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862.前倒しで始まった、食のコンテスト。

 翌々日の午後、俺たちは『領都セイバーン』に来ている。


 いよいよ記念式典が明日開催される。

『正義の爪痕』を壊滅させたことの戦勝記念と『神獣の巫女』と『化身獣』の出現を祝う記念の式典だ。


 今夜には、領城で貴族を集めた晩餐会も開催される。

 俺もそこに出なければいけないので、少し早めに訪れたのだ。


 そしてもう一つの目的は、記念式典と同時に開催される食のコンテスト『美味い屋台決定戦! 屋台一番グランプリ』の状況を確認するためである。


 明日の記念式典と同時に始まり、コンテスト自体は明日、明後日と三日間で行われることになっている。


 だが、予定を繰り上げて、本日の午後から始めることになったのだ。


 これはコンテストに参加を希望した屋台の店主や商会の担当者が、準備ができているので、営業を始めさせてほしいと申し出てきたからだ。


 そこで参加者全員に確認したところ、今日の午後からならみんな始められるという確認が取れ、急遽前倒しで始めることにしたのである。


 このコンテストの運営を依頼されている『フェアリー商会』と、産業振興執務官という名の『フェアリー商会』のサポート要員と化している文官のシャイニング=マスカット氏と打ち合わせの上、決定したのだ。

 シャイニングさんは、俺が友達になってしまったナルシスト貴族シャイン=マスカット氏の弟で、あの絶叫アナウンサーである。


 彼はさっきすでに、一仕事終えている。

 正午から始まった『美味い屋台決定戦! 屋台一番グランプリ』の説明アナウンスをしてくれたのだ。


 拡声の魔法道具を使った彼の熱狂的な語りから、コンテストが始まったのである。


 投票の仕組みを説明していただけなのだが、彼の煽るようなアナウンスで、一気にお祭り気分が加速していた。


 既に領都の人々は、すっかりお祭り気分だったので、前倒しで始めてよかったかもしれない。

 屋台には、すぐに人だかりができていた。


 ちなみに投票の方式は、運営事務局に札を提出する方式で、販売数量が多い屋台が勝つというかたちになっている。


 具体的には、屋台で商品を購入すると、一緒に商品名と屋台名を書いた短冊状の札を渡される。


 これをコンテスト会場に何箇所か設置された投票所に持っていくと、札一枚につき飴一つと交換できるという形式になっている。


 飴と交換できるので、ほとんどの人は、札を持ってきてくれるわけである。

 投票率というか、札の回収率を上げるための作戦なのだ。


 識字率の問題があるので、何かを書かせるとかそういう複雑な事はせずに、食べたところでもらった札を運営事務局に出せば、飴がもらえるという方式にしたのである。


 この国では、飴はほとんど流通していないようなので、飴がもらえるだけでみんな大喜びなのだ。


 実はこのために、頑張って飴を作ったのだ。


 まぁ頑張ったといっても、簡単なべっこう飴を作っただけなんだけどね。

 串につけて、ペロペロキャンディーみたいにしたのだ。


 砂糖は貴重なので、ふんだんに使われたべっこう飴は、老若男女問わず喜んでもらえると思う。

 仲間たちに食べさせても、大評判だったのだ。


 『フェアリー商会』の屋台スタッフは、ほとんどのメンバーが『コロシアム村』からの応援スタッフだ。


 急遽参加することになった『クレープ』の屋台は、怪盗の三人……ダイスくん、イシカさん、ミーネルさんが運営してくれている。


 『怪盗イルジメ』ことオカリナさんは、コバルト侯爵領に『コボルト』の里の情報を調査しに行っているとのことだ。


 コバルト侯爵領に流出した爆弾の行方については、引き続きゼニータさんとルセーヌさんたち『特命チーム』が捜索している。

 だが、まだ見つけられていない状況のようだ。


 コンテストに参加してくれた屋台には、肉串の屋台がかなり多い。

 やはり屋台の花形と言えば、肉串なのだろう。


 ただコンテストに出展する肉串は、ただの肉串ではなく独自の工夫を凝らしたものばかりだ。


 独自のつけだれを考案し、そこに漬けた肉を焼くというものが多い。

 どれも香ばしく、食欲をそそる匂いを漂わせている。


 またつけだれの効果で、柔らかくなっていたり、タレが染み込んでいて独自の味わいを出している肉串が多く、どれも人気なのだ。

 肉串だけを食べ比べして歩いても、面白いかもしれない。


 野菜や肉がたっぷり入ったスープを出している屋台も多い。

 その中でも行列ができていたのは、串に刺して煮込んだ肉と、ゆで卵がまるまる入ったスープだった。

 少しおでんっぽい感じだった。


 それから、お米を使った甘酒とお粥の中間のような……食べ物とも飲み物とも言い難いものが出ていた。

 ほんのりと甘さがある素朴な味なのだ。


『米スープ』と呼ばれている料理らしく、庶民の家庭料理の朝食として、一般的なものらしい。

 お酒を飲み過ぎた後にも良いと言われているようだ。


 リリイ、チャッピー、『ドワーフ』のミネちゃん、ゲンバイン公爵家長女のドロシーちゃん、ピグシード家の姉妹ソフィアちゃんとタリアちゃん、『ホムンクルス』のニコちゃんは、早速屋台巡りに行っている。


 引率は、人型サイズに大きくなったニアさんと、『魔盾 千手盾』の付喪神フミナさんと、『高速飛行艇 アルシャドウ号』の付喪神エメラルディアさんだ。


 フミナさんは大盾を背負い、エメラルディアさんは大きな舵輪を背負っているので、普通ならかなり目立ってしまう。

 だが、すでにかなりの人混みでお祭り騒ぎ状態なので、何とかなっているようだ。

 まぁ何か言ってくる人がいたら、冒険者ということにするはずだから、大丈夫だと思うけどね。


 おそらく、ミネちゃんを中心にすごい勢いで食べちゃうと思う。

 下手したら、今日だけで全てのメニューを制覇してしまうかもしれない……。


 ある意味……人気の屋台メニューが何かを調べるマーケティング担当のような存在なので、重要な役割を担っているとも言える。

 密かに、美味しい屋台のランク付けをしてもらう予定なのだ。


 行き交う人々は、ほとんどがこの領都に住んでいる人だと思うが、他の市町から訪れている人や、他国から訪れている人もそれなりにいるようだ。






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次話の投稿は、31日の予定です。


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[一言] >俺が友達になってしまったナルシスト貴族シャイン=マスカット氏  なってしまったっていう辺り内心かなり複雑なんだな。 > まぁ頑張ったといっても、簡単なべっこう飴を作っただけなんだけどね。…
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