プロローグ
いきなり新作を作りました。
まぁ理由は「アレ」でございます。
今回は現代モノから異世界モノという形で行きたいと思います。
完全オリジナルです!!
楽しんで頂けるようにがんばりたいと思います。
「…えーであるからしてぇ・・・この度この国で初めての「奴隷召喚・・・あ、いや契約召喚を行うことができる日がぁ・・・」
晴天の中、まるでお祭りを思わせるほどのたくさんの人たちが集まっている会場で、どこかのえらい男の長い話が永遠と続いている。
少年はそんなもの気にせずに人をかき分けておじさんがスピーチをしていると思われるステージの上が見える場所までなんとか進もうと人にもみくちゃにされながら前へ進もうと試みる。
「タカネ!!迷子になるなよっ!!もしとーさんが見つけれなかったら入り口の門のところで待ってろよ」
見えなくなった息子に聞こえるように父親が声を張って叫ぶが少年はそれに返事をできないくらい大人たちに挟まれてもみくちゃになっている最中であった。
「・・・長々と話をしましたがこれより国家異世界召喚士第一号となられたクサカベミズナさんに日本初の奴・・・契約召喚をおこなっていただこうと思います。それではクサカベ先生よろしくお願いいたします」
おじさんの長い話が終わり大勢の人々が拍手を送る。
そんな中、少年は無理やり人ごみをかき分けてなんとかステージに手をかけれる位置まで近づけた。
丁度、えらく長いスピーチをしていたおじさんと入れ替わってスーツ姿の男の人がステージの袖から姿を現す。
先ほどより大きな拍手と感嘆の声が漏れる。
少し小柄な男であったが顔は整っていた。
さわやかな笑みを湛えつつ男はステージの中央に立ちお辞儀をしてから喋り始める。
「みなさん。こんにちは。今日は多くの人が見守る中、この国初めての正式な契約召喚を行うことができることを嬉しく思います」
男はそこで言葉を区切り周りを見渡す。
そしてステージにしがみ付くように顔を出してる少年と目が合い優しく微笑んでまた周りに視線を送ってから
「さて、私がこの国で最初の『国家異世界召喚士』となった日下部 瑞菜と申します。この国に新たなパートナーを導き、みなさまの生活のお手伝いをしてもらえる獣人たちをこの世界と異なる世界から来ていただくお手伝いをさせていただきます。彼らは大変やさしく、勤勉です。そんな彼らが楽しくこの日本のために活躍できる場所をみなさんも一緒になって作ってくれることを期待しています」
男はそこで後ろに振り返り
彼の後ろに掛けてあった垂れ幕を外すように指示をする。
2、3人の男性が急いで垂れ幕を外すと
地面になにかチョークのようなもので書かれた謎の文字と謎の線がたくさん書かれた円形の図形が姿を現す。
地面に描かれているので実物を見ることはできないが
ステージの上部に設置された大型モニターにその図形が映し出されていた。
日下部は映像が映っているのを確認して前を向き
「これが『契約召喚』に使われるいわいる魔法陣と呼ばれるものになります。特殊な材料、特殊な技法を用いて描かれるのでこのまま真似しても召喚はできませんので真似しないようにしてくださいね」
日下部がそう言うと会場に軽い笑いが起こる。そしてゆっくりと歩き魔法陣の外周を回りながら移動する。
「さて、さっそく儀式を始めたいと思います。これから召喚するのは先ほどもいいましたが獣人です。彼らは頭に犬や猫のような動物の形の耳があり尻尾もある、よく漫画やアニメでみかける獣と人間の間の子のような姿をしています。とても温厚でやさしく、そして子供のように純粋です。そんな彼らはこれから我々の助けとなりこの国で共に歩んでいってくれるでしょう。では始めます」
日下部はマイクを切る。
そして魔法陣の前に立ち手をかざして何かを呟いていた。
その声は聞こえない。
すこしざわざわしていた会場がシンと静まり返る。
上空の映像はなにも起こらない魔法陣を映したままだった。
暫くして地面がうっすらと光始める。
映像の魔法陣も薄っすらと光輝きその線は光で映像は曖昧になる。
徐々に光は強くなっていく。だがそれ以外は何も変わらない。
画面は光のせいでなにが写っているのか見にくくなっていき、魔法陣を中心にだんだんと風が起こり始める。
静かだった会場が驚きと興奮で少し騒がしくなり始める。
ステージにしがみ付いていた少年は、巻き起こる風に負けまいとステージにさらにしがみ付き、一瞬たりとも見逃すまいと目を見開こうとするが眩しさと風圧で徐々に目を開けてるのがつらくなる。
それでも最大限できる限りの薄眼で一生懸命ステージの上を見る。
ステージの上はすでに風速20メートルはあろうかと思えるほどの風が渦巻き、光がまるで粒子のように舞っている。
とても幻想的な風景にすべての人が風と光に負けないように顔を覆いながらその風景を見ようと努力していたが、風と光はますます強くなりすでに魔法陣からほとんどの人たちが目を逸らし事が終わるのを待っていた。
そんな中、少年は最後まで負けまいと必死に目を開けようと努力していたがすでに視界にはなにも映らないくらい光に溢れ、真っ白な光しか見えなかった。
風が強くなり轟轟と風切り音が大きくなる。
やがてドンっ!!というすごい音が鳴り響き
びっくりした人々の悲鳴や叫び声が上がる。
少年は集まった光が拡散するようにはじけ飛ぶのを見た。
その時一瞬だったが空中に光の薄氷で作られたような「SR」の文字が浮かび上がり一瞬で砕けるように霧散してしまう。
・・・・そして光の中に人影が現れる。
まっすぐと立った人影の胸部のふくらみと細い腰回りでそれが「女性」であることを認識できた。
少年はチカチカする目をこすってしっかりと人影を見る。
そして朱い、朱い髪をなびかせる一人の女性を目撃する。
女性は眩い光の中にあってもその存在感を強く誇示していた。
その姿を見て少年は目を奪われて惚ける。
ゆっくりと落ち着いていく風に巻き上げられ、ぼさぼさと揺れる少し長めの燃えるような朱い髪。その髪に埋もれるようにぴょこりと飛び出したネコ科を思わせる耳が見える。
端正な大人びた生気に満ち溢れた顔立ち。
薄っすらと開かれた眼にはまるで黄金がはめ込まれたような金色の瞳が輝いており、獰猛な肉食動物を連想させた。
薄いタンクトップと短パンのような服を着て、布に覆われてない手足は程よく鍛えられたものであることは誰が見ても明らかな手足が伸びていた。そして腰の後ろに見える太い紐のような先端にふさっとした赤毛のついた、そう獅子の尻尾がふりふりと動いていた。
ステージにしがみ付いていた少年は、俯き加減のその女性の顔を正面から魅入った。
微かに開いた唇が一瞬なにかを呟いたように見えたが、その呟きを理解することは少年にはできなかった。
光と風は徐々に収まり、その女性の全容がすべての人々の目に映り、多くの人たちがその女性の美しさに目を奪われ感嘆の声を漏らす。
だが一番その姿を食い入るように見続けた少年は、自分の中の初めての恋心をたしかに感じ、頬を蒸気させていた。