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850.王家の、血筋。

 「迷宮都市『メリュウド市』に住んでいたということは……もしかして……十四年前に起きたあの『魔物流出連鎖暴走(スタンピード)事件』の時にいたのですか?」


 国王陛下が少し表情を曇らせながら、オカリナさん尋ねた。


「はい、おりました。その時に両親をなくしました。知人も亡くし、天涯孤独になったんです」


 オカリナさんは、笑顔で答えた。

 つとめて明るく答えたようだ。


「そうだったのですか……。大変だったね。あの事件では……多くの人々が命を落とした……」


 国王陛下は、沈痛な表情になり言葉を詰まらせた。



 どんなことが起きたのか、よくわかってない俺たちに、ユーフェミア公爵が説明してくれた。


 十四年前に、魔物たちが暴走状態で迷宮から溢れ出すという大事件が起きたのだそうだ。


 迷宮内でいくつかの冒険者パーティーが『連鎖暴走(スタンピード)』を引き起こし、出口に向かって逃げていたのが合わさって大規模な『連鎖暴走(スタンピード)』になって、街に溢れ出たのだそうだ。


 迷宮入口を警備している守備隊では、抑えられない物量とスピードだったらしい。


 『連鎖暴走(スタンピード)』が起きた初期の状態を知っている者が、全て死亡した為に、いまだに本当の原因はわかっていないとのことだ。


 迷宮都市『メリュウド市』の迷宮は、『メビウス大迷宮』と呼ばれている規模の大きな迷宮らしい。

 迷宮自体のことも詳しく解明できておらず、中層と呼ばれているエリアまでしか到達できた記録がないそうなので、迷宮内で起こった『連鎖暴走(スタンピード)』の本当の原因の調査などは、そもそも無理なのかもしれない。


 迷宮入口がある場所を中心に、『メリュウド市』の約半分の面積が壊滅状態になったらしい。


 腕の立つ冒険者や駐留している王国正規軍の迷宮守備隊や衛兵が総動員で対処したらしいが、多勢に無勢で、大被害が出てしまったとのことだ。


 たまたま近くの街にいた『コウリュウ騎士団』や王国正規軍が駆けつけ、何とか魔物を駆逐したのだそうだ。

 現『近衛騎士団』団長のタングステンさんが、当時は『コウリュウ騎士団』団長で、獅子奮迅の活躍で魔物を倒したとのことだ。

『鉄壁のタングステン』という二つ名の通り、『連鎖暴走(スタンピード)』を食い止めたらしいが、到着したときにはすでに大きな被害が出てしまっていたらしい。

『メリュウド市』の住人の二割にあたる二千人の死者が出てしまったのだそうだ。


 その時、成人年齢の十五歳になる目前だったオカリナさんは、突然、天涯孤独の身の上になってしまったらしい。


 そんなことがあり、強くなる為と生活の為に攻略者になったとのことだ。


 その後、二年ほど攻略者をしてレベルを上げて、実力をつけた後に、王都に移り住んだのだそうだ。

 そして虐げられた人々を救うために、『怪盗イルジメ』として義賊働きを始めたらしい。


 ただ怪盗をするために王都に行ったわけではなく、偶然知り合った人たちを助けたい一心で、義賊働きを始めてしまったのだそうだ。



「僭越ですが……師匠の口からは話さないと思いますので……私が勝手に話させていただきます。師匠は、コウリュウド王家の血をひいているです! すみません、師匠、勝手に言ってしまって……」


 突然、ルセーヌさんが爆弾発言をした!

 王家の血をひいている……?


「あなたは、王家の血をひいているのですか!?」


 国王陛下が驚きの声を上げた。


 王妃殿下やユーフェミア公爵も、衝撃を受けた表情だ。


「ルセーヌ! まったく……あなたって子は……。すみません、陛下、お気になさらないでください」


 オカリナさんは、ルセーヌさんをひと睨みした後に、陛下に頭を下げた。


「いいや、そういうわけにいかないよ。大丈夫、気にしないで話してください。代々続く王家だから、王家の血筋に繋がる者はかなりいるから、それほど珍しいことじゃないんだよ。上級貴族なんか、ほとんどは遡ればどこかで血筋が繋がっているしね。ただ……貴族以外にいるのは珍しいと思うけどね」


 国王陛下は、オカリナさんが安心するように、落ち着いた口調で微笑みを浮かべながら言った。


「はい。実は……母方の曽祖母が……王女だったようです。四代前の国王陛下の第五夫人の末娘で第十二王女だったそうです。名誉爵位を得て、王族から独立したみたいです」


 オカリナさんは、少し話しづらそうにしている。

 怪盗をしていた自分が、王族の血を引いているとは、さすがに言いづらかったのかもしれない。


 それにしても……曽祖母つまりはひいおばあさんが、王女だったとは……。

 なにこの衝撃の展開……。


「名誉爵位を得て……王族から独立……? それって……」


 国王陛下は、衝撃を受け、言葉を詰まらせながら、ユーフェミア公爵に視線を流した。


「もしかして……あんたの曽祖母って……ナナリシア王女!?」


 ユーフェミア公爵が、いつになく動揺した感じで尋ねた。


「はい。そうなんです」


「なんと! 英雄王女……ナナリシア王女の血を引いていたんですか!?」


 国王陛下が、更に驚いている。


「はい。曽祖母の事は、詳しくは聞いていないのですが、王族でありながら迷宮攻略者になった。そして『シルバーの攻略者』になったということは、聞いています……」


 オカリナさんは、国王陛下とユーフェミア公爵たちの驚き様にかなり戸惑っているようで、すごく言い辛そうだ。


 それはそうと……言ってる内容がすごい……。

 王女なのに、『シルバーの攻略者』って……なにそれ!?

 すごい女傑じゃないか!

 王家の女性って……昔からすごかったのか……。


 さっき聞いた話からすれば、『シルバーの攻略者』は数十年に一組出るか出ないかというレベルの攻略者で、実質上最高ランクの攻略者じゃないか……。

 王女なのに、攻略者になって、その上『シルバーの攻略者』にまで昇りつめたってことか……すご過ぎる!


 まぁ元第一王女のユーフェミア公爵や現第一王女のクリスティアさんを見てれば、大きくは驚かないけどね……。





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次話の投稿は、19日の予定です。


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[一言] > 王家の女性って……昔からすごかったのか……。  オカリナさんへの反応を鑑みるに、生前にグリムさんと鉢合わせていたらやばかったな(美熟女センサー的な意味で)  ……いや付喪神として復活する…
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