895.お披露目に、大熱狂。
記念式典『希望の式典』では、最初に『正義の爪痕』の壊滅の戦勝が祝われ、貢献した者に対する勲章の授与が行われた。
その後、新たに『光柱の巫女』となったテレサさんのお披露目が行われた。
この際、一緒に行動している先輩『光柱の巫女』である老巫女のサーシャさんと、熟女巫女のアリアさんも改めて紹介された。
そして『従者獣』となった『スピリット・ピンクパンサー』の赤ちゃんサクラ、ツバキ、アスターも紹介された。
『光柱の巫女』は、今までもサーシャさんとアリアさんがいたわけだが、王都の『総合教会』本部にいたためにセイバーン公爵領の人が目にする事はなかったわけだ。
それが一気に三人もお披露目されたのだから、皆大歓声をあげて喜んでいた。
そして赤ちゃんパンサーたちは、相変わらずその可愛さで人々をニヤけさせていた。
今回も特別に屋台を出店して、赤ちゃんパンサーたちのぬいぐるみを販売しているので、爆発的に売れそうだ。
ちなみに『領都セイバーン』には、『総合教会』のセイバーン支部があり、支部にいる神父やシスターたちが式典の前に『光柱の巫女』たちに挨拶に来ていた。
端から見ていると挨拶というよりは、擦り寄ってきているという感じだったが、老巫女のサーシャさんがシャットアウトしていた。
前支部長とお付きのシスター二人が、テレサさんに対して失礼な言動をし、それをサーシャさんとアリアさんに咎められ追い返されるということがあった。
その後、なぜか『正義の爪痕』に利用され『魔物人』となってしまうという不名誉な出来事もあった。
そんなことがあったので、今日現れたセイバーン支部の人間にもサーシャさんが厳しく接していたのだ。
口調こそ穏やかで柔らかい感じだったが、その迫力はものすごく、支部の人たちはすごすごと帰って行った。
本来ならば、『光柱の巫女』が三人もやってきているので、『総合教会セイバーン支部』としては、大々的にアピールしたいところだったろうが、サーシャさんが許さなかったのだ。
新たな支部長が、就任するまではおとなしくしているようにと戒められていた。
だいぶ厳しい対応にも思えるが、俺は妥当な処置だと感じた。
実際挨拶に来た支部の幹部たちの様子を見ていると、擦り寄ってきている感じが丸出しで、聖職者という威厳はなかった。
あの支部長のように、人を見下した偉そうな感じではないが、聖職者の有り様ではなかったのだ。
あの支部長に擦り寄って、追従していたのだろうということが想像できた。
支部にいる教会の関係者がすべて同じとは思わないが、少なくとも今回慌てて擦り寄ってきた人たちは、感心できる有り様ではなかった。
前も聞いた通り『総合教会』はかなりの人材不足らしく、セイバーン支部の後任の支部長がすぐには決まらなかったようだ。
業を煮やしたサーシャさんとアリアさんが、若い女性のシスターを支部長に指定し、赴任させることにしたそうだ。
教会のトップである大司教と神官長に直接掛け合って、認めさせたらしい。
教会本部で彼女たちが目をかけていた若いシスターたちの中から、一人を選んだとのことだ。
サーシャさんとアリアさんは、今後、教会改革をやっていくつもりらしく、やる気のある若い支部長を立てて、セイバーン支部を教会改革のモデルとして作り上げていこうと考えているとのことだった。
ぜひ頑張ってほしいと思っている。
ピグシード辺境伯領とヘルシング伯爵領では、ほとんど『総合教会』は機能していなかったからね。
人々の心のよりどころになり、貧しい人たちへの炊き出しを含めた手助けや子供たちを救う活動など、いろいろやるべき事はあるはずだからね。
『光柱の巫女』のお披露目の後は、『神獣の巫女』のお披露目となった。
それに先立ち、先日の『コロシアム村』での『正義の爪痕』との戦いの時に、護国の神獣……コウリュウ様、セイリュウ様、ビャッコ様、スザク様、ゲンブ様が力を貸してくれ、それぞれの『化身獣』と『神獣の巫女』が誕生したということが改めて公式に発表された。
もちろん『コロシアム村』での活躍も、簡単に報告された。
『化身獣』については、その存在は明らかにされたが、誰が『化身獣』なのかということについては秘匿され、お披露目されることはなかった。
『コウリュウの化身獣』である『ライジングカープ』のキンちゃん、『セイリュウの化身獣』である『龍馬』のオリョウ、『ビャッコの化身獣』である『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『スザクの化身獣』である『スピリット・オウル』フウ、『ゲンブの化身獣』である『スピリット・タートル』のタトルは、俺の仲間たちで、人々に知られ目立ちすぎると今後の旅がやりにくくなる。
そこで、ユーフェミア公爵と国王陛下に、公表しないように頼んだのだ。
『化身獣』の存在は当然公表してもいいと思うが、元の姿をあえて広く公表する必要もないだろうし、秘匿できる情報は秘匿したほうがいいと思ったのである。
もともとは『化身獣』もお披露目する予定だったのだが、俺の意を汲んでくれてお披露目は控えてくれた。
『神獣の巫女』については、第一王女や公爵家の長女で、元々有名な存在だから隠す必要もなく、お披露目となった。
『コウリュウの巫女』である第一王女のクリスティアさん、『セイリュウの巫女』のセイバーン公爵家長女のシャリアさん、『ビャッコの巫女』のビャクライン公爵家長女のハナシルリちゃん、『スザクの巫女』のスザリオン公爵家長女のミアカーナさん、『ゲンブの巫女』のゲンバイン公爵家長女のドロシーちゃんが紹介され、人々の大歓声に飲み込まれていた。
ちなみに昨日『神獣の巫女』となったばかりのオカリナさんは、しばらくはその存在を秘匿するということになったので、お披露目には参加していない。
それからセイバーン公爵領の守護神ともいえるセイリュウ様の力添えで、伝説の『セイリュウ七本槍』も復活したことが伝えられ、七本槍として選ばれた七人が紹介されていた。
『一の槍』は『セイリュウ騎士団』団長のマリナさん、『二の槍』はユーフェミア公爵、『三の槍』はセイバーン家次女ユリアさん、『四の槍』はセイバーン家三女のミリアさん、『五の槍』は『セイリュウ騎士団』格付け第五位のランスン=スピアードさん、『六の槍』は『セイリュウ騎士団』格付け第七位のユミル=キュドウさん、『七の槍』は『特命チーム』ゼニータさんで、一人ずつ紹介されるたびに、大きな歓声が湧き上がっていた。
この『セイリュウ七本槍』の紹介のときには、一際歓声が大きく地響きのようになっていた。
もちろん『光柱の巫女』や『神獣の巫女』の紹介の時にも、大熱狂状態になったわけだが、『セイリュウ七本槍』に対する熱狂具合が一番だったかもしれない。
この領では、『セイバーン公爵とセイリュウ七本槍』という英雄譚が有名なだけに、その再来とあっては、人々は熱狂するのも当然だろう。
ちなみに、『光柱の巫女』も『神獣の巫女』も『セイリュウ七本槍』も、紹介はあの絶叫アナウンサーことシャイニング=マスカット氏が行ってくれたので、紹介の仕方もうまかったし煽り効果も抜群だった。
最高の盛り上がりだった。
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