894.記念式典、開催。
翌朝、みんなで朝食をとっている。
この席で、昨日の反乱事件についての追加報告がなされた。
ちなみに昨夜、セイバーン城に戻ったときには、晩餐会はお開きになっていて、仲間たちが俺の帰りを待ってくれていた。
コバルト城及び『ヒコバの街』で起きたことを、ユーフェミア公爵が説明してくれ、皆驚いていた。
何よりも衝撃的な情報だったのは、新たに神獣キリン様が力を貸してくれたことだ。
『スピリット・ブロンド・ホース』のフォウが『化身獣』となり、元『怪盗イルジメ』のオカリナさんが『神獣の巫女』となったわけだが、みんな驚くとともに祝福してくれていた。
特に、オカリナさんの前世からの親友であるハナシルリちゃんは、すごく喜んでいた。
大親友が同じ『神獣の巫女』に選ばれたのだから、それは嬉しいよね。
朝食会での新たな報告は、反乱の首謀者であるボンクランド=コバルトの息のかかった二つの商会の摘発についてだった。
昨夜の時点で『特命チーム』のゼニータさんとルセーヌさんが摘発に向かっていたが、それぞれの会頭や幹部を無事に拘束できたとのことだ。
二つの商会は、コバルト侯爵領で一、二を争う大きな商会だったようだ。
暗殺されたコバルト侯爵とズブズブの関係で、賄賂の提供で利権を与えられ、大きくなった商会だったらしい。
だが今回の反乱では、コバルト侯爵を裏切り、息子のボンクランドと手を組んだようだ。
二つの商会は、コバルト侯爵領内の全ての市町に支店があるらしく、今後、各支店も摘発するとのことだ。
会頭と幹部が、反乱計画に深く関わっていたので、二つの商会とも取り潰しになり資産は没収されるらしい。
会頭と幹部には反逆罪が適用され、極刑に処されるだろうとのことだ。
一番気になっていた『マットウ商会』から仕入れた爆弾については、ボンクランドに渡したものと海賊に渡したもので全てだったとのことだ。
もう他にはないと考えて良いらしい。
それがはっきりしたのが、一番の朗報だ。
領内の貴族や役人の取り調べについては、これから本格的に行われるとのことだ。
尋問を担当するのは、第一王女で審問官のクリスティアさんだが、『特命チーム』も引き続き協力をするようだ。
今日は、いよいよ『領都セイバーン』で記念式典が行われる。
昨夜コバルト侯爵が暗殺されるという大事件が起きたが、予定通り実施するとのことだ。
反乱事件の全容は解明されたので、問題ないという判断のようだ。
◇
午後になって、俺はパレードをしている真っ最中だ。
記念式典は午前中に終わり、午後からはパレードで街中を練り歩いているのだ。
記念式典は、犯罪組織である『正義の爪痕』を壊滅させた戦勝記念と、『神獣の巫女』と『化身獣』が出現したことを祝う式典である。
『希望の式典』という名称になっていて、『神獣の巫女』と『光柱の巫女』のお披露目も行われた。
式典はつつがなく執り行われ、予定通り昼前には終了した。
式典は、セイバーン城の南門の城壁の上にある式典用のステージで行われた。
事前に告知されていたので、ステージの周囲につくられた広場には、多くの領民が集まっていた。
最初にユーフェミア公爵から犯罪組織である『正義の爪痕』を壊滅させたという宣言がなされた。
そして『正義の爪痕』がどれほどの脅威だったかということが簡単に説明され、改めて勝利宣言が出された。
この戦勝を祝して、集まった領民とともに勝鬨があげられた。
ちなみに勝鬨は、ユーフェミア公爵が「セイバーン!」と声を上げると、領民が「オウ!」と言うのを三回繰り返すというものだった。
なかなかの大迫力だった。
そして『正義の爪痕』の壊滅に貢献したものに対して、『セイバーン青槍勲章』が授与されることも発表され、該当者の名前が読み上げられた。
今回与えられる勲章は、セイバーン公爵領や領民を守った場合に与えられるものらしい。
