981.冒険者、ランク。
ギルド職員で、俺の担当になってくれたリホリンさんに勧められるまま、パーティー登録も完了した。
パーティー名は思い浮かばなかったので、『シンオベロン(仮)』となっている。
パーティー登録をしておくと、実績査定の時にパーティーメンバーがまとめて評価できるので、冒険者側もギルド側も手続きが簡素化できて楽だということだった。
『冒険者ギルド』が、冒険者の実績査定をするという事について、少し尋ねてみた。
リホリンさんによれば、冒険者にはランクがあって、そのランクを決定するのが実績査定とのことだ。
『冒険者ギルド』に持ち込む魔物……魔物素材や魔物肉や『魔芯核』、依頼を受け達成した件数などギルドに対する貢献度で、査定されるのだそうだ。
迷宮に入って魔物を狩ることに制限はないが、掲示板に貼り出される依頼については、冒険者のランクを指定しているものもあり、そのランクに達していないと依頼を受けれないらしい。
ランクが上がったからといって、直ちにメリットがあるわけではないが、依頼を受けれる幅が広がったり、トップランカーになるとギルドの特別室を使う権利が与えられたりするそうだ。
そして何よりも実力主義の冒険者の世界で、ランクが高い者はそれだけ評価され尊敬を集めるとのことだ。
この名誉的な意味合いが、大きいのかもしれない。
ランクには七段階あって、初めて登録する者はどんなに実力があっても最低ランクになるそうだ。
そこから実績に応じてランクが上がっていくので、実力があればそれだけ早くランクを上げられるらしい。
実績査定は、特に決まった時期があるわけではなく、ギルドの記録で基準に足したときに適宜上げてもらえるそうだ。
個別に実績査定を依頼することもできるらしい。
冒険者のランクは、Fランクから始まり、最高がSランクになっているとのことだ。
このランクについては、今後の為にも整理しておきたかったので、いくつか突っ込んで質問して、俺なりにまとめてみた。
○Sランク……『伝説級ランク』とも言われていて、長い歴史の中でも数組しかいないらしい。もちろん現在このランクの冒険者パーティーは、いないそうだ。
○Aランク……『究極級ランク』とも言われ、数十年に一組出るか出ないかという難しさのようだ。現在はいないらしい。
○Bランク……『極上級ランク』とも言われていて、ここが事実上のトップランカーとのことだ。現在二組存在しているそうだ。
○Cランク……『上級ランク』とも言われている。
魔物の討伐数、討伐魔物のレベル、難易度の高い依頼の達成などいくつもの条件を満たさないと認定されないランク。現在は、八組存在しているとのことだ。
○Dランク……『中級ランク』とも言われている。
このランクになると冒険者として一人前で、いわゆる中堅どころなのだそうだ。
○Eランク……『下級ランク』とも言われている。ギルドの出すクエストをクリアできれば、FランクからEランクにはすぐ上がれるとのことだ。
○Fランク……『初級ランク』とも言われていて、登録すれば誰でもなれる最初のランクである。
俺の登録が完了すれば、このFランクということになるのだ。
ランクの査定は、あくまでギルドに対する貢献度であって、レベルは直接は関係ないそうだ。
ただ、当然のことながら高いランクになるには、レベルも高くならないと難しいだろう。
AからFという呼び方はともかくとして、もう一つの呼び方は、アイテムの『階級』にそっくりだ。
というか……それに準じているのではないだろうか。
まぁアイテムに、『初級』という『階級』は無いけどね。
ギルド側は、AランクとかFランクとかの呼び方をする場合が多いが、冒険者たちは、強き者への敬意を込めて『究極級』の冒険者とか、『極上級』の冒険者という呼び方をすることも、あるらしい。
前に『コウリュウド王国』の迷宮についての説明を聞いたときに、攻略者のランクについても説明を受けた。
『コウリュウド王国』では、冒険者のことを攻略者と言うわけだが、そのランク付けもあった。
