792.機械の殲滅兵から、機械の守護兵に。
俺は、『シェルター迷宮』に関して、迷宮管理システムのシェリーに色々と尋ねた。
まず全体のシステムの復旧については、『悪魔の心臓』による浸食が大きく、一年以上かかるのではないかとのことだ。
これは『再起動復旧モード』をかけても同様らしいので、このままの状態で復旧して行った方がいいだろう。
そしてこの迷宮の機能についても、説明してもらった。
『マシマグナ第四帝国』の本格稼働迷宮の標準仕様が全て備えられていて、魔物のコピー生産をする培養槽や、迷宮に配置する宝物の生産設備もあるようだ。
迷宮内のトラップも様々なものが設置可能らしい。
そして迷宮内において植物を生産し、食料を作ることもできるそうだ。
迷宮に出現する魔物の一種として、簡易型の『自律型人工ゴーレム』の生産設備もあるとのことだ。
迷宮の設備や階層を増設するビルドアップ機能も備えているらしい。
そして迷宮管理システムの稼働の幅を広げるために、本格稼働迷宮では採用されなかった『アバターボディー』のシステムも備えていて、迷宮管理システムは『アバターボディー』を使い実体化して活動することができるらしい。
これによりダンジョンマスターの行動を補佐することや、迷宮外に外出することもできるとのことだ。
『アバターボディー』の生産設備もあるようだ。
今までに俺がダンジョンマスターになったテスト用迷宮の機能が、ほとんど網羅されている。
まぁそのためのテスト用迷宮だったわけだから、当然と言えば当然なんだろうが……。
当時の最先端である第三世代型という移動型ダンジョンだけあって、技術はすべて当時の最新バージョンらしい。
だがこれらのほとんどの機能は、現在は損傷していて修理をしないと使えないとのことだ。
それから迷宮の機能とは別に、あの機械の殲滅兵を作る生産設備があるそうだ。
小型の魔法AI『知性の箱タイプクワトロ』を生産することができ、それを搭載した魔法機械の『自律型人工ゴーレム』を生産可能とのことだ。
『知性の箱タイプクワトロ』は、『マシマグナ第三帝国』の遺物である小型の魔法AI『知性の箱』の技術解析によって、開発された『マシマグナ第四帝国』製の小型魔法AIらしい。
俺が昨日テスト用第六号迷宮『ゴーレマー迷宮』で手に入れた魔法AI 『知性球』とは、違う系統の技術ということだった。
あの機械の殲滅兵は、悪魔によるハッキングのような手段で、人を殺す殲滅兵器になってしまったわけだが、もともとは人を守るために開発されたものらしい。
魔物化してしまった人を倒したり、魔物を倒したりという人々のいわば守護神となるべき存在だったとのことだ。
機械の殲滅兵には、『自律行動モード』と『指令受信モード』があるようで、『指令受信モード』の状態で本体である『シェルター迷宮』がハッキングされたので、すべての機械の殲滅兵が一律に人を殺すという指令を受けて行動していたようだ。
『ロボット三原則』のように、人を殺すことができないプログラムが用意されていたかどうかはわからないが、いずれにしろハッキングされシステムが乗っ取られたのだから意味がなかったのだろう。
この『シェルター迷宮』に『悪魔の心臓』が再度取り付けられて、ハッキングされる状態が起きなければ、人を襲う凶器となる可能性はないだろうとシェリーは言っていた。
そうなると、この迷宮を何が何でも死守することが最重要ということになる。
『自律行動モード』の時に、万が一ハッキングのような形で乗っ取られる事態が発生した場合は、自動で機能停止させるという安全装置があるようだ。
ただこれもハッキングされたときに、その安全装置の作動がハッキングよりも遅ければ、乗っ取られる可能性はあるらしい。
その場合でも、乗っ取られた状態が『シェルター迷宮』にフィードバックされるらしく、すぐに気づくことができるだろうとのことだ。
その時に対処すれば、何体かは乗っ取られる可能性があるが、大惨事にはならないだろう。
また100%成功するかはわからないが、当該個体を『指令受信モード』に強制的に切り替えて、コントロールを取り戻すこともできる可能性があるそうだ。
コントロールの本体であるこの『シェルター迷宮』さえ安全に守れるなら、あの機械の殲滅兵を人々を守る手段として有効活用することも可能かもしれない。
俺の『波動収納』に大量に入っているが、今後のことを考えたら有効活用する方向で検証したほうがいいだろう。
とりあえずこの『シェルター迷宮』は、しばらく魔物の生産もできないので、俺は『波動収納』に回収した機械の殲滅兵を取り出して、この『シェルター迷宮』の防衛用ユニットとして配置することにした。
機械の殲滅兵を改めて『波動鑑定』すると……名称が『自律型人工ゴーレム 魔機マシマロイド MR1型』となっている。
『階級』が『究極級』となっている。
虫の脚のようなものが六本付いていて、人型の上半身には腕が六本ついている。
上半身と頭に該当する部分は、全身甲冑のようなデザインになっている。
大きさは、身長が一メートル以上あって、子供くらいの大きさはあるが、足が虫形になっているのでその分横幅が広い。
出せばすぐに起動するかと思ったが……そういうわけではなかった。
迷宮管理システムのシェリーの話では、この『自律型人工ゴーレム 魔機マシマロイド MR1型』を統制する『シェルター迷宮』の本体機能がまだ不完全なので、現時点では『指令受信モード』で動かすことはできないらしい。
システムの修理が終わるまでは、それぞれを『自律行動モード』で動かすしかないようだ。
『自律行動モード』は、一体毎に単純な行動の指示を口頭で出せるのだそうだ。
あくまで単純な命令しか与えられないようだが。
この迷宮に侵入してくる者を排除しろというような命令である。
ただ、これだと俺の仲間が来たときに、知らずに攻撃される可能性もある。
そう思ってシェリーに相談したところ、魔法AIにはある程度の判断能力があるので、敵対意思や敵対動作で判断させることも可能とのことだった。
『勇者武具シリーズ』に搭載されている魔法AIほどではないにしろ、この魔法AIもそれなりに高性能ではあるようだ。
小型の魔法AIの生産設備が修理を終えて稼働できるようになれば、様々な『自律型人工ゴーレム』が運用できるようになるらしい。
俺が昨日復活させたテスト用第六号迷宮『ゴーレマー迷宮』で手に入れた魔法AI 『知性球』よりも小型化されていて、性能も進化しているらしい。
まぁ『知性球』も、ゴーレム馬車など単純な行動をさせるものには、充分使える性能のものだと思う。
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