プロローグ ダンジョンに期待を抱くのは良いことだ
「ダンジョンに期待を抱いてはいけない」
この言葉はダンジョンに潜る新米冒険者がギルドの職員や先輩冒険者に言われる言葉だ。
何故ギルド職員や先輩冒険者はこの言葉を新米冒険者に送るのか解いてみるとこう答えた。
「ダンジョンには期待などは一切無い。ダンジョンにあるものは不安と絶望だけだ」
俺はその言葉に反論する。確かにダンジョンには不安と絶望はあるが100%とあるとは限らない。俺はダンジョンにも期待・希望・出会い・友情等があると俺は思う。
だから俺はもう一度問うダンジョンに期待を抱いてはいけないのか?
結論。
俺の考えは間違っていた。
「ヴモォォォォォォォ!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
半年前家族の忠告を聞かず冒険者になった結果、俺は今死にかけている。今俺を殺そうとしているモンスターは牛頭人体の「ウロタロス」だ。
Lv1の俺の攻撃はウロタロスに当たっても蚊に刺されたぐらいにしか効かないのだ。俺はそんなモンスターにかれこれ10分近くは追いかけられている。
これは浅はかで人の忠告を無視した俺の末路だ。俺はこの時思った”ダンジョンに期待なんか抱かなかったら良かった”と...........
ダンジョンには期待何かこれぽっちも存在しなかった。ダンジョンに潜ってあったのは絶望と恐怖だけだった。
期待は無いし希望も無いそれに出会い何かも無い。俺はこんな甘い考えでダンジョンに潜ったからこんな事になってしまったんだ。
「ヴゥムゥン!!」
「うおっ!!」
俺が今までの行いに懺悔しているとウロタロスの蹄が俺の頬を掠った。俺の頬からは血がポトポトと頬を流れて地面に流れ落ちていった。
「ヴゥムゥン!!」
「うおっと」
ウロタロスは再度俺に蹄で攻撃して来た。俺は何とか避けたがウロタロスが砕いた地面に足を取られ地面に転がってしまった。
「痛てぇな、ってヤバっ」
「ヴモォォン!!」
地面に転がった時にぶつけた後頭部を擦りながら目を開けると目の前にウロタロスの蹄が迫っていた。
(こりゃぁ・・・・・・死んだな。あぁ~最後ぐらい美人な女と出会いたかったな~)
俺は死を覚悟し欲望を思いながら目をつぶった。
「ヴモォ?」
俺の耳に聞こえてきたのは俺の頭が潰れる音では無くウロタロスの間抜けな声だった。
「ん?」
俺が目を開けるとウロタロスの身体には細い剣で付けられた一つの線があった。
「グブゥ、ヴモォォォォォォォ!!」
「うおっ、危なァ!!」
しばらくすると間抜けな声を上げたウロタロスは断末魔を残しバラバラの肉の塊となり地面に落ちていった。この時ウロタロスの血飛沫が俺に飛んできたが間一髪の所で何とか避けた。
「ねぇ、君大丈夫だった?」
「えっ、あぁ、大丈夫だけど」
ウロタロスを倒したのは屈強な剣士でも無いし伝説の勇者でも無かった。俺を助けたのは銀髪の美少女だった。
銀髪の美少女の身体は青色の軽装に包まれたその上から銀の鎧を付け手には銀のサーベルが握されその銀のサーベルからはウロタロスの血がポトポトと地面にたれていた。
(・・・・・・コイツは確か)
俺は銀髪の美少女の事を知っていた。
「ペレンメ組」の主力冒険者の1人Lv5闘う女神レオナ・ハートだ。
「あの、すいません。ウロタロスを逃がしたのは私達ペレンメ組です」
「いや、別に助けてもらったし、気にしてはいないですし、頭を上げてください」
レオンさんはウロタロスがこんな下層に逃げてきたのは自分達の組のせいだと謝罪した。だが俺はレオンさんを攻めることは出来ず頭を上げるように言った。
「じゃ、俺はこれで本当に助けてくれてありがとうございました」
「えっ、ちょっと待って、せめてウロタロスを逃がした償いをさせて」
「いや、償いは大丈夫です。命を助けられたんで」
俺は改めてウロタロスから助けてくれたレオナさんにお礼を言いその場から去ろうとするとレオナさんが償いをしたいと言い俺を引き止めた。俺は命を助けられたから大丈夫だと言いダンジョンの出口に向かった。
再結論。
やはりダンジョンに期待を抱くのは良いことだ。
何故ならこんな美少女と出会えたのだから・・・・・・