3章 店員
「・・・・・・・・・ん、ふわぁぁぁぁ~」
俺の本拠地の隠し部屋。地下に作られているため朝日も鳥の鳴き声も届かなかった。だが俺はしっかりと早朝を見極めいつも起床する時間に目を覚ました。
俺が見極められるようになったのは俺が田舎に住んでいたからだ。田舎に住んでいた頃祖母の畑仕事に駆り出された為早く起きるのが習慣となりこの時間帯になると勝手に目が覚めるのだ。
(5時ぴったりか・・・・・・)
一応俺は心配になりベットから起き上がり壁に掛かっている時計を確認した。天井を見上げると魔法石で作られたランプ「魔法灯」がぼんやりと輝いていた。地下は暗く夜になると完全な暗闇に包まれてしまうその為「魔法灯」は俺の生活に必要不可欠なのだ。
因みにこの「魔法灯」を作り出したのはドワーフでもエルフでも無く俺達ヒューマンだ。他の種族達は口を揃えてこう言う「ヒューマンとは何って手先が器用なんだ」と。
少し馬鹿にしているように聞こえるが「魔法灯」の作りを見てもられえれば同じ人種の俺でもよく作れたなぁと感心してしまう程の器用さだ。
俺はいつも通りベットのシーツをしっかりと直し布団を綺麗にたたみベットの隅に置いた。このベットは一般的のベットより結構小さめだが段々と慣れてきた。
それから、俺が向かうのは洗面台だ。洗面台では洗顔と歯磨きだ。最初にしっかりと奥まで歯を磨き磨き終わると両手に水を注ぎ顔を洗いその顔をフワフワしたタオルでしっかりと拭く。これが俺の日課だ。
歯を磨き顔を洗い身支度を整えると俺はいつも通りダンジョンに向かった。
ダンジョンに行く為にメインストリートを歩いていると昨日とは違い早朝の為人通りが少なかった。それだけではなく何処のお店も銀色のシャッターが閉めており開店していなかった。
そんな中ドワーフとヒューマンの冒険者のパーティを見つけた。恐らく何階層に潜るのか何のクエストを受けるのかを決めダンジョンに潜るのだろう。
「あ~あ、腹減った」
グゥーと大きく腹の音が聞こえてきた。俺は歩きながら腹をさすった。参ったな。今日は起きてから何も腹の中に何も入れていない。すごくひもじい。
どっかで何かを調達したいがあいにくこんな早朝からやっている店は1件も無かった。
「どうぞ、割引券です!!」
「えっ・・・あっ・・・どうも」
そんな時俺の目の前に腕が伸びてきた。腕の主は俺が通り過ぎようとしていた店のウェートレスのヒューマンの少女だった。格好は白いブラウンと膝下まである黄緑色のジャンバースカートに、その上から白いフリルが着いたエプロンを掛けていた。髪は銀髪のショートカットを軽く後頭部で纏めておりポニーテールみたいなものだった。可愛らしい容姿に俺は見蕩れながらもすぐ正気を取り戻し店員さんから割引券を受け取った。
俺はまだ準備中のお店を覗いた。するとお店の中ではエルフの店員が1人と獣人の店員が2人計3人がお店の準備をしていた。俺は貰った割引券を見て今日の晩御飯はここで食べようと密かに心の中で決めた。
「冒険者さんって、こんな早くからダンジョンに潜るんですね!!」
「いや、俺は特別ですよ。俺は弱いんで朝早くダンジョンに潜ってどんどん経験を積まないと駄目なんで」
俺がそんな事を考えながら店員さんの前を通り過ぎようとすると店員さんが声を掛けてきた。俺は店員さんに朝早くダンジョンに潜る理由を話した。
「とゆうか、貴方もこんな朝早くから割引券を配るんですね・・・・・・普通は人通りが多い昼に配るんじゃ?」
「いえ、実は、お店の準備は他の3人がやっていて何をしようとか考えていたら女将さんに”やること無いなら外で割引券でも配ってろ”って言われちゃって」
「へぇ~、大変なんですね・・・・・・」
俺はふっと思った。何故この店員さんはこんな朝早くから割引券何かを配ってるんだろう?俺は気になり店員さんに聞いて見た。店員さんはこの店の女将さんに命令されやっていると答えた。
俺が少女にそんな事を聞いているとグゥーと再び腹の音が鳴った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺の腹の音を聞き店員さんは目をきょとんと丸くした。そして俺は顔を少し赤くした。目を丸くし店員さんだが直ぐにクスリと笑い笑みを漏らした。その笑いと笑みは俺にとっては強烈なダメージだ。俺は俯いて顔を上げられなかった。
「うふふふっ、お腹が空いてるんですか?」
「・・・・・・はい、朝から何も食べていないもので」
俺は店員さんの問いコクリとしか頷けなかった。しばらく何かを考えこんだ店員さんは店に入りとすぐ店から出てくると手には2つのおにぎりが握られていた。
「これをどうぞ、少し冷めてるとは思いますが」
「えっ、いや、これアンタのご飯じゃ・・・・・・」
店員さんは手に持った2つのおにぎりを俺に渡そうとした。腹は空いていたが流石に見ず知らずの店員さんのご飯を貰う訳には行かない。
「それならこうしましょう。このおにぎりをアナタが貰う代わりにアナタは今夜の晩御飯をここで食べて行ってください」
「・・・・・・それならいいですよ、俺も晩御飯はここですまそうと思っていたので」
「じゃ今夜お待ちしているのでちゃんと来てくださいよ」
店員さんは俺がおにぎりを貰う限り俺にこの店で今夜の晩御飯を済ますように取り引きみたいなものを持ち掛けてきた。元々ここで晩御飯を済ます事にしていた俺は店員さんの取り引きを承諾した。
俺はそんな約束をしダンジョンに向かおうとしたがふっと何かを思い足を止め後ろを振り返った。俺は不思議に俺を見つめている店員さんにこう言った。
「俺の名前はレオン・バーサ、アンタの名前は?」
「私はウラ・ベリルットです。レオンさん。」
店員さんウラ・ベリルットさんは笑顔で名を名乗ってくれた。