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772.親子で、メンバー入り。

 俺たちは、目覚めていた吸血鬼の真祖であり始祖であるドラキューレさんこと、元『癒しの勇者』のヒナさんに、今までのことをかいつまんで説明した。


 ピグシード辺境伯領が悪魔による襲撃を受けたところから、今までに起きた事柄について一通り説明したのだ。


 俺のレベル、限界突破ステータス、固有スキル、絆メンバーのこと、霊域の主であることや魔域である大森林の主であることは、現時点では話していない。


 ダンジョンマスターであることも、『絆』メンバー以外には公開しない情報なのだが、ヒナさんには公開した。

 魔法機械神とも言われていた移動型ダンジョン『シェルター迷宮』のダンジョンマスターであることについては、ユーフェミア公爵たちも知っているので、ここでも明らかにしたのだ。

 そしていくつかのテスト用迷宮のダンジョンマスターであることについても、特別に公開した。

 本格稼働迷宮の第一号迷宮のダンジョンマスターでもあるヒナさんなので、むしろ情報をオープンにした方が、新たな情報が得られる可能性があると考えたからだ。



「なるほどね……情報が多すぎて、私でも整理が追いつかないわね……。やっぱり今回は、今までになく色々ありそうな予感がするわ……」


 ヒナさんが俺の説明を聞いた後に、そんな感想を漏らした。


「お母さん、『吸血鬼』を変性させて『聖血鬼』にするって、凄くない?」


 カーミラさんが、改めてその話を振った。


 今の説明の中で、『吸血鬼』だったキャロラインさんに、その場しのぎで俺の血を飲ませたら、『聖血鬼』に変性してしまったという話をしたのだ。


「確かにそうね。そんなことができるなんてね……。グリムさんは、すごい存在のようね。まだ話してくれていないことがあるんでしょうけど……。別にいいわ。いきなり全てを話してもらえるとも思ってないし。それに、あなたが悪い人じゃないことはわかるしね」


 ヒナさんは、そう言って俺を見つめた。


 確かに全てを話しているわけではないので、俺は苦笑いするしかなかった。


「ねぇお母さん、私思ったんだけど、吸血鬼の人たちが暮らしている場所がいくつかあるじゃない、『聖血鬼』の情報を話して、希望者には機会を与えたらどうかしら?」


「そうね。話を聞く限り『聖血鬼』になった方が、色々と便利そうだし、いいかもしれないわね。血を吸わなくて良くなるのも大きいわね」


 カーミラさんとヒナさんが、そんな会話を始めた。


「あの……『聖血鬼』になってしまうと、自動的に私の眷属になってしまいますし、そもそも吸血鬼の数が減っちゃうと思うんですが、構わないんですか?」


 話が勝手に進んでいきそうだったので、俺はそんな質問を投げかけた。


「そうね……まぁグリムさんの眷属になるということについては、希望者が判断すればいいことだと思うのよね。吸血鬼が減ることについては、私としては全然構わないわ。吸血鬼を増やしたいとは思っていないし、種族を維持したいとも思ってないの。ある意味呪われた種族だしね。不死というのは……いざなってみると、意外と切ないのよね」


「あの……ほんとに吸血鬼族が激減しても、問題とかはないんでしょうか?」


「特にないと思うわ。本当なら私も吸血鬼を増やしたくなかったし。増やしたのは、魔物化を抑えるためにやむを得ずだったのよ。三千年前に、魔物化の兆候が現れた人たちを救うには、それしか方法がなかったの。でも、そのうち統制が取れなくなって、悪事を働く吸血鬼も増えて、無理矢理吸血鬼にされる人たちも増えていったのよ。それを防ぐ仕組みの一つとして『ヴァンパイアハンター』を育成したんだけど。なかなか悪い吸血鬼を駆逐できないのよね。私が一番恐れるのは、“吸血鬼狩り”みたいになって、善良な吸血鬼まで攻撃対象にされることなのよ。だから善良な吸血鬼たちが、希望するなら全然変性してくれて構わないの」


 ヒナさんは、飄々とした感じで答えた。


 確かに、俺が冷静に考えても、『聖血鬼』になった方が、人の血を吸わなくて済むからいいんだよね。

 今平穏に暮らしている吸血鬼のみなさんは、人族とうまく共存しているようではあるけどね。

 献血というかたちで、血を分けてもらっているようだが、その必要がなくなった方がいいと思うんだよね。


 そして、ヒナさんの言う通り『ヴァンパイアハンター』を設置しても、いまだに悪さをする吸血鬼が駆逐できないことを考えると、人々の反感を買い“吸血鬼狩り”みたいな事態が発生する危険は、少なからずあるわけなんだよね。