呼び方は違うが、基本的には同じようなものだった。
『コウリュウド王国』での攻略者ランクは、上から……
○『ゴールド』
○『シルバー』
○『ブロンズ』
○『アイアンハイ』
○『アイアンミドル』
○『アイアンイージー』
……となっていて、六段階だった。
『コウリュウド王国』のランク付けでは、『アルテミナ公国』で言うところの『初級ランク』が省かれているようだ。
あとは、ほぼ対応する感じだったと思う。
『アイアンミドル』が、中堅どころの攻略者と認識されていると言っていたから、『アルテミナ公国』で言うところの『中級ランク』のはずだ。
現役の『シルバーの攻略者』は、一人もいない状態で、三組の『ブロンズの攻略者』パーティーが、『シルバー』昇格を目指して、しのぎを削っているとも言っていた。
『ブロンズの攻略者』に相当するBランク『極上級』の冒険者パーティーは、二組といるということだったが、つい最近までは三組だったのだそうだ。
一組は引退したらしい。
アイスティルさんが教えてくれたが、引退してしまったその一組というのは、なんと『フェアリー商会』に入ってくれたローレルさんたち『炎武』の皆さんだった。
トップランカーだったという話は聞いていたが、本当にトップランクだった。
多くの冒険者の尊敬を集める……めっちゃ凄い人たちだったということだ。
ローレルさんは、リリイの母方の大伯母であり、リリイを見守るために冒険者を引退して、『コウリュウド王国』にやって来たのだ。
そんな事情があるとは言え、『狩猟ギルド』のギルド長や『ハンター育成学校』の教師をお願いしているのは、少し申し訳ない気持ちになる。
冒険者を続けていたほうが、はるかに稼げていただろうし。
まぁ今までに、お金は充分貯めているのかもしれないけどね。
トップランカーだったんだから、下手な商会の会頭とかよりも、はるかに稼げたはずだからね。
感覚的には……高年俸を取るプロスポーツ選手のような感じだったと思うんだよね。
ちなみに、アイスティルさんや『フェアリー商会』の幹部となってくれているサリイさんやジェーンさんが組んでいた冒険者パーティー『麗華』は、Dランク『中級ランク』だったとのことだ。
アイスティルさんの話では、一流の証であるCランク『上級ランク』への昇格も近づいていたらしい。
冒険者を辞めてしまったのは、惜しい気がするが……リーダーが亡くなったことで、パーティーを解散したと言っていたので、それ以上深く聞くのはやめた。
ヌリカベンさん達『美火美』のメンバーも、Dランク『中級ランク』 だったそうだ。
これから、上を目指そうと思っていた矢先に、悪徳奴隷商人に騙されて被害にあったわけだ。
そんな状況で、冒険者稼業が中断していたから、やはりまだ引退する気持ちにはなれなかったのだろう。
この中堅と言われるDランク『中級ランク』の冒険者になると、それなりの暮らしができるそうだ。
Cランク『上級ランク』の冒険者になると、かなり裕福に暮らせるらしい。
ちなみに『コウリュウド王国』の『攻略者ギルド』は、国が運営しているので、『ブロンズ』の攻略者になると、国から名誉爵位が与えられると聞いている。
『アルテミナ公国』では、『冒険者ギルド』が国とは独立した存在になっているから、そのような制度は無いそうだ。
ただ独立した存在といっても、冒険者が持ち帰る『魔芯核』の一定量を国に納めることになっているので、半官半民みたいなかたちなのだろう。
そんなこともあって、Aランク『究極級ランク』の冒険者が出た場合には、爵位が与えられることもあるらしい。
読んでいただき、誠にありがとうございます。
ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。
評価していただいた方、ありがとうございます。
次話の投稿は、28日の予定です。
もしよろしければ、下の評価欄から評価をお願いします。励みになります。
ブックマークも、お願いします。
何卒、よろしくお願いします。




