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942.隠された歴史の、真実。

 一旦まとめた話の中でも、更なる疑問がいくつかある。


 なぜ公国は、王家の血筋に繋がる者を今でも探しているのか?

 なぜ突然に、亜人の迫害を始めたのか?

 そして、公国の圧政に対抗するレジスタンス組織があるようだが、その組織についても、もう少し聞きたいところだ。


「なぜ公国は、王家の血筋の者を探しているのでしょうか? 悪魔が狙っている可能性もあると言っていましたが……」


 俺は、『アルテミナ公国』の王女でもあるアグネスさんに尋ねた。

 これが本当なら、アグネスさんやリリイが狙われるということになるからね。


「はい、それについては、おそらく……公王家の血筋の者に発現する可能性がある特別な力が関係していると思います……」


 アグネスさんは、憂いを帯びた表情で答えた。


「それは、一体どんな力なんですか?」


「はい、それは……『召喚魔法』の力なのです。しかも『勇者召喚』ができる魔法が発現する可能性があるのです」


 なんと! 勇者召喚……。

 そんなレアな魔法が発現しやすい家系だということなのか……?

 にわかには信じられないが……。


「それは本当なのですか? 過去に発現した人がいるのですか?」


「はい。長い歴史の中では、何人かいたとされています。特に有名なのは……『アルテミナ公国』の建国の英雄譚でもある『英雄女王と月光の勇者タマ』という話が有名です」


 アグネスさんはそう言って、『英雄女王と月光の勇者タマ』で伝えられている内容と共に、特別な情報を教えてくれた。


 それは……今から約千二百年前の話なのだそうだ。


 現在の東小国群と、更に東にある中規模の国である『トリトンズ王国』、東小国群の北側に広がっている大砂漠地帯の一部、東小国群の西側と南側にある『コウリュウド王国』の一部の地域に、『オリンポード王国』という国があったのだそうだ。


 当時、この『オリンポード王国』は悪魔に襲われ、分裂して内紛状態にあったらしい。


 そんな状況の中、『オリンポード王国』を支えるアルテミナ公爵家の令嬢ヒカリイは、悪魔から世界を救いたいと強く願ったのだそうだ。

 すると彼女に、特殊スキル『召喚魔法——勇者召喚』が発現したらしい。

 『通常スキル』の中のレアスキルなのか、それとは別の『特殊スキル』という新たな分類なのかは、分からないとのことだ。


 このスキルは、発現と同時に発動したらしい。

 この時に、一人の勇者と四人の従者を同時に異世界から召喚したのだそうだ。


 『召喚魔法——勇者召喚』は、一度しか使えない特殊なスキルだったために、発現と同時に発動した後に、すぐに消えてしまったと伝えられているらしい。


 この時に召喚した勇者と四人の従者というのが、後に『コウリュウド王国』を建国する勇者シキとその従者たちだったとのことだ。

 これは、かなりの衝撃情報だ。

 なんと勇者シキや今の四公爵家の初代様を異世界から召喚したのは、当時のアルテミナ公爵家の令嬢だったというのだ。


 当時、『オリンポード王国』は、もはや国としては機能しておらず内紛状態だったため、勇者召喚が行われたと知れれば、勇者たちが利用され、身に危険が及ぶと考えたヒカリイさんは、密かに匿い、支援したらしい。


