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963.バリエーションが豊富な、ウズラたち。

(マスター、ウズラたちを見つけて仲間にしました)


(あるじ、ウズラ、いっぱい友だちなった)


 『ニクマツリ商会』の食堂を出て、次の目的地に移動している途中で、『スピリット・オウル』のフウと『エンペラースライム』のリンから念話が入った。


 さっき頼んだばかりだが、あっという間に野生のウズラを仲間にしてくれたようだ。


(ありがとう。何羽くらい仲間になった?)


(はい、六百二十四羽です)


(いっぱい、いっぱい)


(え、そんなに……)


 この短時間に……どっやって……?

 ていうか……やり過ぎでしょ、それ……。

 まぁいいけどさぁ。

 とりあえず……大森林に移ってもらうことにしよう。

 俺は、頑張ってくれたフウちゃんとリンちゃんに労いの言葉をかけ、大森林に移すのでサーヤが着くのを待つように指示した。

 そしてすぐに『アメイジングシルキー』のサーヤに念話を繋いで、ウズラたちを、転移で大森林に連れて行ってくれるようにお願いした。


 養鶏場の準備ができたら、二百羽くらい移ってもらおうと思う。

 残りのウズラたちは……ピグシード辺境伯領で今後随時復興していく市町に作る牧場のメンバーになってもらうのが良いだろう。


 それにしても……二百羽に絞ったとしても、今の養鶏場の面積じゃ……さすがに狭いなぁ……。



 俺は急いで下町エリアに戻って、オッカアさんと再度打ち合わせをすることにした。


「オッカアさん、もう少し鳥の種類を増やしたいので、養鶏場を広げられないかと思っていたんですけど、他に購入できそうな場所は無いでしょうか?」


「おやまあ、そんなに飼育するのかい? 多分子供たちは……三十人ぐらいだよ。そんなに面倒みれるかね?」


「はい。もし人手が足りないようだったら、この辺を掃除をしている若い衆に手伝わせようと思っています。あと……もしよかったら……子供たちだけじゃなくて、仕事を探しているお母さんとかにも声をかけてみてください。短い時間でも構いませんので」


「ほんとかい? そりゃいいね! わかった、何人か声をかけてみるよ」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


「あとは……土地だねぇ……この場所と続きの方がいいけどねぇ……隣の倉庫は使ってるしねぇ……」


 オッカアさんは、首をかしげながら思案してくれている。


 ちょうどその時、倉庫を眺めていた俺たちのそばに馬車が止まった。


 馬車からは、七十歳くらいの小ぎれいな老紳士が出てきた。


「まぁまぁムギーさん、ちょうどよかった! こちらが話をしていたグリムさんですよ」


 オッカアさんはそう言って、俺の腕に手をかけた。


「グリムさん、この方はね、この土地の所有者の方で、ムギーさんです。『ムギルイ商会』の会頭さんでもあるんですよ」


 そう言って、老紳士を紹介してくれた。

 なんとこの空き倉庫の所有者だったようだ。


「はじめまして、グリム=シンオベロンと申します。この度は、貴重な土地を譲っていただけるとのことで、ありがとうございます。ぜひ購入させてください」


「シンオベロン閣下、直接お会いできて光栄ですよ。『救国の英雄』殿ですからなぁ……ハッハッハ。長生きはするもんです。ハッハッハ」


 細身で小柄な白髪白髭のおじいさんなのだが……笑い方が豪快だ。

 そして独特の迫力がある。


「ムギーさん、早速で悪いんだけど……この隣の倉庫は、まだ使うんでしょう? もうちょっと養鶏場を広く作りたいみたいなのよ……」


 オッカアさんが、すぐに話を切り出してくれた。

 隣にある使用中の倉庫も、このムギーが所有しているようだ。


「ほほう……そんな大きな養鶏場を作るのですか?」


「はい。どうせなら、しっかりしたものを作って、働いてくれる子供たちが、大人になってもそのまま働き続けられるような場所にしたいと思っているのです」


 俺はそう言って、大王ウズラという珍しい鳥と、白レグという卵をたくさん産む鶏と、今では飼う人がほとんどいなくなったウズラを飼育する構想の話をした。

 『フェアリー商会』での働き方や子供たちに対する教育の話もだ。


「ハッハッハ、それは面白いですな。子供たちでも働けて、読み書きまで教えてくれるとはのう……。驚きですな。でも……なぜそこまでやるのですか?」


「子供たちは……私にとっては、宝物のような存在なのです。泣いている子供たちを見たくありませんし、輝く未来を夢見て欲しいのです。子供たちは……私にとっても、この世界にとっても、未来そのものだと思うのです……」


