぉぉおおお」
そんなフォーナの仕草に目からハートマークを飛ばしながら喜びぎゅっと抱きしめる明穂。
その光景を見ながら芝野は
「…あれと僕とどう違うのかおしえてくれないかね?」
そう静かに抗議の言葉を発した。
時間も惜しいので早速皆で蔵に入り、召喚の儀式を行うことにした。
明穂はフォーナを抱き上げて邪魔にならないように壁際で待機し、芝野はこの間と同じ位置で椅子にドカリと座っていた。
高嶺はこの間と同じ位置に立ち明穂から受け取った『石』を右手に持ち握り込む。
そして深呼吸をしてゆっくり目を閉じ精神を集中する。
しばらく静寂が流れて、意を決したように高嶺は目を開き明穂を見て
「では契約召喚を行いたいと思います。立ち合いをよろしくお願いします。松野監査官」
フォーナをグッと抱きしめてコクリと頷き
「わかりました。高嶺先生、今回はうまくいきますよう」
そう言って頷く明穂。よくわかってないであろうフォーナも力強く頷く。
それを見て少し和んだ高嶺は気を引き締めて集中する。
高嶺はゆっくり右手を前に上げる。そして目を瞑り誰にも聞き取れない囁きを始める。
この前回の召喚と同じように。
静かな空間に緊張感がみなぎってくる。
明穂は高嶺から目を離さず状況を見ている。
そしてふと気づく。高嶺の囁きに合わせるように微かに聞こえる吐息。
自分の真横の顔から静かに唇を動かす少女の顔。
明穂は驚き、抱いていたフォミュナルアを見る。
彼女はまっすぐ高嶺を見つめたまま目を見開き聞こえるはずのないささやきを復唱しているかのようだった。
そして高嶺を見つめる濃紺の瞳が徐々に光を帯びて綺麗な青へと転じていく。
明穂は正直焦った。これは止めた方がいいのか?だが儀式は始まってしまっている。今、高嶺の集中を乱すのさすがにまずい。
すでに魔法陣の周りには光が集まり始め、ゆっくりと停滞していた空気が動き始めている。
どうすることもできず明穂は少し混乱する。
そんな明穂の混乱の中、フォミュナルアと高嶺の同調が高まったかのように魔法陣は光輝き風を巻き起こしている。すでに明穂は目を開けていることができない状態であった。しまった、サングラス…などと考えたがフォミュナルアが反応していたことからの現実逃避であった。
そしてバゴォォォンという音が鳴り響き一瞬光が集まり「SR」の文字を刻みガラスのように砕け散る。
風もまるで散らされたかのように緩やかになり
光がまるで粉雪のように舞う。
魔法陣の中心には人影。
高嶺はゆっくりと目を開ける。
魔法陣の真ん中に黄褐色の腰まである長い髪が目に入る。
頭の上には耳がありピンと伸びた先が折れ曲がっている。そう犬の耳だと高嶺は思った。
身長は高嶺より少し低い。後ろから見ても分かるくらい女性を強調したボディラインだった。
女性の獣人は微動だにしない。
その時、真っ先に動いたのはフォミュナルアだった。
フォーナはスルリと明穂の手から離れると素早く女性に駆け寄り抱きついた。
ちょっといろいろあって自分の見識の甘さとネットの恐ろしさに打ち震えております。
はぁ・・・馬鹿したなー。
まぁとりあえず更新はします。ただあまり更新して喜べる状態でもないんですが・・・。
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