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12話 廻沢高嶺、フォミュナルアを捜索する

「え?フォーナが帰ってこない?シュノと一緒にいたのじゃないのかい?」


 台所で晩御飯の準備をしていた高嶺の元に動揺を隠せないシュノが、フォーナが見当たらないと慌てて報告をしてきた。

台所に高嶺、居間には書類仕事をしていた明穂がいる。

おやつを食べた後、フォーナは高嶺とシュノと共に畑に行き草引きを短時間行った後、屋外の掃除をするというシュノに付いて回っていたと思っていた。

 高嶺は一応芝野の部屋へ行く。


「芝野くん、フォーナを見なかったかい?」


 ノックしながら外から問う。

暫く待つと襖が空き中から芝野が顔を出したどうやら寝ていたようだ。

寝ぼけ眼で


「どうしたんだい?当然ここにはいないぜ?連れ込みでもしたらそれこそ明穂くんに殺されかねないからね。なんなら検閲してくれてもかまわんよ?」


 ひどいジョークをスルーして


「フォーナが帰ってこないんだ。少し手を貸してくれるかい?」


 高嶺は真面目な顔で芝野にお願いをする。

芝野がニヤリと笑い


「僕がそのお願いを断るとでも思ってるのかい?すぐ行く」


そういうと一旦襖を閉めた。

 高嶺は居間に戻り明穂にも手助けをお願いして一旦家の周りを捜索する。

フォーナの行動範囲はそんなに広くない。

せいぜい家から1キロ以内であろう。

一応遠くへは行くなと指示してあるのでそれを破ることはないと高嶺は思っている。

みんなで家の中、その周りを捜索してみたがフォーナの姿は見つからなかった。


 一旦家の門の前で集まり状況を確認する。


「いましたか?」


 見つからないのが気がかりになってきた高嶺。


「見つからない、フォーナちゃんはどのへんまで足を延ばしてるの?」


 明穂は相当心配していた。


「だいたい畑へと続く道やその周りは結構うろうろしてます。あの子は好奇心旺盛ですから。でもあまり遠出はしてないはずです」


 どこかに電話をしていた芝野が電話を切って


「一応この村の敷地を出た者、入ってきた者はいないそうだ。ま、監視できる場所からに限定されるがね」


 その話を聞いて明穂は眉を顰める。

つまり常にこの村への出入りは監視されているということになる。腑に落ちなかったが今は気にしないことにする。


「とりあえず創作範囲を広げましょう。人手がないのはちょっと困った所ですが日が落ちてしまったら探すのが困難になる。シュノは家で待ってるかい?」


 高嶺はシュノに聞く。まだ日の浅いシュノは一人で探すことはできないだろう。だがシュノは首を振って


「…一緒に」


そう答えた。高嶺は頷き


「ではシュノは僕といっしょに。明穂さん、芝野くん。すまないがもうしばらく手伝ってください」


そう言って頭を下げる。


「ふふん、大事な家族が見当たらないのだ、探すのは当たり前だよ。高嶺くん」


 持っていたバッグから芝野は家の周りの地図を出し


「ではこっち方面はこの僕が。こっちの民家のある方を明穂くんが。高嶺くんとシュノは畑に向かうこのあたりと畑周辺を探してみてくれ。何かあったら連絡を。一応真壁さんにも連絡してみたが今日は村を離れているようだ。万が一を考えて明穂君はその足で真壁さん宅周りも見てきてくれたまえ」


 そう言って地図をたたみ、次に懐中電灯を出して全員に渡す。


「長期戦になっては困るので一応渡しておく。明穂君は暗くなる前に家に戻って待機してくれたまえ。もしかしたらフォーナが帰ってくるかもしれない。なにかあれば各自携帯に連絡を」


 テキパキと指示を出す芝野。

高嶺と明穂は頷いて各自行動に移る。


 シュノと二人、フォーナの名を呼びつつ畑へと続く道を進む。家から畑までは少し離れており林を抜けて畑に行く。その林内をフォーナは楽しそうに駆けるのだが道からあまり遠くへはいかない。

だが今回は少し林の奥までフォーナを呼びながら探しに行く。

だが人の分け入った気配はなく声が静けさに吸収されるばかりであった。

一通り林を探してみたが痕跡すら見当たらない。

そのまま2人は畑まで出たが少し広い畑にもフォーナの姿はなかった。



 フォーナは恐怖していた。

いま彼女の目の前は真っ暗で、そしてここは狭かった。

古い記憶の向こうを思い出す。暗くて痛い地面の場所にずっとずっと長い間そこにいたことを。

誰もおらず、何も見えず、動くに動けない。

さらに彼女の手足は拘束されていたから。

なぜそうなったのか、なぜそうだったのかは思い出せなかった。

だが今の彼女はその状況に近かった。


 あの頃はいくら泣いてもだれもこなかった。

最終的に泣くのも誰かを呼ぶこともやめてしまった。

でも今はきっと高嶺が来てくれる。そんな期待と信頼が彼女の中にあった。

フィーナは大きな声で呼ぶ。悲しくて涙が止まらなく声も震えていたがただただその名を呼ぶ。


「たーーーーかーーーねぇぇぇぇぇぇ」


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