70.アリリと、メリクリ。
3人称視点です。
もう一方では『赤の中級悪魔』に対し、アリリとメリクリが対峙していた。
「ここは通しませんよー」
『赤の中級悪魔』が、おどけたように手を挙げる。
「ならば、推して参るのみ」
アリリが見据える。
「その思い上がりを、後悔させてやりましょう」
『赤の中級悪魔』は、触手を両手から伸ばしながら嗜虐の笑みを浮かべる。
次の瞬間、触手による波状攻撃がアリリとメリクリを襲う。
アリリは躱しながら、素早く距離を詰める。
ところが、それを先読みした火炎攻撃がアリリを焼く。
ほぼ同時に、触手の波状攻撃がメリクリをとらえる。
足に巻き付いた触手が食い込みながらメリクリの動きを封じる。
だが逆に強力な脚力を生かし、『赤の中級悪魔』を引き寄せる。
その隙を、素早くアリリがつく……
鎌顎による噛み付き攻撃をかける。
だがこれも素早く戻した触手で、受け流される。
一進一退の攻防が続く………
もっとも、そう見えるだけで余裕があるのは、『赤の中級悪魔』の方だった。
両腕からの触手と火炎のコンビネーション攻撃は、アリリとメリクリの間合いを封じていた。
この攻防に業を煮やしたアリリは、懐に入るのを諦め遠距離からの攻撃に戦術変更する。
……以心伝心、メリクリも同様に考えていた。
何よりも彼女たちは、懐に入った接近戦に拘る必要はなかったのだ。
強力な遠距離攻撃の手段を持っているからだ。
だが相手は中級悪魔、無闇に攻撃しても距離がある分かわされてしまう。
あの厄介な触手に弾かれるのは目に見えていた。
遠距離攻撃を使うにしてもタイミングが重要である。
アリリとメリクリは念話で、一言二言コンビネーションの打ち合わせをする………
……するとすぐに行動に出る……
メリクリが、ヤケを起こしたように滅茶苦茶な動きで突っ込んでいく。
これを『赤の中級悪魔』は、余裕でかわしながら再び触手を巻き付け動きを封じる。
メリクリは火炎で焼かれるのを覚悟で、触手に巻き付けられたまま『赤の中級悪魔』に力任せに飛びかかる!
火炎を意に介さない体当たりに、思わずのけぞる『赤の中級悪魔』。
このタイミングをアリリは逃さない。
「マザービーーーーーム!」
アリリが目を赤く変色させ、輝きとともにレーザーのような光線を発射する!
その超高温の赤き光線が『赤の中級悪魔』の足を切断する。
避ける隙など与えない完璧なタイミングだった。
これは種族固有スキル『母の目力』による攻撃だった。
母の強さを体現したような高圧縮のエネルギーの照射である。
そのレーザーは、そのままメリクリを拘束している触手を焼き切る。
拘束が解けたメリクリは、バックステップで距離をとり……
……必殺技を放つ!
「ホーントマホーーク、ブーーーーーメラン!」
メリクリの大きな角が二つの手斧“トマホーク”となって、回転しながら『赤の中級悪魔』に向かって放たれる。
これは種族固有スキル『大回転斧角』による攻撃だった。
超速回転で破壊力を増した巨大角のブーメランは、左右から『赤の中級悪魔』を襲う。
ガードのために出した『赤の中級悪魔』の両腕が、切り飛ばされる。
動きが完全に止まった『赤の中級悪魔』に、今度はアリリがトドメの攻撃を見舞う。
戦場に、アリリの必殺技の発動真言が響く……
「ありがとう」
これはアリリの種族固有スキル『蟻我十存在』の発動真言である。
十体の分体に分かれたアリリが、忍者のような素早い動きで次々と襲い掛かる。
—— 十体の鎌顎の攻撃は、残光を引き刹那のうちに完了する。
アリリ十体が、攻撃終了体勢のまま残心しながら、完了真言を呟く。
「「「ございます」」」
その瞬間、『赤の中級悪魔』が体中から黒い血を噴き出し、液体化する間もなく霧散する。
お茶会仲間、アリリとメリクリのコンビネーションの勝利だった。
これで『爪の中級悪魔』以外の悪魔は、すべて片付いた。
残っていたインプたちも『ミミックチーム』や他の仲間たちによって壊滅していたのだ。
いよいよ敵の大将『爪の中級悪魔』との対決の時となった。
「ハハハハハハ……実に愉快、実に愉快。だが……無駄、無駄、無駄、全て無駄なのだよ。アンデッドどもがいない時点で、我を止められる者などいないのだよ。我の特殊な麻痺攻撃に抗えるのは死者のみ。生物で耐え得る者などいないのだから……ククク……」
『爪の中級悪魔』は、両手の長爪を翳しながら不敵な笑みを浮かべる。
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