853.転生して、再会。
『怪盗イルジメ』ことオカリナさんのステータス情報を、勝手に『波動鑑定』させてもらっているが、今まで見ただけでもかなりすごい。
レベルは52もあるし、『通常スキル』をかなり所持している。
そして彼女にも、やはり『固有スキル』が発現している。
少し……ハナシルリちゃんっぽい感じのスキル名だ。
『愛の力』という『固有スキル』なのだ。
『固有スキル』は、その人の魂の願望の表れである可能性が高いということになっているので……愛の力を求めていたということだろうか……?
愛に飢えてたってこと……?
まぁ考えるのは野暮なので、やめておこう。
愛の力を強く信じていたという、純粋な人だったのかもしれない。
それなら恥ずかしい感じじゃないよね。
うん、そういう風に考えてあげることにしよう。
『愛の力』には、『リトルハート』『ビッグハート』『ハートズッキュン』『ハートブレイク』という四つの技コマンドがあるようだ。
『リトルハート』という技コマンドは、任意の対象者の『気力』を上げることができる支援コマンドのようだ。
どうも……親指と人差し指の先で作った小さなハートからエネルギー波のようなものを出すらしい。
まるでラブコメの仕草みたいで……微妙に恥ずかしいような気もするが……女の子だから大丈夫なのかな……。
『ビッグハート』という技コマンドは、任意の対象者をハートの檻に閉じ込めて魅了状態にすると説明されている。
これも両手の指を使って、大きなハートを作る仕草をして、そこからエネルギー波が発射されるらしい。
やはりラブコメの仕草みたいで、微妙な感じだが……使い手が女性であることが救いだ。
俺とかジョージがそんな仕草をしたら……うーん、ダメだ、想像してしまった。
気持ち悪い……考えるのはやめよう。
ナイスバディーで超絶美貌のオカリナさんから、この『リトルハート』や『ビッグハート』が繰り出されたら、その仕草を見ただけで悩殺されてしまいそうだが、歳をとっておばあさんになってからこの仕草をするのは…… 恥ずかしくないかなぁ……。
まぁ可愛いおばさんということで、いいのかもしれないが……。
というか……そんなことを俺が考えてもしょうがないな……。
『ハートズッキュン』という技コマンドは、指鉄砲から魔力弾を発射し、相手を麻痺状態で動けなくするらしい。
『ハートブレイク』という技コマンドは、任意の対象者の『気力』を大幅に下げ、やる気をなくさせることができるらしい。
指を鳴らして発動させるようだ。
なかなかに面白い『固有スキル』だ。
直接の攻撃コマンドはない感じだが、怪盗をやるにはかなり便利なコマンドではないだろうか。
技コマンドは、仕草に特徴があるので、スーパーモデルのようなオカリナさんよりも、“残念さん”であるニアさんや、ノリノリなハナシルリちゃんの方が、似合いそうな感じだ。
◇
『怪盗イルジメ』ことオカリナさんとの対面が終わり、打ち合わせも解散となった。
そこで、この屋敷をオカリナさん達に案内するという名目で連れ出した。
そして、少し尋ねたいことがあると言って、オカリナさんだけを俺の執務室に呼び出した。
部屋には、オカリナさんと同じ『後天的覚醒転生者』のジョージと『先天的覚醒転生者』のハナシルリちゃんと、ニアがいる。
見た目は四歳児中身は三十五歳のハナシルリちゃんは、ニアがうまいこと言って連れ出してくれたのだ。
「オカリナさん、実は謝らなければならないことがあります。失礼と思いましたが、勝手にあなたのステータスを『鑑定』させてもらいました。ステータス偽装していたのも、わかっています。そして、私の特殊な鑑定の力で、本来のステータスも確認させてもらいました。『後天的覚醒転生者』であるということを確認しています。あなたの話を聞いて、異世界からの転移者もしくは転生者ではないかと思ったので、確認させてもらったのです」
俺はそう言って、オカリナさんに頭を下げた。
