803.犬馬車に、乗ろう!
出来上がったゴーレム馬車にするための素体『犬馬車』に、早速、『知性球』を組み込んみる。
犬型パーツの頭の部分が開閉できるようになっていて、そこにこの魔法AIを入れられるようになっているのだ。
大きさがバレーボールくらいの大きさなので、脳的な感じでセットするイメージだ。
魔法AIの起動のための発動真言を唱える。
「起動!」
そう言って、俺は犬の頭の部分に手を置いて、魔力を流し込む。
うまく魔力を吸い上げだしたので、魔法AIは起動したようだ。
そして、この素材全体に魔力と魔法AIの魔法神経のようなものが行き渡る感覚が、なんとなくわかる。
多分うまくいったと思う。
確認のため『波動鑑定』してみると……『名称』が『自律型人工ゴーレム 犬馬車』となっていた。
今回も犬馬車という名称が、そのまま採用されたようだ。
今度は人工ゴーレムとして起動させるための発動真言を唱える。
「ゴーレム起動!」
特に動きはないが、なんとなく起動したことはわかる。
試しに、指示を出してみる。
「ゆっくりと前に進め!」
すると左右四本ずつ合計八本の足を使って、ゆっくりと前に進んだ。
車輪も一応四つ付いているのだが、走行を補助するパーツだ。
また車体を安定させるという役目もある。
四つの車輪が車体を安定させ、基本推進力は八本の足という感じなのである。
基本動力は、あくまで足なのである。
ただ車輪があることによって、スピードを出しやすくなるという機能があるのだ。
「車輪を回転させろ!」
試しに車輪だけを回転させるように指示を出してみたら、ゆっくりと車輪が回転し動き出した。
どうも……多足生物用の魔法AIではあるが、素体が持つ機能は活用できるようなので、車輪を回すということはできるみたいだ。
ただこの素体には、ブレーキ機能をつけていないので、足を使って減速することになる。
この感じなら、自動車のようなものも作れてしまうかもしれない。
まぁ『マシマグナ第四帝国』には『操縦型人工ゴーレム』があったわけで、それは飛行機や自動車みたいなものだろうから、やる気になれば作れるってことだよね。
この犬馬車は、『歩け』『走れ』『バックしろ』『止まれ』『待て』などの指示で動かせる。
俺の仲間たちの移動手段として使えそうだ。
まぁ目立ちすぎるので、普通には使いにくいけどね。
逆にパレードの時に使えば、かなり目を引いていいかもしれない。
『領都セイバーン』での式典で、パレードもあるみたいだから、これを使ったらいいかもね。
俺はパレード用のオプションパーツとして、四角い座席ユニットの天井部分に、追加で柵を取り付けられるようにした。
将来的には、ほんとにバスのような使い方で普及できるかもしれない。
長距離乗合馬車の事業で使うのも、ありかもしれないなぁ。
車掌というかたちで、指示を出す人間が添乗するという運用になるだろう。
起動テストも、稼働テストも問題なく終了し、オプションのパーツも作り上げた。
仲間たちに見せるのが楽しみだ。
子供たちは大喜びするだろう。
もう夕方を過ぎて、夕食の時間が近い。
みんな『コロシアム村』の屋敷に戻っているだろう。
俺も戻って、お披露目するか!
