4章 稼ぎの為に
この町がこんなに栄える前から、ダンジョンは既に存在していた。ダンジョンが出来た頃はギルドは無かったと聞く。だが古代にはダンジョンに潜っている冒険者達が居ることが判明した。因みに古代には鉄の剣等は無く全てが脆い剣だっという。更に言うと防具は無く何も守るもの無しでダンジョンに潜っていたのだ。
つまり何が言いたいかと言うと昔の人達はそんな軽装備でダンジョンに潜りモンスターと戦っていたということだ。
「ギャウッ!!」
「おらっ!!」
こんな話を聞いても信じてもらえないと思うが、これは本当の話だ。俺はこの人達の話を聞いて信じられないと思いが半分、本当にすごい人達なんだなという尊敬の念が半分。
この町に来てギルドで冒険者登録をしてちゃんとした武器「ゴブリン」と戦っている俺とは逆に、正真正銘の生身で凶悪なモンスター達と戦っている人達が遥か昔のダンジョンに存在していたのだ。
「ウシャアー!!」
「うおっ!!」
「グルッ?」
もしだ。もし、そんな古代の人達がいまこの場所にいたとしたら。純粋な強力な力で敵を蹴散らす本物の戦士がここに居たとしたら。やはりこんな状況でも鼻をほじりながら切り抜けてしまうだろう。
「「「「「グルオゥ!!」」」」
「やっぱ、無理ィィィィ!!」
俺にはそんな事は絶対にできっこない。
「くそっ、卑怯だぞ!!正々堂々1匹ずつ戦え!!」
俺はゴブリンの群れに背を向けて全力疾走した。計5匹のモンスターは追いかける標的がいなかったのか俺を執拗に追いかけてきた。
場所はダンジョンの1階層。
視界を埋め尽くす青色に染った壁面と天井。空が見えない天然の迷路はどこまでも続いている。分かれ道、十字路、急な上り坂、緩やかな下り坂。そんなダンジョンの道を俺は必死に走っている。
早朝ということもあり他の冒険者が居ないダンジョンの1階層で、順調にモンスターを狩り続けていた俺は、運の悪いことに、さっきこのゴブリンの集団に出くわしてしまったのだ。
最初はなんと7匹もいて、囲まれる前になんとか2匹は倒すことに成功したが、あいつ等は以外に綺麗な包囲網を敷いてきた。今の俺の力では逃げるしか選択肢は残されていなかった。
そもそもがゴブリンはあんな多く群れることほとんど無い。ぶっとい棍棒に鋭い牙を武器とする小型のモンスターは、大抵2匹~3匹でダンジョンを徘徊している。新米冒険者の俺が言うのなんだがこんな光景は見たことない。
先日のウロタロスの件といい、ここの所ろくな目に遭っていないきがする。俺はもう何かに呪われているんじゃないかと...........
「くっ」
俺は目の前にある曲がり角に飛び込み、ぶれーきをかけ、身をひそめた。俺は待ち伏せを選択した。ゴブリンがこの曲がり角に飛び込んできた瞬間一気に俺がゴブリンに飛びかかる心算だ。
こんな俺の行動を見て他の冒険者達はこう言うだろう。「臆病者」と。
だがこの行動は俺の作戦の1つだ。作戦と言ってもこれは通路の幅が狭い1階層でしか出来ないことだ。だがこの作戦にも1つ弱点がある。それは反対側から他のモンスターに挟み撃ちされる可能性だ。
もしやるなら速攻でやるしかない。
ドダッドダッと足を音を立ててゴブリンが近付いてくる。俺の今の武器は2本のナイフと風の魔法だ。風の魔法と言っても発動したばかりなため1回も使ったことが無い。だから上手くいくか少し不安だ。
だが俺はこの瞬間を利用して1つ目の風の魔法を試すことにした。俺は目をつぶり大きくスゥーと深呼吸をし腕に風を纏わせるイメージを作った。
そして目を開けると俺の右腕は風が纏っていた。
「よしっ、成功だ」
俺がそう呟いた瞬間、目の前にゴブリンの顔が姿を現した。
「うぉぉぉぉおおおおおっ!!」
「グギャッ!?」
1匹目のゴブリンと目が合った俺は瞬時に地面を蹴りゴブリンの心臓に右腕を突き刺し心臓を貫通させた。まず1匹目。俺は2匹目のゴブリンに地面に落ちていた小石を投げ視界を奪い地面に倒した。
「グギャ?」
「おらっ!!」
「グギャッ!?」
俺は地面に倒したゴブリンを押さえ付けそのまま右腕で腹部を突き刺した。これで2匹目。2匹目のゴブリンの死骸から俺が離れると3匹目ゴブリンが死骸に毛躓いた。
「よっと」
「グギャッ!?」
俺は風を纏わせた右腕では無く左手で持ったナイフで刺殺した。これで3匹目。次に4匹目のゴブリンが俺に飛びかかり奇襲を仕掛けた。俺は4匹目のゴブリンに向かって左手に持ったナイフを飛ばした。俺が飛ばしたナイフは4匹目のゴブリンの眉間を貫きそのまま地面に落ち絶命した。