『聖血鬼』になることによって、より安全になるし、今のように隠れ住むようなかたちでなく、もっと自由に生きられるようになるかもしれない。


 俺の眷属になるといっても、俺が何かを強要するということは基本的にないしね。

 もちろん、悪さをするなんてことは許さないわけだけど……。

 まぁそもそも精神波動が低い悪に染まったような人たちは、俺の血を飲んでも変性するどころか、逆にもだえ苦しんで下手したら死んじゃう可能性が高いわけだけどね。


「じゃぁ、密かに吸血鬼たちが住んでいる場所に情報を流して、希望があればグリムさんに協力してもらうことにしましょう!」


 カーミラさんは、そう言ってヒナさんと俺を交互に見た。


「そうね。グリムさんが迷惑でなかったら、そんな感じで良いかしら?」


「はい。私は構いません」


 俺はそう答えたが……予想外の展開になってしまった。


 もし今の吸血鬼の人たちの中で、『聖血鬼』に変性することを希望する人が現れたら……自動的に俺の『眷属(トライブ)』なり、『絆』メンバーになっちゃうんだよね。

 そうなると『共有スキル』のことなども、みんな知ることになる。

 とすれば、種族の親的な存在であるヒナさんやカーミラさんには、『絆』メンバーの情報についても、今のうちから話しておいた方がいいかもしれない。


 俺はそう思い、改めて説明した。


 俺の『固有スキル』の『絆』のメンバーになると、念話ができたり、『共有スキル』として仲間たちが持っている『通常スキル』を使えるようになるということを説明したのだ。


「なにそれ! すごいじゃない! 多くのメンバーと念話ができるわけ!? いろんなスキルも使えるようになるの?」


 カーミラさんが、ものすごい勢いで食いついてきた。


「確かに……それはすごいわね。仲間たちが、みんな一気に強くなるってことでしょう。そんな『固有スキル』を持っているなんて……まさにチートね、ふふ」


 ヒナさんは、なぜか笑っている。


「グリムさん、私もその仲間に入れてくれない? まだ『聖血鬼』になるつもりはないんだけど、その『心の仲間(チーム)』メンバーっていうのになれば、『絆』メンバーに入れるんでしょう?」


 カーミラさんが、期待感溢れる顔を向けている。


「ええ、もちろん私は構いませんが……お母さんの許可を取った方が……」


「ほんと! やった! ねぇお母さん、いいでしょう? 仲間になっても」


 カーミラさんは、俺の話にかぶせるように大喜びし、ヒナさんの腕に抱きついた。


 この二人……見た目的には、友達同士にしか見えない。


「いいわよ。なんか楽しそうね! フミナたちとも、いつでも話せるってことでしょ。私も仲間に入れてもらおうかしら!」


 ヒナさんはそう言って、悪戯っぽく微笑んだ。


 ということで、なんと吸血鬼の真祖であり始祖であるヒナさんと、その娘の『真祖の血統』のカーミラさんが、俺の『心の仲間(チーム)』メンバーになった。



「え、何これ!? 『共有スキル』こんなにあるの……? 完全なチートじゃない! こんなにスキルが使えて、レベルが高くなったら……勇者だって霞んじゃうわね。ほんとびっくりだわ……」


 ヒナさんが驚いている。


「ほんと、凄い! 全部スキルレベル10だわ!」


 カーミラさんも、感動しているようだ。


 この感じ……デジャブ感が半端ない……。

 ビャクライン公爵家長女で見た目は四歳児中身は三十五歳のハナシルリちゃんが、『絆』メンバーになった時と、感動ポイントが同じようだ。

 スキルの数、スキルレベル、そしてもう一つは、念話で感動するはずだ。


「え、フミナ!? ほんとだ、念話で話せる!」


 ヒナさんが、そんな言葉を漏らした。

 タイミングよく『魔盾 千手盾』の付喪神フミナさんが、念話を入れてくれたようだ。


 ヒナさんとカーミラさんが、『絆』メンバーになってくれて、フミナさんや『ホムンクルス』のニコちゃんが喜んでいる。

 同じ仲間になれたし、念話でいつでも話せるからね。


 もちろん、『クワ』の付喪神クワちゃんや『闇の石杖』の付喪神闇さんも喜んでいる。





読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、31日の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 今年一年、楽しませて頂き本当にありがとうございました。 今年は、コロナ以外にも大雨による被害など大変な年になった熊本でしたが(今朝も起きたら、10数年ぶりに雪が積もってて車が出せるか怖いんで…
[気になる点] >俺の『固有スキル』の『絆』のメンバーにると、 →俺の『固有スキル』の『絆』のメンバーになると、 [一言] >まだ『聖血鬼』になるつもりはないんだけど、  いずれはなるのか。
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