『コロシアム村』での防衛戦で中心的な役割を果たした兵士や一般の有志に対して、広く与えられるとのことで、かなりの人数が該当していた。
この中には、セイリュウ騎士たちはもちろん入っているし、『高貴なる騎士団』の面々やビャクライン公爵なども入っていた。
他の領の臣下や領主に勲章を与えること自体は、問題ないらしい。
俺の仲間たちにも、広く与えようとしてくれていたが、数がすごいことになるし、線引きが難しいので固辞した。
ただ、仲間たちの代表という感じで、戦闘において中心的に活躍したメンバーの中で人型のメンバーだけに、勲章をいただくことにしたのだ。
もっとも人型メンバーの中でも、妖精族であるニアとサーヤは除外された。
『ドワーフ』のミネちゃんも同じである。
妖精族は、通常人族の爵位や勲章は受けないし、与える方も不敬に当たるとして控えるのが慣例となっているようだ。
ということなので、実際に勲章をもらったのは、俺、リリイ、チャッピー、兎亜人のミルキー、アッキー、ユッキー、ワッキー、『魚使い』のジョージだけということになった。
勲章については、別にみんな欲しいわけでもないので、不平不満などは一切なかった。
ちなみに勲章は、本当に名誉を表すもので、家宝になるというような価値はあるが、目に見える具体的なメリットのようなものはないらしい。
ただ勲章とともに褒美として金貨が与えられるので、それが具体的なメリットと言えるかもしれない。
今回の場合は、一人当たり金貨三百枚……三百万ゴル与えられるとのことだ。
もし当初ユーフェミア公爵が考えていた通りの人数で、俺の仲間たちに勲章が与えられていたら、それだけで相当な金額になっていただろう。
いくら財政が豊富なセイバーン領といえども、かなりの負担になったのではないだろうか。
その意味でも、数を絞ってもらって正解だったと思う。
それでも五十人ぐらい受勲していたので、叙勲に伴う祝金だけで一億五千万ゴルぐらいにはなっていると思う。
そして何故か俺については、特別にもう一つ勲章が与えられた。
これは事前に聞いていなかったので、俺にとってはサプライズ的な受勲だった。
そして公衆の面前でのことなので、当然断ることはできなかった。
『セイリュウ勲章』という最高位の勲章を、授与されてしまったのだ。
セイバーン公爵領に大きく貢献したり、危機を救ったりという場合のに与えられる最高ランクの勲章で、千二百年続くセイバーン公爵領の歴史の中でも、四人目という快挙らしい。
そして何故か、すべての叙勲の代表という意味も含め、俺だけが人々の前でユーフェミア公爵から勲章のメダリオンをかけられた。
観衆は、大いに沸いていた。
『シンオベロンコール』が、沸き起こり、しばらく続いてしまい、俺は苦笑いしながら人々に手を振るしかできなかった。
微妙にいたたまれない感じだった。
こういう時に乗り切れないんだよね。
特に今回は、完全に一人だったし……。
それから最高勲章を授与された俺に対する褒美の祝金は、なんと一億ゴルだった。
そんなに奮発してくれなくてもよかったのだが……。
まぁ歴史上四人目の快挙ということもあるし、俺の仲間たちの活躍全体に対する褒美という意味も込めてくれたようだ。
今回俺に与えられた祝金は、『コロシアム村』で活躍してくれた『フェアリー商会』のスタッフや『聖血鬼』のみんなや『舎弟ズ』のみんな、俺の仲間たちに分けようと思っている。
なんとなくだが……俺がそうすることを見越して、ユーフェミア公爵は祝金を多くしてくれたのかもしれない。
勲章をいただく人数は絞ったが、祝金を分配することによって、貢献してくれたみんなの労をねぎらうことができるからね。
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