表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

907/1442

898.コボルトの、隠し里。

 午後になって、俺はコバルト侯爵領の『領都コバルト』の南西にある『シーオー山』の中腹に来ている。


『コボルト』族の隠し里を訪れるためだ。


 元『怪盗イルジメ』のオカリナさんが、十四年前から二年間、行動を共にしていた迷宮攻略者パーティーのメンバーであるブルールさんの里を訪ねているのである。


 オカリナさんがブルールさんの里を訪ねるという約束をしていたのだが、その約束に俺も同行させてもらうことにしたのだ。


 突然大人数で押し掛けても失礼になると思い、今回は最小限メンバーにした。

 一緒に来ているのは、『クイーンピクシー』であるニアと、『アメイジングシルキー』のサーヤ、リリイとチャッピー、それに『ドワーフ』のミネちゃんだ。


 同じ妖精族であるニアやサーヤやミネちゃんが一緒に来てくれたら、親交を深めやすいと思い、サーヤやミネちゃんにも声をかけたのだ。

 そしたら、なんと驚くことに『ドワーフ』のミネちゃんは、この『コボルト』族のカジッド氏族の隠し里を訪れたことがあるとのことだった。

 族長であるおじいさんと何度か来たことがあるらしい。


 前にオカリナさんからコバルト侯爵領にある『コボルト』族の話が出た時も、ミネちゃんの知っているカジッド氏族のことだと思ったらしいが、妖精族の隠し里を勝手に教えることはできないので、黙っていたようだ。


 オカリナさんが、ブルールさんに会えて、里に招待されたという話を聞いて、情報を解禁してくれたのだ。

 ミネちゃんは、驚くことにブルールさんとも知り合いだった。


 ミネちゃんの『ドワーフ』のノームド氏族と『コボルト』のカジッド氏族は、元々交流があって仲が良かったらしい。

 ブルールさんのことを“ブルールお姉ちゃん”と呼ぶほど親しいようだ。



 中腹にある鬱蒼とした森を抜けると、隠し里があるらしく、今は森の中を進んでいる。


 はっきり言って、この森を抜けるのはかなり大変だと思う。

 普通の人が、偶然『コボルト』の隠し里を見つけることは、ほぼないだろう。


 事前にオカリナさんが聞いていた目印を頼りに、何とか森を抜けた。


 するとそこには、開けた広いスペースがあり、集落ができていた。


 家や倉庫や鍛冶場のようなものが数多くある。

 奥のほうの岩場には、洞窟のようなものもある。


「ようこそ、いらっしゃい! 待っていたわ、オカリナ。グリムさん達も、よくおいでくださいました」


 ブルールさんが出迎えてくれた。


「早速招いてくれてありがとう。すごくいいところね!」


 オカリナさんが嬉しそうに声をかけた。


「ブルールお姉ちゃん、久しぶりなのです!」


 ちょこんと前に出て挨拶したのは、『ドワーフ』のミネちゃんだ。


「あら、ミネちゃん……どうして?」


 ブルールさんが驚いている。


「ミネは、グリムさん達と一緒に行動しているのです! 『大精霊 ノーム』のノンちゃんも認めてくれているのです! おじいちゃんたちは、グリムさんのお嫁さんになったと思っているのです!」


「え、……よくわからないけど……とにかくグリムさんのお友達ってことなのね。それと……もしかして『大精霊 ノーム』様が顕現したの?」


「そうなのです! グリムさんが目覚めさせてくれたのです! そういえば……『コボルト』のカジッド氏族の里に行くって言ったら、ノンちゃんは、カジッド氏族にもグリムさんに協力するように伝えてほしいと言っていたのです。グリムさんには、世界を救うお仕事があるのです!」


「ノーム様が……わかったわ。とにかく族長のおじさまに話を通します」


 いきなりそんな濃厚な話をブルールさんとミネちゃんがしていたが、詳しい話は後程ということにしてくれて、俺たちを案内してくれた。


 ブルールさんは、ニアには一昨日の反乱の鎮圧の時に会っているが、サーヤとリリイとチャッピーは初めてなので、お互いに挨拶をしていた。


 俺たちが集落の入口に入ると、すごい数の犬が出迎えた。

 百匹ぐらいいそうだ。


 事前にミネちゃんに聞いていた話によると、コボルト族は犬が大好きらしく、犬と共に暮らしているらしい。


 この隠し里は、カジッド氏族という一族の里で、百人ぐらいの『コボルト』が暮しているとのことだった。

 犬も百匹くらいいるという話をミネちゃんがしていたが、本当に百匹くらいいる感じだ。


 ブルールさんが案内しているせいか、警戒している感じではなく皆せわしなく尻尾を振っている。歓迎してくれているようだ。

 先日の戦いの時にブルールさんと共に戦っていたパトとラッシュもいる。

 見覚えがある。

 俺たちは犬たちに囲まれ、クンクン匂いを嗅がれまくっている。


 ニアだけは俺の頭に乗っていて、避難しているけどね。


 ミネちゃんやリリイとチャッピーは、いろんな犬に顔ぺろぺろされている。

 くすぐったくて笑っている。

 ……この子たちは本当に可愛い。


 ちなみに、カジッド氏族は鍛冶仕事が得意ならしい。

 特に剣の鍛造が得意とのことだ。


 煙が出ている場所が何箇所もある。

 鍛治工房がいくつもあるようだ。


 『コボルト』族が独自の技術で作り出す『コボルト青鋼(あおはがね)』を作ったり、それをもとに武器や防具やアクセサリーなども作っているらしい。


 『ドワーフ』族が作り出す『ドワーフ銀』のように、『コボルト』族が作り出す『コボルト青鋼(あおはがね)』は、独特のもののようだ。

 非常に優れた合金らしい。

 前にも少し説明を受けたが、『コボルト青鋼(あおはがね)』は、鋼とコバルトを元に作った青き輝きを放つ合金で、軽くて強く、加工がしやすいのが特徴とのことだ。

 それ故に、剣や全身鎧などを作るのに相性が良いらしい。

 アクセサリーに使われることも、多いようだ。

 非常に劣化しにくく、錆ない性質を持っていて、魔力を通すことも可能で、簡易な魔法金属とも言えるらしい。

 『魔鋼』と同程度の性能らしいので、かなり強力な『魔法の武器(マジックウェポン)』も作れるのではないだろうか。





読んでいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

評価していただいた方、ありがとうございます。


次話の投稿は、6日の予定です。


もしよろしければ、下の評価欄から評価をお願いします。励みになります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  コバルトは鉄同様に磁気を帯びる金属で磁石にくっつくらしく、現実世界だと鉄とコバルトの合金はハードディスクの再生磁気ヘッドに用いられたりするらしい……が、ファンタジー世界での利用法は正直よう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