最後の5匹目のゴブリンは4匹のゴブリンの末路を見て怯えたのか少し錯乱した状態で飛び込んできた。俺は5匹目のゴブリンに対して1匹目のゴブリンと同じように右腕でゴブリンの心臓を突き刺した。これで5匹目。
「ふっ~、これで終わりか」
動かなくなったゴブリンの死骸の横にペタンと腰を下ろした。こんな数をいっぺんに相手したのは初めてだ。少し不安だったが何とかなって良かっと心から思った。因みに右腕に纏っていた風は自然に消えていた。
俺は現在どこの組にも入っておらずパーティを組んでいないその為1人で戦わなければならない。ソロで潜るのは俺が決めたことだからソロでの戦い方はちゃんと考えている。
例えばなるべく1匹で行動しているモンスターを狙って倒すること、モンスターが逃げても深追いをしないこと、自分がいる地形を上手く活用すること等だ。カレンさんから叩き込まれたこのダンジョンの知識もちゃんと俺の命を救ってくれている。
「よっこらしょ」
俺は立ち上がりゴブリンの死骸に近寄った。そしてゴブリンの死骸の胸を刳り、飛び散る血を無視して、胸部の奥にある紫の石を取り出した。この石のことは「魔石」と呼ばれている。
カレンさんが言うにはこの魔石はモンスターから獲得できる魔力のこもった不思議な結晶らしい。カレンさん自体もこの話にはあまり詳しくないから俺もこれぐらいしか知らないけど。
まぁ簡単に言えばこの結晶には不思議な力が宿っておりこれをギルドに持っていけば換金してお金になるのだ。
そしてしばらくすると魔石を取り出したゴブリンの死骸に変化があった。急に身体の色が落ちていき、灰となり完全に消滅した。
これがダンジョンで産まれるモンスターの運命だ。
「ん?ドロップアイテムかこれはラッキーだな!!」
灰となったゴブリンの死骸の上に光る何かが落ちていた。俺は光る何かを拾い上げるとそれがすぐゴブリンが落とすドロップアイテムゴブリンの牙だと分かった。
ここでドロップアイテムのことを簡単に説明すると倒したモンスターが稀に落とすアイテムの事をドロップアイテムと言う。ドロップアイテムは魔石より格段に高く換金出来るのだ。
「グオオオオオッ!!」
「連戦かよクソが」
ここに来てまさかの連戦少しぐらい休ませてもらってもいいだろうが。
このダンジョンは魔石やドロップアイテムをひっくるめて不思議に満ち溢れている。世界に一つしか存在しないダンジョンはさっきも言ったが古代から存在するものだ。
そんなダンジョンのことを聞き帰ってくる答えがダンジョンは呼吸をしているつまり俺達見たく生きているという事だ。だが生きていると言っても喋ったり動いたりはしない。ただダンジョンの壁を壊しても壊しても瞬時に回復し何事もなく普通の壁に戻ってしまう。
更に言うとモンスターはダンジョンが産んでいるのだ。これについてはあまり説明は出来ないが自然にダンジョンの床や壁などから産まれてくると聞いている。更に言うとモンスターは全階層で生まれる訳ではなく全く持ってモンスターが生まれない階層が存在する。そんな階層の事を「安全地帯」と言う。
「およっと!!」
「グルブッ!?」
俺はゴブリンより弱いモンスターゴモンに飛び蹴りをかました。上手く飛び蹴りがヒットしゴモンは吹っ飛んで行った。俺は幼少期ゴモンに襲われてことがあり以外にスカッとした。
「おっ、またドロップアイテム。今日はついてるのか俺?」
ぶっ飛ばしたゴブリンからドロップアイテムをゲットした。因みに今回のドロップアイテムは「ゴモンの牙」だった。さっきまで自分は呪われていると思っていたが以外に恵まれているんじゃないかと思い始めてしまった。
「ギシャャャ!!」
「ぐっほ・・・・・・」
すると突如バートウルフの飛び蹴りが俺の横っ腹に命中した。前言撤回俺はやはり呪われていた。俺は一息付くとバートウルフは俺に威嚇しまくっていた。
俺はウラさんとの約束があるため普段以上の稼ぎが必要だった。だから晩御飯時までは粘って金を稼がないと。
「まぁ、取り敢えず、倍返しね」
俺はそう言いバートウルフの頭部にナイフを突き刺した。
レオン・バーサ (男) 組 無所属 Lv1
攻撃力 F100→F136 防御力 F116→F153
スピードG86→F103 持久力F102→F129
魔法 G68→G99
【魔法】
風の纏い・・・右腕に風を纏わせる
ジェットスパイラル・・・右腕に風を纏わせ風に乗り相手を攻撃する。
ジェットスマッシュ・・・風の反動を利用し風を纏った拳を相手に叩き付ける。
【スキル】
死神・・・・・・命の危機に直面した時一時的に全ステータスがアップする。
討伐・・・・・・モンスターを討伐するとステータスの経験値が更にアップする。
超回復・・・・・・重傷を負っても数分で傷が塞がり完治する。