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6話 松野明穂、お着替えで萌え悶える

「…‥かね」



「たぁ~かぁ~ねぇ~~」


「たぁ~かぁ~~ねぇ~~~、おーきーるぅ~~」


 高嶺の意識の中にフォーナの声が聞こえてくる。

小さな手でゆさゆさと揺らしているのが分かったが高嶺の身体と意識のつながりはまだ上手く行ってない。

やっと手を伸ばせして寝ている高嶺の上に覆いかぶさるように一生懸命揺すっているフォーナの頭の上に手を置きポンポンと起きたという合図を送る。

朝の苦手な高嶺を起こすのがフォーナの日の始まりだった。


 高嶺はのそりと起き出してフォーナと共に顔を洗う。

台所に行きお味噌汁だけ用意して昨日の残りとご飯で朝食を済ませて午前中は野良仕事をするのが日課だった。

フォーナは獣人らしく何事にも積極的にお手伝いを好み、幼女とは思えぬ働きぶりで仕事をこなした。獣人が重宝されるのは従順で勤勉であるのが一番の理由だった。

 感情に乏しいのも特徴なのだがフォーナは実に感情豊かであった。

ご飯を食べてる時も美味しそうに食べるし、あまり好きでない時は尻尾も耳も垂れ下がる。

その表情の豊かさに明穂がものすごく驚いていた。

その明穂といえば何かにかこつけてフォーナに会いに週一で現れる。


 その日も午前中の畑仕事から戻ると明穂が待っていた。

彼女は玄関先でノートパソコンを開き自分の仕事をやりながら高嶺達の帰ってくるのを待っていた。


「明穂さん、別に気にせず居間で待っててくれていいんですよ?」


 高嶺が第一声にそう声をかけると


「あ、お疲れ様です。いいえ、さすがにそこまでは。玄関まででもだいぶん図々しいことしてるなとは思ってるんですよ」


 明穂はそう言ってパソコンを閉じる。そして高嶺の後ろで隠れているフォーナに声をかける。


「フォーナちゃん、こんにちは」


 そう声をかけられたフォーナはひょこりと顔を出し明穂を見ると満面の笑みを浮かべてまた高嶺の後ろに隠れた。

最初にこれをするのがフォーナの最近のお気に入りだ。


「うほぉぉぉぉぉぉおお」


 そしてこの叫び声である。

明穂は目をハートにしながら玄関でゴロゴロと転がった。

とりあえず高嶺は転がる明穂をスルーして玄関を上がる。その後ろを普通にフォーナもちょこちょことついて行き明穂のみがおいてけぼりにされる。

ある程度悶えると明穂も少し照れながら居間に入ってくる。

高嶺は麦茶を台所しか持ってきて


「明穂さん、お昼まだですよね?一緒に食べてってください。準備しますので。フォーナ、その間明穂さんに遊んでもらってなさい」


 高嶺がそう言うと明穂は目を輝かせて


「ファーナちゃん、今日も似合いそうな服をもってきたのよぉぉ」


明穂はいそいそと持ってきた荷物を玄関から引っ張ってくる。

まさに引っ張ってくるのレベルであった。

さすがの高嶺も唖然とした。いや、玄関通ってきたのにまったく荷物に気づかなかったのだ。

鼻息荒く荷物を開封してごそごそと中を漁り始めて


「まずはこれっ!!水夫さん風の一品。ほらフォーナちゃんこっちへ」


 目がらんらんと輝く明穂だった。前なら走って逃げそうなフォーナだったが最近は興味深々で明穂に近づいていく。尻尾も耳も興味でピンと立っている。

 最初のうちは明穂の着せ替えを嫌がっていたのだが最近は意外にも本人も楽しんでおり、これも明穂の情熱の賜物であろう。

フォーナが好みは動きやすい恰好が好きなようだ。

薄手で軽く邪魔にならないのを好んでるのを理解した明穂は彼女の好みそうな短パンやラフな格好で最初は気を引いた。

やはり女の子なのだろう。そのうちだんだんとフォーナも楽しくなってくるのかどんな服でも着てみるようになってきて、この間はゴスロリの恰好をして芝野と明穂をノックダウンしていた。白銀の髪に赤のリボン黒いロリィタドレスが凶悪に似合っていた。


 高嶺は邪魔にならないように台所に移動して昼食の準備を始める。

食材を選び下ごしらえをしていると居間から


「おっほぉぉぉぉぉっっぉぉぉぉおお」


 また奇声が上がる。お着替えが完了したようだ。

パタパタとフォーナが走ってきて高嶺に抱き着く。

高嶺は包丁を置きフォーナを見る。


 上は水兵の白いセーラー服、首元とネクタイは青、下は短パン、ベレー帽でアレンジされた帽子がまた似合っている。わざわざくるぶしまでのソックスまで履かせてるのはさすがだった。

尻尾をパタパタさせながら褒めてほしそうに高嶺を見上げている。

高嶺はニッコリ微笑み


「フォーナ、とてもかわいい水兵さんだよ。似合っている」


そう言うと少し頬を赤らめながらニッコリ笑って恥ずかしそうに明穂の元にダッシュで帰っていった。そんなファッションショーが何度か続き

ボーイッシュなオーバーオール。

かわいい今時のミニスカートにTシャツにジージャンのオシャレファッション。

ふわっとしたピンクのワンピース。

どこから手に入れたのか袖なしのチャイナ服とズボン。

最後はなぜかピンクのナース服。なぜかミニスカートでニーソックスを履かせるという変態ぶり。


「・・・・どこでこんなの手に入れたんですか?」


さすがに呆れて聞く高嶺。

居間であおむけにノックダウンされてる明穂は


「フッ・・・蛇の道は蛇というじゃない。出どころは聞かないで・・・」


 蕩けた顔で答える明穂。

フォーナを見ると褒められたそうに尻尾を振りながらこっちをみている。

高嶺はニッコリ笑って


「その服装もカワイイよ。さ、ご飯ができたから居間を片付けてくれるかな?」


そういって頭を撫でてやると

くすぐったさと照れではにかみながら頷き走って居間の片付けに行く。

料理を持って居間に行くと起き上がったが至上の笑みで顔が戻らない明穂といつの間に現れたのか鼻にティッシュを詰めた芝野が座っていた。


「・・・なんでティッシュなんですかね?芝野くん?」


やや、不機嫌に尋ねる高穂。


「ふっ。気にするな。だがあのナース服は犯罪だろ。明穂くん。僕は君を誤解していたようだ」


そういう芝野に


「下品な眼でみないでくれるかしら。あれは至宝よ。あなたみたいな下衆が見ていいお姿ではないわっ!!」


どうも二人の脳はやられているようだ。

高嶺は大きくため息をつき


「さっ、馬鹿な事言ってないでお昼にしましょう!!」


そう言って今日の昼食をちゃぶ台の上に並べ始めた。

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