「そうだと思いました。見られている感じがしていましたから。私を個室に呼び出したということは……ここにいる皆さんも、異世界から来た皆さんなんですね?」
オカリナさんは、あまり動揺することなく、逆に尋ねてきた。
「はい、そうです。ニア以外は、みんな異世界から来ています」
「最初からそうじゃないかと思っていました。妖精女神様は別としても、人の身でありながら妖精女神の相棒として大活躍をしているあなたの噂を聞いたときに、異世界から来た人ではないかと思ったのです。それを確かめる為もあって、ここに来たのです」
俺の答えに、オカリナさんは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「そうだったんですか。さすが聡明ですね。私は、多分ですが偶発的にこの世界に転移してしまった『自然転移者』と呼ばれる者だと思います。こちらにいるジョージは、あなたと同じくある時突然、前世の異世界の記憶を取り戻した『後天的覚醒転生者』です。そしてこのハナシルリちゃんは、生まれた時から前世の異世界の記憶を持っている『先天的覚醒転生者』です」
俺は、ジョージとハナシルリちゃんを簡単に紹介した。
二人とも頭を下げただけで、まだ言葉を発していない。
ジョージはいいとしても、普段ならまくしたてそうなハナシルリちゃんが、なぜか……ただ黙って、じーっとオカリナさんを見ている。
さっきみんなで話をしていた時も、そうだったんだよね。
「そうなんですね。皆さんも私と同じ……異世界の日本から来たんでしょうか?」
オカリナさんが、少し嬉しそうなトーンになった。
「ええ、多分そうだと思います」
「そうなんですね。日本人に会えて、ほんとに嬉しいです。実は異世界人に会えないかと思って、情報を集めていたんです。過去の文献には、異世界から来たと思われる英雄や勇者などの話があるから、現代にもいるんじゃないかと思ってたんですよ。こうして皆さんと会えて嬉しいです」
オカリナさんは、そう言って満面の笑みになった。
そんなオカリナさんの前に、ハナシルリちゃんが進み出た。
腕組みしながら、オカリナさんの顔をじーっと見ている。
見方によっては……喧嘩を売っているように見えるが……大丈夫だろうか……。
それに釣られるように、なぜかオカリナさんもハナシルリちゃんの顔をじーっと見ている。
二人から殺気のようなものは感じないが……なにこの微妙な空気感……。
「オカリナさんて……もしかして…… 梨那?」
今まで一言も発していなかったハナシルリちゃんが、口を開いた。
「え、……ハナシルリちゃんて……もしかして……瑠璃?」
ハナシルリちゃんのよくわからない問いかけに、オカリナさんが目をうるうるさせながら訊き返した。
なに、この展開……どういうこと!?
「そ、そうよ、瑠璃よ、私は、葉梨瑠璃よ……」
ハナシルリちゃんが、涙声だ。
「瑠璃なの!? 瑠璃、瑠璃なのぉ……わぁぁぁん、わぁぁぁ」
オカリナさんは、叫ぶようにハナシルリちゃんの名前を呼ぶと、抱き上げそして強く抱きしめた。
号泣している。
ハナシルリちゃんも、オカリナさんの首に抱きついて、泣きじゃくっている。
いまいち事態が飲み込めないが……もしかして、二人は知り合いだったってこと?
聞きたいことが山積みだが、二人が号泣状態だから、落ち着くまで見守るしかない。
ジョージもそう思ったらしく、俺の顔を見て頷いている。
そしてニアさんは、泣いている二人を見て、心配するどころか、キタコレみたいな感じの期待感満載の笑みを浮かべている。
どうも『怪盗イルジメ』さんは、またもや俺たちを驚かせてくれるらしい……早く話を訊きたいなぁ……。
読んでいただき、誠にありがとうございます。
ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。
評価していただいた方、ありがとうございます。
次話の投稿は、22日の予定です。
もしよろしければ、下の評価欄から評価をお願いします。励みになります。
よろしくお願いします。




