<死刑制度>
この作品中の法律は作者に都合のいい解釈やご都合主義で展開を進めていきます。また作品に登場する人物の思想信条や考え方は必ずしも作者本人と同一ではないことをご理解の上お読みください。
ある日曜日の昼過ぎ、俺がテレビをつけると昨日の事件の報道をしていた。死刑制度反対のデモ行進に男が刃物をもって12人が死亡、8人が重軽傷を負ったという事件だ。
テレビではアナウンサーがしきりに事件の概要を伝えている。
「男は殺すのは誰でもよかった。死刑にならないから狙ったと供述しており、警察では―――」
確かに死刑にはならないだろう。今回殺されたのは死刑制度反対のデモ参加者であり、死刑反対の人間なのだ。殺されてしまった被害者の訴えていた死刑反対の意思を尊重し、これだけの被害者が出たにもかかわらず男には死刑判決ではなく無期懲役が科されるだろう。
「ふあぁ~」
俺はあくびをしながらチャンネルを変える。どこかほかのニュースをやっていないかと一通り回し見るのだ
しかし、俺だったら殺されるだけなんて御免だ。18歳になった時、俺は死刑制度に賛成の立場を示した。この国では18歳になった時に特定の制度などに対して賛成か反対かといったことを登録する義務がある。俺のような死刑賛成派を一人でも殺せば死刑になり、死刑反対派を殺した場合には殺されてしまった人間の意思を尊重して犯人は死刑とはならないのだ。
そして、まだ18歳未満の子供は皆守るべきものという考えから、一人でも殺せば死刑になる。一応、弁論会で死刑制度反対を訴えていた女子中学生が殺された際には、被害者の意思を尊重するとして死刑を免れたこともあるので絶対ではないが・・・。
「警察から男の身元が明かされました。男は、18歳未満の未成年だということです。弁護士の橋村さん、これに対してはどういった対応をすることになるのでしょうか」
俺がチャンネルを戻すと速報が入っていた。テレビの司会は出演している弁護士に話を振る。結局ほかの局はドラマや雑談をしている番組で結局ニュースをしているのがここしかなかったのだ。
「容疑者が18歳未満の場合でも、今回殺されたのは反対の意思の方々なので死刑にはなりません―――」
その後、弁護士の話したことをADが、カンペのスケッチブックのようなものに書いてまとめたものが映し出される。
未成年が犯人でも被害者の意思が最優先され、今回は死刑ということはならず普段の素行や事件の悪質さを判断材料として更生の余地があるかどうか裁判で判断されるということだ。
その後は昨日も流された目撃者の話や現場に行った記者から現場の様子が中継される。
「血だらけで包丁持ったのがそこの角から走ってきて目が合ったんですよ。俺もビビっちゃったんですけど〈俺は死刑賛成派だぞ〉て言うとそのまま向こうに逃げていったんですよ」
「犯人は包丁をこのあたりに捨て―――」
昨日の時点で明らかになっていた話ばかりである。それからしばらくして、俺はテレビを消して買い物に出かけた。