<難民政策>
この作品中の法律は作者に都合のいい解釈やご都合主義で展開を進めていきます。また作品に登場する人物の思想信条や考え方は必ずしも作者本人と同一ではないことをご理解の上お読みください。
「今日の特番は難民を受け入れる家庭に密着した内容です」
テレビの特番を祖母の家で見ながら昼食を食べていた。大掃除の手伝いということで来ていたのだが、食べ終わって次の掃除にかかるのが早いか、特番が終わるのが早いか、どちらだろう。
「こっちもそれぐらい国でやれとは思ってたんだけど、国の将来のこと何も考えないで受け入れろとだけ言うなんて馬鹿じゃないのって言われてやってやることにしたんだよね」
どうやらこの男が受け入れる家族の父親らしい。それから難民受け入れ制度の概要が解説される。難民受け入れ賛成派には施設と一般家庭の二通りの制度がある。
まず、受け入れ施設であるがこういった施設には一切の税金が投入されることはない。すべて受け入れ賛成派から徴収したお金だけで運営され、滞納や拒否には税金と同じように差し押さえといった形で徴収されることになる。そして、たとえ途中から反対派になったとしても支払い義務は負うこととなる。
そしてもう一つ、一般家庭に受け入れるホームステイのような難民受け入れがある。これにも一切の税金は投入されず、一切の面倒は各家庭で見ることになる。しかし、難民はその家庭を後見人として働くことができるので金銭的に大変になるということはないのだという。
「また後見人制度には様々な責任を負うことになる―――」
次は賛成派の人々に課される責任の話がはじまる。犯罪や事故によって何らかの被害が出た場合、賛成派や後見人の一般家庭が賠償や弁償を行なうことになる。もちろんこれも差し押さえ対象だ。
しかし、賛成派の意見では難民が犯罪なんてするわけがない。この制度は難民を犯罪者扱いしているという意見だそうだが、難民が犯罪を起こさなければそもそも問題はないし、事故は仕方なく起きるものとして賠償が必要だと数年前に最高裁で決められた。
だが、一部ではこの賠償や責任が免除される法律が施行されることになった。反対派が被害を受けた場合には満額の賠償が義務付けられるが、被害を受けたのが賛成派の場合にはその賠償が免除されるというものだ。賛成派同士お互い様ということで被害を受けたほうが負担することになったのだ。
「こんなの・・・」
俺がテレビを見ていると祖母が口を開く。
「日本人なら外人さんじゃなくて日本人を助ければいいのにのぉ」
どうやら先週もこの特番を見たときに取り扱っていたのが児童養護施設だったそうで、受け入れるならそういった行き場のない日本人の子供たちを受け入れればいいのにということらしい。俺も実際にそれを自分の家で見ていたが、難民のいる海外の国に難民支援として拠出する金額は増えているにも関わらず、国内のそういった施設には十分な税金が投入されていないという内容だった。
そして、結局番組よりも俺の食べ終わる方が早く、食べ終わった俺は二階の掃除をするために二階へといった。