904.すごい、褒賞金。
次の議題というか、報告事項は、俺と仲間たちに対する褒賞金についてだった。
『正義の爪痕』壊滅についての褒賞金を、改めて出してくれるというのである。
しかもセイバーン公爵領と王国から、それぞれ出るという話だった。
セイバーン公爵からは、今回の『正義の爪痕』の壊滅及び今までの各種の働きに対しての総合的な褒賞金ということだ。
今までにユーフェミア公爵たちの窮地を救った功績も、合わせて評価されているらしい。
そんなこともあり、なんと褒賞金は百億ゴル支払われるとのことだった。
日本円にして百億円くらいの価値なので、すごい金額だ。
そして、なんと国からの褒賞金は、五百億ゴルだと言われてしまった。
『正義の爪痕』の壊滅及びピグシード辺境伯領とヘルシング伯爵領とセイバーン公爵領を救った功績を、全て合わせたものということだ。
合わせて六百億ゴルになるが……最近金銭の感覚が麻痺してきて、飛び跳ねるほど嬉しいという感じではない。
元の世界にいた時の俺だったら、確実に飛び跳ねていたと思うけどね。
今回の『正義の爪痕』の壊滅にしても、戦利品として魔法道具や『操縦型人工ゴーレム』など貴重なものを軒並みもらっているし、『正義の爪痕』が蓄えていた金貨なども全てもらっている。
それだけで充分だったのだが……。
それらはあくまで戦利品で、いわば労に報いるための『報奨』であって、今回与えられるのは功績を褒め讃え評価した『褒賞』金ということらしい。
この世界に来て最初の頃に盗賊を捕まえて、その報奨金として数百万ゴルを手にし驚くとともに喜んでいたが、今では戦利品として数億ゴルという単位のものが手に入るようになった。
最近では、億単位に驚かなくなってしまっていたので、百億単位の褒賞金が出ると聞いても、少ししか驚かない感覚になってしまった。
もう一兆とかいう単位でないと、驚かないかもしれない……。
非常にありがたい話なのだが、俺はお金に困っているわけではないから、この分を領民生活を豊かにするために使ってもらったほうがいいような気がする……。
ただ、そんなこと言うとせっかくの厚意に対して失礼だし、またユーフェミア公爵やマリナ騎士団長にダメな子供を見る目をされそうなので、今回は黙って聞いていた。
下手をしたら、王妃殿下にまでダメな子供を見る目つきをされてしまいそうだからね。
そしてあくまで報告事項であって、相談ではないのだ。
もう決定事項ということなのである。
俺と仲間たちに対しての褒賞金で、代表して俺に与えられるということなので、いつものように仲間たちに分配しようと思う。
六百億のうち三分の一の二百億は、一応貯金というか今後のためにストックしておくことにした。
残りのうち二百億は、今後の活動資金ということでいいだろう。
『フェアリー商会』の拡大や、俺たちの活動費用である。
もっとも俺たちの活動費用はそれほどいらないと思うので、この二百億は『フェアリー商会』を取り仕切っている『アメイジングシルキー』のサーヤに預けることにした。
これとは別に百億円を、『フェアリー商会』内の『フェアリー銀行』の資金にしようと思っている。
新たな産業の育成に力を入れていきたいと思っているのだ。
商人として独立したい人や新しく商会を起こしたい人に貸付するだけでなく、有望な事業には投資をしようと思っている。
資金を貸し付けるだけでなく、返済する必要がない投資として提供することにも幅を広げようと思っているのだ。
利益が出たら配当をもらえばいいし、本当に有望な事業なら貸付よりもはるかに利益が見込めるのだ。
ただ、大きく展開するような事業のアイデアを持っている人は、中々いないと思うので、実際のところは技術を持った職人さんなどへの投資が主なものになると思う。
残りの百億については、仲間たちに分配しようと思っている。
大森林や霊域の仲間たち用に十億、各市町の『スライム軍団』『野鳥軍団』『野良軍団』『爬虫類軍団』用に十億、大海域や海の魔域の仲間たちや『マナゾン大河』の『海獣軍団』用に十億、俺の眷属『聖血鬼』のメンバー用に十億、『フェアリー商会』の幹部とスタッフの特別ボーナス用に十億、俺のパーティーメンバーと『魚使い』のジョージたちや『魔盾 千手盾』の付喪神フミナさんたちサブメンバー用に、二十億分配しようと思っている。
今回は、俺の『絆』メンバー全員へ分配しようと思っているのだ。
当然、大森林の仲間たちなどの人型でないメンバーは、お金を使う機会もないし必要性もない。
それ故に、記念メダル的な感じの分配だ。
『正義の爪痕』を壊滅させ、ある意味一区切りなので、全員と分かち合いたかったのだ。
