2章 ペリペティア
迷宮都市ペリペティア。
「ダンジョン」と通称される地下迷宮を保有する10万人者人々が住む巨大都市だ。
因みに都市の名前「ペリペティア」はギリシャ語で「冒険者」を意味する。
そんな都市には人間を含めあらゆる種族の亜人達が住んでいた。
学に乏しい俺がこの都市ペリペティアについて説明できるのはこれくらいだ。住ませてもらっていてあれだが俺は本当にペリペティアの事について何も勉強していない為大雑把に認識している程度だ。
俺が住んでいた場所はここから少し離れた田舎だ。その為俺は完全な田舎育ちだ。だから世間知らずと言われても文句は言えない。
半月前俺を育ててくれた祖母が亡くなった。死因は俺を魔物から守って死んだのだ。俺は保護者を亡くし祖母が残した財産を持って村を飛び出しペリペティアに来た。
俺がペリペティアに来た理由は前も言ったと思うが”ダンジョンに期待を抱いていたからだ”。
「ダンジョンに潜るなら期待を抱いて行け」
幼き頃の俺に毎日のように祖母が言ってくれた言葉だ。俺はある時この言葉の意味を祖母に聞いた。祖母は「この、絵本を読みなさい」と1冊の本を俺に手渡した。
この本のタイトルは「ダンジョンに期待を抱き英雄となる」と少し意味の分からないものだった。俺は祖母に進められこの本を読み始めた。
読み始めた結果俺はこの本にハマってしまった。タイトルはあれだったが本の内容はとても面白く胸を熱くした。
本の内容を簡単に説明すると、主人公の男の冒険者が俺同様ダンジョンに期待を抱いて潜り明らかに勝てないモンスターと闘い敗北した。そこを女の冒険者に救われた。男の冒険者は女に救われ感謝はしたが情けなく思いその場から逃げるように去った。
男の冒険者はそれから血が滲む特訓し自分が手も足も出なかったモンスターを瞬殺するまでの力を得て男の冒険者は歴史に名を残す冒険者となったのだ。
これが本の大体の内容だ。
俺はこの本の内容と今日あった出来事が少し重なっているように思える。
例えば、元々ダンジョンに期待を抱いて潜っていたり。ダンジョンで強敵とは闘えなかったが出くわしたり。死にそうな所を女の冒険者レオナさんに助けられたり。その場から逃げるように去っていたり。
思いの他結構内容と重なっていた。
(って事は、次は力を得て歴史に名を残す冒険者になるのか俺は・・・・ってそんな事は絶対にないのにな・・・・・・)
俺は様々な種族で溢れる大通りを歩きながらそんな事を思っていた。そんな事は絶対に有り得ない筈なのに・・・・・・
俺は大通りを見るとドワーフ,獣人,ナーノス等様々な種族の冒険者達が高価な防具に身を包み高価な武器を背中や腰に指したりなどして歩いていた。
途中すれ違ったエルフの女冒険者に見とれながらも自身が向かう目的地に急いだ。大通りを抜け細い路地裏を進みいくつもの角を曲がり騒がしい声が聞こえなくなった頃俺は目的地に到着した。
「・・・・・・」
俺は目の前に建っている建物を見上げた。
人気が一切無いこの路地に建っているのは今にも崩れ落ちそうな木造建ての家だった。
少しでも壁に触れるだけでこの家は崩れるだろう。
「入るか・・・・・・」
俺はそう呟き屋根が落ちないように静かに扉を開け中に入り中からまた静かに扉を閉めた。因みに鍵はついているがこう古くなるともう使えないとこの家を紹介してくれた人が言っていた。
「ただいま~・・・・・・って誰も居ないか」
俺は誰も居ない家に自分が帰宅したことを告げた。
「・・・・・・やっぱり、修理しないともうダメかこれは?」
俺は既にヒビが入っている壁,、割れている床のタイル,俺の頭上にあり既に半分崩壊している屋根などを見て呟いた。
だが修理をすると言っても金がかかり今の俺の稼ぎでは絶対に払えないのだ。だから金が溜まるまで俺は辛抱強く待たなければならない。
「取り敢えず下るか」
俺は家の奥にある本棚を横にスライドさせた。するとそこには地下に続く石の階段が現れた。
この階段を作ったのは俺が住む前に住んでいた人らしい。その人はダンジョンのドロップアイテムを保管する為にわざわざ地下1階を作ったのだ。
まぁ俺が住み着いた頃にはドロップアイテムなんか1つも無かったけど。
俺は横にスライドさせた本棚を元の位置に戻し石の階段を下って行った。
下って行き地下に着くとそこにはソファー,ベット,机など様々な日常品が置いてあった。いくつかは自分で買ったものだが元々この場所にあって使えるものはそのまま使っている。
「ふぅ~、疲れた」
一息つく為に俺はソファーに腰を下ろした。そしてソファーに座りながら机の上に置かれている瓶の中に今日稼いだ金を半分入れた。
俺がやっている行為はすなわち貯金だ。俺が金を貯金する理由は俺自身の未来の為だ。もし大金が手に入っても直ぐに無くなったら意味が無いだろ?だから俺はその為に毎日少しづつでいいから貯金をしているのだ。
「あまり食材が無いな・・・・・・はぁ~、しょうがないある物で今日は我慢するか・・・・・・」
俺はソファーに座りしばらく休憩した後キッチンへ足を運んだ。
昼食は外で食べているが朝食や夕食は金が無いため外で食べることが出来ない。その為朝食と夕食はある物で自分で作らないといけないのだ。
こんな事が半月続いた結果料理のスキルはそこらの女より上がったように思うこの頃だ。
「レオナ・ハートさんか・・・・・・」
俺は今日ウロタロスから助けてくれたレオナ・ハートさんの顔を浮かべながら目の前にある食材に包丁を入れた。