「ほほう……。確かにそうですな。この老いぼれには、染みる言葉ですよ……。私も一肌脱がざるを得ませんなぁ。倉庫は他にもあるで、隣の倉庫もお譲りしましょう」


 ムギーさんは、好々爺のような優しい笑顔でそう言ってくれた。

 現在使用中の倉庫まで売ってくれるとは……

 なんともありがたいことだ。


「ありがとうございます。でもほんとによろしいんでしょうか?」


「ええ、構いませんよ。他の倉庫で何とかなりますしな……。それよりも、養鶏場ができたら遊びに来てもいいですかな?」


「もちろんです。是非、いらして下さい。卵の直売所も作りますし、卵を使った美味しいお菓子も販売する予定でいますので」


「それは楽しみですな。ハッハッハ」


 ムギーさんのお陰で、養鶏場の面積が一気に二倍に増えた。

 本当にラッキーである。


 話がまとまったところで、少し『ムギルイ商会』について尋ねてみた。


 『ムギルイ商会』は、小麦を中心とした穀物の販売をする商会で、『領都セイバーン』の商会の中では、中堅どころの商会とのことだ。

 お店は東西南北の各ブロックの『下級エリア』に一店舗ずつと、『南ブロック』の『中級エリア』と『西ブロック』の『中級エリア』に一店舗ずつあるらしい。

 この六つのお店と、東西南北の各ブロックの『下級エリア』に、倉庫を持っているとのことだ。


 ムギーさんは、『商人ギルド』の理事もしているらしい。

 年齢も相まってのことだと思うが、ご意見番的な存在なのだそうだ。

 自分でご意見番だと言って、豪快に笑っていた。

 なかなかに面白い人である。


「せっかくのご縁ですし、シンオベロン閣下、これからもよろしくお願いしますよ。同じ商売仲間としてね」


「こちらこそお願いします。それから私のことは、グリムとお呼び下さい」


「そうですか、じゃあ遠慮なくそう呼ばせてもらいましょう。グリムさん、私の商会は、孫娘が切り盛りしておりましてのう、気立ての良い子で言い寄る男が多いのですが、まだ独身なのですよ。一度会って、相談に乗ってやってくれませんかのう。今後の商会の運営で悩んでいるようでしてのう。グリムさんのような若くて、やり手の方に相談に乗ってもらえば、良い考えもひらめくでしょう」


「はい、分りました。私でお役に立つか分かりませんが、喜んでお話をお伺いします」


「そうですか、ありがとうございます。早速孫娘に話をしておきます」


「そうかい、そうかい、それはめでたいね!」


 話を聞いていたオッカアさんが、何故か自分のことのように喜んでいる。

 そしてムギーさんと何やら目配せをして、ニヤリとしている。


 なんとなく背中に寒いものを感じるのだが……なんだろう……?



 それはさておき、面積が拡張できたので、十分な数のウズラが飼育できる。

 これで『ニクマツリ商会』さんに、ウズラの卵を潤沢に供給できそうだ。


 そう思っていたところに、フウとリンから念話が入った。


(マスター、追加で千二百七十羽仲間にしました。みんな大森林に連れて行けばいいですか?)


(あるじ、いっぱい友達なった! 友達いっぱい!)


 しまった……。

 仲間にするのを、明確に止めていなかった……。


 フウちゃんとリンちゃんは、張り切ってしまったらしい。


 どうも……仲間の野鳥軍団の鳥たちに指示を出して、捜索範囲を広げてどんどん仲間にしていたようだ。


 さすがにまだセイバーン公爵領全域には及んでいないと思うので、この時点で一旦仲間にするのを止めた。


 このままでは、セイバーン公爵領に野生のウズラが一羽もいなくなってしまうからね。


 全域のウズラを全て仲間にしてもいいかもしれないけど、一旦自重することにしたのだ。

 ウズラを捕まえて飼育したいという人が、他にもいるかもしれないからね。



 俺はオッカアさんとムギーさんと別れた後、少し気になったので、転移で大森林に移動した。


 早速仲間にしたウズラたちを確認した。


 俺が思っていた姿のウズラたちも結構いるのだが、珍しい色や姿のウズラもかなりいる。


 まん丸い感じのピンクのウズラは、『桃ウズラ』という種類らしい。

 ボールというか……デフォルメされたぬいぐるみみたいで、かなり可愛いのだ。

 綺麗なピンク色の卵を産むと、『桃ウズラ』本人が言っていた。

 それから……ウズラを一回り大きくして、まん丸にした雉っぽいデザインのウズラもいる。

『雉ウズラ』という種類だった。

 卵も一回り大きいようだ。


 この世界には、いろんな変わった種類のウズラがいるようだ。

 なんかウズラたちがめっちゃ可愛くて……すごく好きになってしまった。

 お世話をする子供たちも、この可愛さにメロメロになるに違いない。





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[一言] >グリムさん、私の商会は、孫娘が切り盛りしておりましてのう、気立ての良い子で言い寄る男が多いのですが、まだ独身なのですよ。一度会って、相談に乗ってやってくれませんかのう。  囲いがまた増えた…
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