◇
俺は『コロシアム村』の屋敷の庭で、先程作った『犬馬車』を『波動収納』から出した。
ここには俺の仲間たちと、いつもの貴族メンバーのみなさんがいる。
魔法AIを手に入れたので、試しに作ってみたという説明をした。
『犬馬車』に使った魔法AIは、『マシマグナ第四帝国』のテスト用第六号迷宮の『ゴーレマー迷宮』で手に入れたものだが、『ゴーレマー迷宮』が生きていたことやダンジョンマスターになったことは『絆』メンバー以外には教えていないので、移動型ダンジョン『シェルター迷宮』で手に入れたと説明した。
移動型ダンジョンである『シェルター迷宮』の存在と、成り行きでダンジョンマスターになってしまったということは、『絆』メンバーでないユーフェミア公爵たちにも情報開示しているので、そこで手に入れたとするのが一番簡単だったのだ。
そして『シェルター迷宮』は、移動と居住空間の使用だけができる『箱船復旧モード』という簡易な復旧が終わり、今後はそのまま迷宮機能の復旧をするという報告もした。
やってみないとわからないが、おそらくすべての機能を復旧するには一年以上はかかるだろうという話も伝えた。
この古代文明の遺産は、俺の戦利品であり、褒賞として与えられているので、みんな普通に報告を聞いただけで、特には何も指摘されなかった。
普通に考えると、国が欲しがると思うのだが……国王を始めそういう欲張った考えはないようだ。
むしろ危険な古代文明の遺物であり、妖精女神の相棒である俺に管理してもらった方が良いと思ってくれているらしい。
俺は、なるべくこの危険な遺物は使わないようにするが、今後悪魔との戦いの中で必要があれば、有効に活用することも考えているという話もした。
それについては、皆賛成してくれた。
特に問題視するとか、使い方に注文を出されるということもなかった。
ただ俺が心配したように、国王陛下やユーフェミア公爵たちも、再度悪魔によるハッキングに合い、悪用されないかという心配を抱いたようだった。
だが、俺がダンジョンマスターとして安全対策もするし、大丈夫だろうという話をして安心してもらった。
皆さんの信頼を裏切らないように、しっかり管理したいと思っている。
そんな感じの報告の間、子供たちが待ちきれない顔をして待っていた。
みんな早く『犬馬車』に乗りたいようだ。
待ちきれずに……ワクワク顔から、よだれ顔に変わりつつある……これ以上は待てないだろう。
「みんなお待たせ、じゃあ今から順番に乗って!」
「「「わーい」」」
俺が声をかけると、子供たちは喜んで一列に並んだ。
今日は『セイセイの街』の『総合教会』の孤児院の子供たちや、一緒に暮らしている元『花色行商団』の亜人の子供たちも来ているので、結構な大人数になっている。
まずは最初に、この子供たちをみんな乗せてあげた。
もちろんリリイ、チャッピー、『ドワーフ』のミネちゃん、ゲンバイン公爵家長女のドロシーちゃん、ピグシード辺境伯家の姉妹ソフィアちゃん、タリアちゃん、ビャクライン公爵家長女のハナシルリちゃんといった、いつもの子供メンバーもだ。
まぁハナシルリちゃんは、子供メンバーといっても中身は三十五歳だけどね……。
『犬馬車』は、背中に乗せている四角い座席ユニットの後ろに扉があって、そこから乗り込むかたちになっている。
入り口は少し高いところに位置しているのだが、犬のしっぽがスロープ状に機能して、そこを歩いて扉に行くことができるのだ。
広幅のしっぽになっているのである。
背中の座席ユニットは、ほぼバスと同じような作りになっている。
マイクロバスくらいの大きさの箱型ユニットなので、今いる子供たちは全員乗れてしまうのだ。
馬車の犬の外見を、子供たちが可愛いと言って喜んでくれていた。
この世界にダックスフンドのような犬種があるのかはわからないが、ダックスフンドに似せて垂れ耳の犬になっている。
ただ実際のダックスフンドよりも、もっと丸みをつけたデフォルメした可愛い感じに仕上がっているのだ。
屋敷の庭の部分を、適当に動くというかたちにしたのだが、それだけで子供たちは大喜びだった。
そしてなぜか……次の順番待ちの先頭にはビャクライン公爵がいる。
少年のように、目をキラキラさせている……子供か!
隣に並んでいるのは……国王陛下じゃないか!
まったく……子供か!
まぁいいけどさ。
……となりの……こくおう……ムフフ。
そういえば…… 魔法AI 『知性球』の人型用を使って、可愛いモフモフの人工ゴーレムを作ろうかなぁ……。
森の妖精トロルのイメージで……そして多分名前は……『自律型人工ゴーレム となりのトロル タイプ大』かな……。
いかんいかん……悪乗りしてしまったみたいだ。
異世界に著作権問題はないとしても……『となりの』をつけるのは、やめたほうがいいかもしれない。
そもそも……この世界の人は、意味がわからないしね。
パロディー……もといオマージュの元ネタを知らないわけだからね。
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