人型でないメンバーには、希望に応じて数枚ずつ配り、残りはそれぞれの場所で共有の資産として保存しておこうと思っている。
このストックは、ある意味保険的な意味合いもある。
いろんな場所に分散して資金を保存しておけば、万が一俺が突然この世界から消えても仲間たちがお金に困らないで済むからね。
既にそういう意味での資産の分散管理は実行済みなのだが、今回はそれへの追加という意味もあるのだ。
それから俺のパーティーメンバーの人型メンバーには、一億ずつは渡そうと思っている。
『魚使い』のジョージなどは、きっと目をドルマークにして喜んでくれるに違いない。
でもあいつは趣味が貯金だから、今回もほとんど使わないだろうけどね。
一億ゴルを分配するメンバーには、新しく仲間になったオカリナさんや、見た目は四歳児中身は三十五歳のハナシルリちゃんも含まれている。
ハナシルリちゃんは、もちろんビャクライン公爵たちには内緒の資産として管理することになる。
まぁ成人するまでは、好き勝手に使うというわけにもいかないだろうけどね。
それでも彼女も、目をドルマークにして喜びそうな感じだ。
ビャクライン公爵家が金持ちであると言っても、彼女が自由に使えるお金があるわけではないからね。
残りの三十億は、全員の共有の貯蓄のようなかたちにして、別に管理しておこうと思う。
今後新たに仲間になるであろう人のためのストックにしてもいいし、いつかみんなに分けてもいいしね。
色んな場所に分散して、隠し貯蓄的な感じにしておこうと思う。
巨大なへそくりと言ってもいいかもしれない。
褒賞金の報告のついでに、チーム付喪神が退治した海賊の報奨金についても報告された。
ユーフェミア公爵からだ。
予定通り、海賊に関する報奨金はセイバーン公爵領で出してくれるらしい。
先日の反乱事件の際に、チーム付喪神のみんなが……というか、ほとんどツクゴロウ博士の一人舞台のようだったが……『ヒコバの街』を襲おうとしていた海賊たちの第二陣の五十四人を捕縛している。
その後にアジトに乗り込んで、更に十人捕縛している。
そして、最初に『ヒコバの街』を襲った海賊の中で、斬り殺されずに生き残った海賊が二十八人いたようだ。
合計九十二人が捕縛されている。
盗賊などを捕まえて連行すると、一人当たり三十万ゴル支払われる規定になっているので、九十二人分で、二千七百六十万ゴルになる。
これとは別に、海賊の首領には懸賞金として百万ゴル加算されるので、合計すると二千八百六十万ゴルということになる。
全額俺に支払われるとのことだが、正確には、海賊の襲撃の第一陣の生き残りの二十八人と、そこに含まれている首領の捕縛は、『特命チーム』のゼニータさんやチーバ男爵の次女のサナさんの手柄と言える。
街の守護であるチーバ男爵や衛兵はともかく、ゼニータさんやサナさんに支払われるべきものだと思う。
そんな話を国王陛下やユーフェミア公爵にちらっと振ってみたら、応援に来てくれたサナさんはともかく、ゼニータさんは『特命チーム』の職務の一環で捕縛しているので、表立って報奨金を渡すことはできないという返答だった。
ただ俺が誰に分配しても自由なので、密かに分配すればいいだろうとアドバイスしてくれた。
と言うことなので、二十八人分の八百四十万と首領懸賞金の百万の合わせて九百四十万ゴルについては、サナさんと『特命チーム』のみんなに渡そうと思っている。
残りの一千九百二十万ゴルについては、チーム付喪神のみんなに渡すつもりだ。
ただツクゴロウ博士は、「金には困っておらん!」とか言って逆ギレして受け取ってくれなさそうだけどね。
前の川賊退治の報奨金の時もそうだったからね。
今回は、盾の付喪神のフミナさんと船の付喪神のエメラルディアさんと『ホムンクルス』のニコちゃんが、使えるように受け取ってもらおう。
もちろんクワの付喪神のクワちゃんと杖の付喪神のヤミさんや、リュートの付喪神のリューさんと壺の付喪神のツボンちゃんも欲しいと言えば、分配してあげれば良いだろう。
それから、海賊団のアジト……今は『付喪島』という名前にしたが、そこに海賊たちの活動資金と思われる金貨などがあった。
二つの悪徳商会ともがっちり組んでいた海賊だし、コバルト領近海で一番大きな海賊団だったこともあり、金貨七百枚程度、銀貨三百枚程度、銅貨五百枚程度、銭貨六百枚程度あった。
その他未換金の装飾品なども置いてあった。
食料品も大量にストックしてあった。
これらも戦利品として、俺たちのものになっている。
金貨だけチーム付喪神の今後の活動資金として、密かにフミナさんに渡して、残りは俺の方で回収させてもらっている。
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