841.晩餐会への、招待。
この基地は、奇しくも『勇者力研究所』という名前の通りに、研究を主体とした、そして生産を主体とした基地として活用することになった。
俺たちの公式秘密基地第三号に、決定したと言っていいだろう。
ちなみに第一号基地は、当然現在使用中の『竜羽基地』だ。
セイバーン公爵領とピグシード辺境伯領の領境になっている竜羽山脈にある。
第二号基地は、ヘルシング伯爵領の領都ヘルシングの南西の森にある『翼森基地』だ。
『翼森基地』は、俺の眷属『聖血鬼』で、領の執政官であるキャロラインさん直属の『聖血鬼』部隊と、『聖血生物』たちの基地となっている。
『勇者力研究所』の研究員の主力になるのは、先ほどユーフェミア公爵から提案があった『正義の爪痕』の首領のアジトにいた研究員たちだ。
首領のアジトで拘束した研究者十五人のうち、十二人は拉致されて無理矢理研究させられていた人たちだった。
その人たちを研究者として、『フェアリー商会』で雇用する予定なのだ。
その人たちを中心にして、『フェアリー商会』に研究開発部門を新設し、この基地を運営するのである。
家族と共に暮らしたい場合は、家族ごと呼び寄せて、ここで暮らせるようにしたいと思っている。
それから……能力だけ見れば使えそうな人材として、生きて拘束されている幹部たちがいる。
『武器の博士』や『薬の博士』、今回捕まえた『魔物の博士』や『酒の博士』といった連中だ。
この者たちは予定通り、最終的には王都で公開処刑される。
多くの命を奪っているから、処刑は免れない。
ただ、しばらくは情報を引き出したり、技術を引き出すために、犯罪奴隷として拘束しておくということになっている。
ちなみに、ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員であるドロシーちゃんが運営している『償いラボ』にも、『正義の爪痕』に関わった者たちがいる。
『道具の博士』の助手だった者たちだ。
この者たちは、そのまま『償いラボ』で働いてもらうことになった。
合流させて、一つにした方が良いのではないかという意見も出た。
だが、彼らは多忙なドロシーちゃんの助手という意味合いが強い。
それを考えると、現状のままの方が良いだろうとの判断になった。
ちゃんと機能してくれているようだしね。
今後、ここで研究に携わってくれる人は、『フェアリー商会』が全面的にバックアップしようと思っている。
『フェアリー商会』の社員になってくれた人だけでなく、合同で研究にあたる王立研究所の特別チームの人たちについても、同様に面倒を見るつもりだ。
地上部分に住宅も提供し、買い物や息抜きは、近くの『ウバーン市』に行けるように、定期的にフォローするつもりだ。
王立研究所の特別チームが到着し、『フェアリー商会』と合同で研究する体制が整い次第、生産設備の稼働テストを行うことにした。
今すぐに稼働させてみたい気もするが、研究者たちが集まってからやった方がいいということで、今回は我慢することにした。
◇
『コロシアム村』の屋敷に戻り、みんなで昼食をとりながら、今後の予定について少しだけ打ち合わせをした。
ちなみに今日の昼食は、キャベツたっぷりの『とんかつ定食』だ。
俺の知っている飲食店で食べる『とんかつ定食』は、キャベツとご飯と味噌汁のお替りが自由だったりするが、俺の仲間たちは、なぜかとんかつ自体がおかわり自由状態だ。
当然のことながら、今後オープンする予定のとんかつ専門店『かつかつ』では、とんかつの『お替り自由』はやらないけどね。
キャベツ、ご飯、味噌汁の『お替り自由』も、やるかどうか悩み中だ。
この世界の人は、大食漢が多い感じだし、いつもフードファイターのミネちゃんを始めとした食いしん坊な仲間たちを見ているので、『お替り自由』にしたら赤字になる予感しかしないのだ。
まぁ……お腹いっぱいになるのは、幸せなことだから、基本的には『お替り自由』制度は導入しようと思っているけどね。
そして、いつか食べ放題のお店もやりたいと思っている。
俺は、元の世界で食べ放題……バイキングが大好きだった。
あのワクワクを楽しみたいのだ。
様々な料理を選んで食べられるあのワクワクを、この世界の人にも味わってもらいたいと思っている。
ミネちゃんクラスの……フードファイター的なお客さんがいたら、かなり厳しいと思うので、慎重に考える必要はあるけどね。
大型店にして客数を増やせば、大食漢のお客さんがいても、平均されるから、何とかやれるかもしれないけどね。
そもそも俺の周りの人たちが大食い過ぎるというだけで、実際やってみたら赤字にならず運営できる可能性もあるしね。
「三日後は、いよいよ領都で『正義の爪痕』壊滅と『神獣の巫女』と『化身獣』出現を祝う特別式典が開催される。その前夜……つまり明後日の夜には、領城で領内の貴族や他領の来賓を招いて晩餐会を執り行うことになった。すまないが……ニア様とグリムには顔を出してもらいたい。なるべく堅苦しくならないように、立食形式にしたから我慢して出ておくれよ……」
ユーフェミア公爵が、珍しく申し訳なさそうな顔で俺たちに言った。
本当は、そういう面倒くさい場には出たくないのだが、ユーフェミア公爵からのお願いなので断れるはずもなく……苦笑いしながら了承した。
俺の仲間たちについては、自由参加でいいということだった。
ただ晩餐会に参加しないとしても、別室を用意して同じように料理を提供してくれるということだった。
非常にありがたい気遣いだ。
セイバーン公爵領内の全ての貴族を集めた盛大な式典にするようなので、前夜の晩餐会にも全ての貴族が参加するらしい。
セイバーン公爵領は、かなり広い。
それゆえに、移動するだけでも大変で、貴族が一堂に会することは、ほとんどなかったそうだ。
だが今回は、ユーフェミア公爵とその三姉妹……シャリアさん、ユリアさん、ミリアさんが転移の魔法道具を持っているので、手分けして各市町から貴族たちを連れてくるとのことだ。
その準備として、既に手分けして各市町に足を運び、転移の魔法道具に転移先として登録を済ませてあるらしい。
そして、隣領の領主には、招待状を送っているとのことだ。
ただ儀礼的なもので、可能なら来てくださいという程度のものらしい。
もっとも、当然のことながら、ピグシード辺境伯領のアンナ辺境伯たちやヘルシング伯爵領のエレナ伯爵たちは、参加することになっている。
もちろんビャクライン公爵一家や、国王陛下たちも参加するとのことだ。
というか……国王陛下とビャクライン公爵が、誰よりも楽しみな感じのオーラを出している……子供か!
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