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貴方に幸福を  作者: 真友
4/7

一年前の無駄話

「ああーそろそろ彼女が欲しいよねえ」

「突然どうした……?」


 初めての仕事を終えてから一夜が経過した朝、ふと、思い出したかのようにクニハルが言った。

 

「だってほら、もうすぐクリスマスじゃん?クリスマスを一人で寂しく過ごすのは避けたいじゃん?」

「気が早いだろ……まだ九月だぞ?」

「もう九月なんだよ?三ヶ月なんてあっという間だよ?あっという間に二十年連続の一人クリスマスだよ?」

「一人クリスマス言うな」

「違う違う。二十年連続の一人クリスマスだよ」

「年数はどうでも良いんだよ!そもそも俺は二十年連続じゃないし!」

「えっ!彼女いたの!?」

「……まぁ、少し前までね」


 二十年連続、とクニハルは言うが実際はそうではない。何を隠そう、俺にも過去に一度だけ、彼女がいた時期があったのだ。

 それも、一年や二年では無い。中学二年の時から大学一年までの五年間だ。

 一年未満で破局するカップルも数多く存在する中、五年という年数はかなり長い部類に入ると思う。

 ただ、年数が長ければ長い程、お互いに興味が薄れてしまうのも事実だ。マンネリ化と言うやつかもしれない。

 どちらかが浮気したとか、大喧嘩したとか、そう言った大きな事件が起こった訳ではなく、驚くほど自然に俺たちの関係は終わりを告げていた。

 今となっては、どっちが別れを切り出したのかすら覚えていない。


「その人とはまだ連絡とってるの?」

「いや全く。大学も違うし会う機会も無いからね」

「そっか……悔いはないのかい?」

「全く無いって言ったら嘘になるかな。五年も一緒にいたのに、彼氏らしい事は何一つしてあげられなかった気がするし」

「泣ける話だね……涙が出るかと思ったよ」

「出てねえのかよ」


 別れてからもう一年か、と思った。

 この一年で、俺の生活はガラッと変わった気がする。

 例えば、彼女から連絡が来る事が無くなったから携帯を見る時間が減った。変わりにボーッとする時間が伸びた。

 電話をする事が無くなったから、人と話す機会が少なくなった。

 孤独を感じる時間が伸びた。

 思えば、彼女は俺の心の大部分を占めていたのかも知れない。それなら、もう少し大切にしてあげるべきだったかな。

 なんて、別れてから思っても遅いのだけど。


「まぁ……人生は長いからさ。きっとその思いが糧になる日が来るよ」

「来るといいけどね、今のところそんな予兆無いよ?」

「し、心配いらないよ!大丈夫だから!たぶん!きっと!おそらく!」

「説得力ゼロなんだけど……」

「ああ、ほら!大学遅刻するよ!」

「うわ、ほんとだ」


 話の途中だけど、まあ仕方がないか。それにしても、久しぶりに元カノの話をした。

 あいつは今頃、どうしてるんだろう?少し気になりながら、俺は大学へと向かっていった。

 


 

 


 


 

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