 そして、勇者たちが修練を積む過程で、五神獣が力を貸してくれることになったのだそうだ。


 そうして力をつけた勇者たちは、独立して行動を始めたらしい。

 ただその後も、密かに支援したり、何度か共闘もしていると伝えられているとのことだ。


 ただこの事は、歴史には残されていない話なのだそうだ。


 シキたちに、ヒカリイとタマが協力したことが知られていないのは、秘匿する約束にしたかららしい。

 アルテミナ家に、勇者召喚の力が発現する可能性があることが知られると、子孫たちが狙われる可能性があるとヒカリイが考えたからだそうだ。

 それ故に、シキ達と相談し、後世に残さないようにしたようだ。

 ただアルテミナ家だけは、代々密かに伝えてきたらしい。

 隠された真実ということのようだ。


『コウリュウド王国』には、本当に伝わっていないのだろう。

 国王陛下やユーフェミア公爵からは、この話は一切出なかったからね。

 これを知ったら、きっと驚くに違いない。

 アグネスさんの許可を得て、後で教えてあげようと思う。

 もちろん極秘情報として取り扱うことと、後世に記録として残さないことは、言わなくても陛下たちならわかってくれるだろう。


 アルテミナ公爵家令嬢のヒカリイさんという人は、勇者シキたちが『コウリュウド王国』を建国したように、現在の『アルテミナ公国』を建国したらしい。

 初代公王になったそうだ。

 そして、英雄女王と言われていたとのことだ。


 アルテミナ公爵家の守護神とされていた『霊神 アルテミス』の加護を受け、またその巫女だったとも言われているようだ。

 『霊神 アルテミス』は、『月霊神 アルテミス』と言われることもあるようで、月と関連が深い神様らしい。

 暗闇を照らす月のように、人々の人生に指針を与えて、照らしてくれる慈愛の神と言われているそうだ。

 人々を飢えさせない狩猟と豊穣の神でもあるらしい。


 ヒカリイ女王と行動を共にして、勇者シキたちを助けたり、公国の建国に貢献したのが『月光の勇者タマ』という猫亜人の女性だったとのことだ。

 彼女も『霊神 アルテミス』の加護を得ていたようだ。


 ヒカリイと親友だった猫亜人のタマは、共に行動する中で『地産勇者』として覚醒し、『月光の勇者 タマ』となり多くの人々を救ったと伝えられているそうだ。

 『アルテミナ公国』の人たちに勇者と言えば、皆『月光の勇者タマ』のことを思い浮かべるくらい人気があるらしい。


 勇者シキと四人の従者やそれを支える軍団とともに、ヒカリイとタマは悪魔の軍団を倒したというのが、隠された真実ということのようだ。


 ただこのことは、歴史から意図的に削除されていて、『コウリュウド王国』の建国神話にも記載されていないし、『アルテミナ公国』の建国神話である『英雄女王と月光の勇者タマ』でも語られていないとのことだ。


 この英雄譚で語られているのは、公国の初代王となった英雄女王とその親友の『月光の勇者 タマ』が、当時のアルテミナ公爵領を苦しめていた悪魔たちを倒し、国を建てたという話だけらしい。

 その中で多くの人々を救ったという事は語られていても、勇者シキたちを召喚したり、支援したり、共闘したという話は一切語られていないのだそうだ。


 ちなみに、当時の『オリンポード王国』の王家は、悪魔に利用されて、最終的には滅びたらしい。

 王家に仕えていた公爵家や上級の貴族たちが、独立して国を作ったのが今の東小国群なのだそうだ。


 そして当時の『オリンポード王国』の国土の一部と、当時悪魔の支配下にあって魔物の領域と化していた現在の『コウリュウド王国』の大部分の面積を、勇者シキたちが解放し、国を建てたということだ。

 この領域には、魔物だけではなく悪魔に連れ去られ家畜のように飼われていた人々もかなりの数いて、彼らを保護し国民にしたらしい。

 また当時の『オリンポード王国』の人々の多くも、『コウリュウド王国』の国民になったようだ。


 この動きと同じように、東小国群の更に東には、新たな国として『トリトンズ王国』ができたのだそうだ。


 北の砂漠地帯にいた人たちのほとんどは、『コウリュウド王国』に移住したらしい。






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― 新着の感想 ―
[一言] >「はい、それは……『召喚魔法』の力なのです。しかも『勇者召喚』ができる魔法が発現する可能性があるのです」  もしリリイが発現して、使ったとしたら異世界人の大勇者が召喚されそうだな……。えっ…
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